夢魔
MIN:作

■ 第26章 開幕2

 山孝がニヤリと笑うと
「それは、私達に好きにしろって事ですかな…?」
 迫田に問い掛ける。
「ええ、但し最終的に、私の停止には従って頂く。恐怖だけでは、真の支配は望めません」
 迫田は注意点をしっかり押さえながら、山孝の言葉を認めた。
「おい、源治…。俺達のリーダーは、随分理解が有るぜ…。好きなように、やって良いとよ…」
 山孝は獰猛な笑みを浮かべながら、しゃがみ込んでいる山源に言った。
「ほほ〜ぅ。良いね、良いね、そのノリ…。ガンガン責めて、ヒイヒイ泣かせてやるぜ!」
 山源が嬉しそうに、立ち上がり迫田に両手で握手を求める。

 迫田はそんな山源の手を、右手を挙げて制しながら
「なれ合いでは有りませんし、譲歩でも有りません。これは方針です。私の指示には必ず、従って下さい」
 凍り付くような視線で、山源を見つめた。
 山源はその迫田の目線に気圧され、両手を引っ込める。
「良いですか。私は貴男方をコントロールします。貴男方は、その中で思う存分実力を発揮して下さい。恐らく、チーム編成はこの後も変わると思います。ですが、私はこのチームが最強だと思っています。この後のためにも、最高の結果を残しましょう。彼の口調から察するに、これは間違い無くチーム戦です」
 迫田は3人を見つめ、冷静に分析した結果を口にする。
 3人は迫田の言葉に、辛かった合宿の終わった今がゴールでは無く、本当のスタートだと初めて理解した。
 3人は気持ちを引き締めコクリと頷くと、一丸となって行った。

◆◆◆◆◆

 職員室では、46人の教師がテストの解答用紙に向かって、ひたすらペンを走らせ溜息を吐いている。
 一枚採点する度に、どの教師も重い溜息を吐き、再度解答と照らし合わせていた。
 だが、何度見ても、自分達が行った採点が間違っていない事を知り、また大きな溜息を吐く。
「金城さん…そっち、どう?」
「だめ…どれもこれも、赤点ばかりよ…。大体このテスト問題、おかしすぎるわ…レベルが違うもの…」
 数学教師の金城要(きんじょう かなめ)に化学教師の細谷妙子(ほそや たえこ)が問い掛け、その惨状を要が答えた。
「本当…変な話しよね…。試験当日に、問題が全て入れ替わるなんて…。それも、嫌がらせみたいにレベルが上がってるんだから…。こんなんじゃ、全員赤点で夏休み返上よ…」
 妙子が愚痴を漏らすように、ブツブツと要に告げると
「シッ! そんな事耳に入ったら、また何言われるか、解らないわよ…」
 要は教頭をこっそり指差し、妙子に注意した。

 妙子は首を竦めて、口を手で押さえると
「でも、叱られるって言ったら…。あの子どうしたんだろう…」
 要は3っつ向こうの由香の机を見つめ、ポツリと呟く。
「うん…、黒澤先生に怒られた次の日から、姿見せないものね…。ひょっとして、ショックで辞めた?」
 妙子が要越しに、由香の机を見ると、机の上は綺麗に片付けられ、机の上に散らかっていた、由香の趣味の物が一切無く成っていたのだ。
「有り得るかも…あの子、あんな風に怒られた事なんて、多分無いと思うし…。ショックだったんじゃない…」
 2人の気持ちの中では、由香はもう既に、辞めた事に成っている。
 そして2人は、自然とその原因を作った、黒澤の机に目を向けた。

 ポツリポツリと空いた、主の居ない13の机の1つ。
 整然と片付けられ、山のような解答用紙だけが、置いてある机。
 それが、2人の見つめる黒澤の机だった。
 その机の下に、まさか自分達が今話していた同僚が居るとは、夢にも思っていなかった。
 それも、全裸に革製の拘束服を着て、オ○ンコとアナルを貫かれた状態で、もう丸3日に成る。
 貫かれたバイブで常に快感を送り込まれるも、膣壁が収縮すると、電撃が襲い絶頂を禁じられた。
 由香はイク事も、眠る事も、動く事も禁止され、只ひたすら快感と苦痛に耐える。
 そんな状態で、由香は今日で、4度目の夜を迎えるのだ。

 由香の表皮の感覚は、不自由な状態で拘束されているため、麻痺して無く成っている。
 身体に直接触れている、革製の拘束服の感触も、今は全く感じていない。
 完全に光を遮断するマスクを付けられているため、瞼を開いているのか、閉じているのかも理解できなくなっている。
 口の中に入る刺激物と言えば、自らの体液と黒澤のチ○ポだけで、その他の物は舌に触れていない。
 五感の中で生きているのは、片耳の聴覚と嗅覚、それと下半身に加えられる、触覚のみに成っている。
 そんな制限された環境の中で、由香が狂わなかったのは、残された感覚の刺激による所が大きい。
 由香の制限された感覚は、残った感覚を鋭敏にさせた。

 由香が常に感じる感覚は、片耳から常に流れている、自分の言った服従の言葉と、2穴を揺さ振るバイブの刺激だけだった。
 研ぎ澄まされた由香の感覚は、それを普段の数倍の強さで感じている。
 自分の服従の言葉で酔い、送り込まれる快感で、直ぐに膣壁が収縮して絶頂を求めようとするが、膣壁の収縮が始まり、締め付け始めると、ピタリとバイブは止まり由香の直腸と膣内に電撃が走る。
 それは、身体を貫き全身を振るわせる激痛となり、全身を振るわせると、拘束着が容赦なく全身を締め上げた。
 くぐもった悲鳴は、口枷を嵌められた、口腔内に反射し頭蓋に響く。
 苦痛に絶頂を我慢しようとするが、何の刺激もない苦しさに負け、また快楽を貪る。
 今由香の頭の中では、苦痛と快楽と刺激は、同義になっていた。

 そんな由香の自由な方の耳に、足音が聞こえる。
 スリッパの鳴らす足音だが、殆ど音と言う物を立てていない、気配に近い足音。
 誰の耳にも、決して聞こえないはずの足音が、今の由香にはハッキリと聞き取れた。
 それは、由香が待ちに待って居たからだった。
 それは、由香の聴覚が鋭敏に成っていたからだった。
 それは、由香が全てを捧げると誓ったからだった。

 由香の耳に、目の前に置かれて居る筈の椅子が引かれ、キャスターが転がる音がする。
 由香の鼻に、嗅ぎ慣れたコロンと体臭が届く。
 台車を通じて、自分の身近に重量が掛かる振動が伝わり、バイブが揺れる。
 由香は残った全身の感覚で、主人の帰りを知覚した。
 由香は口枷の中で、唾液を溜め、主人の侵入に備える。
 由香は黒澤に使われる期待で、全身を紅潮させ待って居た。

 だが、黒澤がスッと由香に伸ばした手は、身体には触れ無かった。
 その手は由香の自由な方の耳に伸び、耳の穴に栓をし、更に覆いを被せて蓋をする。
 そして逆の耳に触れると、由香の誓いの言葉が消えた。
 由香の耳から、一切の音が消えたのだった。
 聴覚を奪われた由香は、もう気配を知る術を嗅覚のみに頼るしか無かった。
 全神経を集中して、主人の臭いを嗅ぐ。
 だが、そこに漂う嗅ぎ慣れたコロンと体臭は、残り香だけになっていた。

 由香はその黒澤の行動に驚き、悲しくなった。
 由香は黒澤の行動で、自分がこのまま放置される事を理解したのだ。
 由香の考え通り、黒澤は鞄を持つと、椅子を押し込んだ。
 由香は暗黒の中で、涙を流す。
 その涙は、何時まで続くか解らない苦痛による涙では無く、目の前にいた主人が、自分を使う事無く去った事に拠る物だった。
 それは、恐怖に近い感覚で、由香の心を責め立てる。
 由香は1人、身動きも出来ず、声も上げる事無く、快感と苦痛の中で涙を流し続けた。

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