夢魔
MIN:作

■ 第26章 開幕9

 床に踞り荒い息を吐いて、項垂れる光の前に、山源が座り込む。
 その気配に光が顔を上げると、光の顔は情慾に蕩けていた。
「気持ち良かったか…?」
 山源が光に問い掛けると、光の身体はビクリと震え、覚醒したように大きな目を開け、キョロキョロと辺りを見渡すと、首を力無く項垂れさせる。
 山源の質問に光は自分の中で、起きてしまった事に目を向けた。
(きもちよかった…。みられてるの…すごくきもちよかった…。どうして…こんなの…へんよ…)
 その思い浮かべた言葉を、直ぐに別の言葉が打ち消して行く。
(いいのよ…きもちがいいことに…へんじゃないことなんて…ないんだから…。なにがよくて…なにがわるいの…だれがきめたの…?)
 自分の快感を認める声に、光の心が偏ると、また別の声がする。
(だめよ…ひとに…なんて…いわれると…おもうの………だめ…)
 光を常識に引き留めようとする、心の声は細く、弱く、儚かった。
「答えろ…」
 光の葛藤を見抜いたようなタイミングで、山源が静かに短く命じると
「は…い…」
 光は小さな声で、答えを返す。

 山源はニヤリと笑うと、光のポニーテールの髪を掴んで、顔を上向かせ
「俺の質問には、直ぐに答えろ。良いな!」
 光の目を覗き込み、鋭く命じる。
「は…はい…」
 光は怯えながら、命令通り直ぐに返事を返した。
「お前よ〜…、感じてただろ…」
 光は髪の毛を掴まれているため、顔を背ける事が出来ず、目線を逸らせて
「い、いいえ…」
 消え入りそうな声で、山源に答える。
「嘘付くんじゃねぇよ! ここを、こんなにして良く言えるな」
 山源はそう言いながら、空いた方の手で、レオタードに浮かび上がった乳首を軽く撫でた。
「あふぅ〜〜〜…」
 光の身体はビクビクと震え、瞳が濡れ始める。

 山源はニヤリと笑って、光の目を見詰め
「感じてるじゃねぇかよ…。嘘つき女…認めろよ」
 光の髪の毛を振りながら、問いつめた。
(そう…、みとめなさい…。わたしは…かんじたの。ちくびをたてて、オ○ンコをぬらしたの…みとめなさい)
 光の頭の中に、ハッキリと声がして
「は、はい…感じました…」
 光は泣きそうな顔をして、山源の言葉を認めた。

 山源は満足そうに笑い
「こんな事で感じる何てよ…。お前変態だな?」
 更に光を問いつめると、光の瞳からポロポロと涙がこぼれ始め、ジッと押し黙る。
(へんたい…それがなに…きもちがいいんだから…それをしたいんだから…なんでもいいのよ…。へんたいでも…なんでも…なんとよばれても…)
 稔の行った教育に拠って、光の常識に対する執着は、極端に薄くなり、願望を満たす思いが強く大きく成っていた。
 光がゴクリと喉を鳴らし、山源に答えようとした時、山源が先に口を開く。

 山源はジッと光の瞳を見詰めたまま
「もし、お前がそれを認めるんなら、俺はお前に良い事を教えてやる。お前にとっては、きっと朗報の筈だ」
 ニヤリと笑って、光に告げると、光は山源に
「良い…事…?」
 不思議そうな視線で、問い掛けた。
 その時、光の心の中に、大きなざわめきが起こり、[自分はその事を知っている]と何かが囁く。

 山源は光の問い掛けに、大きく頷くと
「ああ、良い事だ…。お前にとっても、俺達にとってもな…」
 顔を引き締め、真剣な表情で光に答える。
 山源の眼を見て、光の心の囁きが大きくなり[きっと、あの事よ]と告げた。
 光はその内なる声にドキリと胸を高鳴らせて、瞳を潤ませながら小さく目で頷くと
「多分…私…エッチで…変な女…です…。最近…特に…そう思います…」
 頬を真っ赤に染め、素直に山源に答えた。

 山源は少し驚きの表情を浮かべ
「こりゃ、またあっさり認めたな。よし、じゃぁ俺達の番だな…。実はよ、俺達も同じ変態なんだ…、ここに居る4人全員な…、だけどよお前とは違う変態…、サディストって奴だ。どうだ、驚いたか?」
 光の言葉に、答えを返してやった。
 光は目を大きく見開き、4人の顔をマジマジと見詰める。
 光の驚きは、山源の言葉が直接の原因ではなかった。
 光の驚きは[ほら、やっぱりそうよ]と告げる、内なる声に対する物だった。

 山源はキョロキョロと4人の顔を見る光に、有る提案を出した。
「お前がよ、俺の命令を聞いたら、今のお前の火照った身体を鎮めてやる…。どうだ?」
 光は震える声で、山源に問い掛ける。
「も、もし…山元先生の…命令を聞かなかったら…?」
 光の質問を聞いた山源は、クククッと含み笑いをし
「何にも…。何にも起こらねぇ、俺達はただ帰るだけさ。飲んで騒いで、お前の変態話に花を咲かせる…。お前は、家に帰って悶々として、次の日から普通に登校する…それだけだ…」
 そう言って光から手を離し、軽く手を肩の位置に持ち上げ肩を竦めた。

 光がジッと床を見詰め、山源の交換条件を考えていると
「さってと…」
 山源がポツリと呟いて、腰を持ち上げた。
 驚いた光が顔を上げると、4人は光を置いてスタスタと歩き始め、何処に飲みに行くかを相談していた。
 その後ろ姿を見て、光の心がズキリと痛み、股間と乳房がジンジンと熱を持ち疼き始める。
 光は無意識のうちに手を伸ばし
「ま、待って下さい…置いていかないで〜。お願いします〜」
 大きな悲痛な声で叫んでいた。

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