夢魔
MIN:作

■ 第26章 開幕16

 先程のウエイトレスが、グラスに満たされたブランデーを3っつ持ってくると、テーブルに置き一礼して下がる。
「あの子は、この席の担当だから、呼んでみる? 黒首輪で何をしても構わないから、遊んでみましょうか?」
 大貫がニッコリと微笑んで、直美と奈々に問い掛けると
 2人はブンブンと首を左右に振り
「い、良いです…」
 真っ赤な顔で、大貫の申し出を断った。
「あら、そう…。折角良い席が取れたのに、つまらないわね…」
 大貫が残念そうに告げると、直美と奈々は俯いて、モジモジとするだけだった。

 すると、そこに1人の女性が通り掛かり
「あら、大貫さん? ここで遭うのは久しぶりね…」
 大貫に声を掛ける。
 その声に、弾かれたように、顔を上げ直美と奈々が声の主の顔を見つけた。
「大城…先生…」
 2人は驚きに顔を染め、ポツリと同僚の数学教師の名を呼んだ。
「あら、何? 国語科の打ち上げかしら…。でも、こんな所で、[先生]は止めて下さらない?」
 大城は妖しく笑うと、直美と奈々に悪戯っぽく、注意した。

 大城の登場に、大貫が
「今日はお連れは居ないの?」
 問い掛けると、大城は頷き
「ええ、今日は1人で憂さ晴らしに来たの…」
 大貫に微笑みながら答えた。
「でしたら、ご同席しません? 色々お話聞かせて上げて…」
 直美と奈々を指し示して、ニッコリと微笑んだ。
「あら、お邪魔じゃないの? でも、仲間に入れて下さるなら、嬉しいわ…」
 大城は直美と奈々の返事も待たずに、スッと奈々の横に腰を下ろした。

 直美と奈々は、C型のボックス席の奥に押し込まれ、出口を大貫と大城に押さえられる形に成った。
 その配置の意味に気付かぬまま、店内にアナウンスが流れ始める。
【お客様の速水様より、奴隷のご提供が御座いました。どなたか、鞭をお使いに成られる事を、ご希望で御座います】
 アナウンスが終わると、ステージの上に20代後半の女性が、青い首輪をして現れた。
 両脇からウエイトレスが近付くと、女性の衣装をドンドン脱がせて行き、全裸に剥くと女性は正座をしてひれ伏す。
 女性がひれ伏し、ウエイトレスが下がると、客席から男が立ち上がり、鞭を受け取る。
 男が鞭を受け取ると、女性の背中を打ち始めた。
 それは、何の遠慮も無い打ち方で、店内に鞭の風を切り裂く音と、鞭が肉を打つ音と、女性の悲鳴が響き渡る。

 客は3発打つと鞭を返し、ステージを降りて行く。
 次に上がっていった客は3発打ち据えると、余り良い音がしなかったために、客に失笑とブーイングを食らいスゴスゴと帰って行く。
 3番目に上がった客は、鞭使いも素晴らしく、かなり良い音を立てたため、客から賞賛を受けて降りていった。
 4番目の客が上がり始めると、大城がポツリと
「下手くそね…」
 ステージに向かって、呟いた。
 直美と奈々はその言葉に驚き、大城を見詰める。

 大城は自分が注目を集めた事に、気付いて
「あら? 私何か変な事言ったかしら?」
 直美と奈々に問い掛けると、直美と奈々は
「いえ、下手くそって…仰ったから…」
「大城さんは、もっと上手なのかな…って、思って…」
 ボソボソと、呟き遭うように答えた。
「ええ、今迄の4人より、絶対に上手いわよ? 当たり前じゃない、じゃなきゃ、言わないわよ…」
 屈託無く微笑んで、言い切った。

 驚く2人の顔を見つめながら、薄く笑い
「見せて上げるわ、あんな只の暴力と本当の鞭打ちの違い…」
 宣言しながら、ボックスから立ち上がる。
 大城はそのまま、ツカツカとステージに向かって歩き、鞭を受け取ると軽く振り抜き、重さを確かめた。
「貴女、ここが弱いのね…」
 そう言って、女性のお尻の横のくぼみに、スッと鞭の先をあてると、腕全体がしなり、正確に指し示した場所に鞭の尖端が当たる。
 ビシィーン、激しく鞭が、肉を打つ音が響き渡り、女性が声を上げた。
「くふぁ〜〜〜ん!」
 女性の上げた声は、苦痛の響きでは無く、明らかに官能の色を濃く含んでいる。

 大城は冷徹な視線を、女性の背中に向け
「あと、ここもそう…」
 女性の腰の辺りに鞭の先を移動させると、再び腕をしならせる。
 ビシィーンと肉を打つ音の後、女性の身体がガクガクと震え
「くふぅ〜〜〜、はん、ああぁ〜〜〜ん…」
 腰を激しく波打たたせた。
「最後はここよ…」
 スッとお尻の上部を指すと、大城が鞭を打ち付ける。
「あひ〜〜〜〜っ、うく、うく、くふ〜〜〜ん!」
 女性は涙を流しながら、絶頂を迎えビクビクと全身を振るわせた。
 店内は大城の鞭打ちに、水を打ったように静まりかえり、大城はウエイトレスに鞭を返すと、優雅に席に戻った。

 大城が席に着くと、店内に大きな拍手が沸き上がり、皆興奮した目で大城を見詰める。
 大城はその視線を、平然と受け流し、ブランデーを煽ると
「どう? 私の方が上手かったでしょ?」
 直美と奈々にニッコリ微笑んで、問い掛けた。
 直美と奈々は、壊れたオモチャのように、首を縦に振り大城の言葉を認める。
 2人の頭の中は、興奮と官能で満たされ、麻痺し始めた。
 ドンドン熱くなり、疼き始める身体が、2人を禁断の世界に引き摺り込んで行く。
 2人の女王は、そんなマゾヒストを、心の中でニンマリ笑い見詰めていた。

■つづき

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