夢魔
MIN:作

■ 第26章 開幕28

 光は恵美に突然見詰められ、反射的に俯き目線を逸らせた。
 その行動に、恵美は勘違いする。
(ひ、光ちゃん…どうして…。私は、貴女を心配してここに来たのに…。どうして…)
 恵美は光の態度に、自分をここに引き込んだのは、光であると思い込み、驚きを浮かべていた。
「あっ! な、無く成ってる…牧村先生、こいつの中身、どうしたんですか?」
 山孝が大きな声を上げ、光に問いつめると、光は怖ず怖ずと恵美を指差した。
 4人の男性教師の目が、恵美に集まりそれぞれ、リアクションを取る。
 迫田は驚きを浮かべ、山孝は怒りを顕わにし、山源は落胆すると、森はクスクスと笑った。
 その4人の表情に、恵美は訝しみながら、問い掛ける。
「あ、あのそれは…何なんですか…」
 恵美の問い掛けに対して、全員視線を逸らし、誰1人口を開かない。

 恵美はその態度に不安に成って、光に詰め寄り
「ね、ねえ光ちゃん何なの? これ、一体何なの?」
 必死の形相で、問い掛けた。
「責め具だよ…。外国製の特殊な責め具だ…。俺が趣味で取り寄せた…」
 山孝が怒りを押し殺した様な声で、呟くと
「私達は同好の志でね…、その噂を聞いた、牧村君に言われて、その…見せる事に成ったんだ…。代わりに…ねっ…」
 迫田が観念したように告白し、最後は光に話しを振る。

 光に話しを振った迫田の目は、鋭く威圧的で、それに見据えられた光は、抗う事が出来ず話し始めた。
「私の最近おかしい身体の話しを…聞いて貰って…相談に乗って貰おうと…してたの…」
 光がそう言うと、山孝が
「全く! 大事な物だって…あれ程言ったのに…。先生達も置きっ放しにするなんて!」
 苛立ちを露わにして、他の4人を責め始める。
「まぁ、孝さん…、使ちゃった物は仕方ないっしょ…。ここは、牧村ちゃんには約束を守って貰って、坂下先生には、お帰り頂いて、後日返して貰うって言うのが、ベストじゃないですか?」
 山源が取りなして提案を始める。

 話しがおかしな方に進み始め、自分に付けられた物の正体と、目覚めた時に襲ったショック、それと今も続く痛みの説明を聞こうと、身を乗り出すと
「そんなの、当然じゃ! もう良い、坂下先生は、早く家に帰りなさい! そもそも、約束もして居ないあんたが、ここに居るのがおかしくなった、原因じゃ!」
 山孝が、いきなり恵美を指差し、怒り出した。
 だが、恵美はその怒りに、カチンと来た。
「ちょっと、待って下さい。年若い女性をこんな所に引き込んで、貴方達は何をするつもりだったんです?」
 恵美が言葉を荒げながら、問いつめると
「あれ〜? お姉さんかお母さんが居るぞ〜…。牧村ちゃんって確か、成人してたよね? SEXも経験済みでしょ?」
 森が戯けた口調で、光に問い掛け、恵美を小馬鹿にする。

 恵美はいつも小馬鹿にしていた森に馬鹿にされ、更に頭に血を上らせた。
「同僚として、先輩として言ってるんです! さぁ、光ちゃん行きましょ! こんな所にいたら、何をされるか解らないわよ!」
 光の手を取り、立ち上がろうとすると、光はその手を振り解き
「邪魔しないで下さい! 恵美さんみたいな潔癖な人には、解らないんです…。私、エッチが好き! イヤらしい事が好き! 恥ずかしい事が好きなんです! 最近それが特に、激しくなって…もう、どうにか成りそうなんです! だから、私を放って置いて下さい!」
 自分の内なる激情を、恵美にぶつけた。
(な、何…何を言ってるの…エッチが好き? イヤらしい事が好き? 恥ずかしい事が…好き? …。私が…潔癖…? …)
 光がぶつけた激情は、恵美の心を激しく良さ振る。
(そんな事…良いの? みんなに言って? …。人に話しても…大丈夫なの? …。軽蔑されるわ…。馬鹿にされるのよ…)
 強い自制心を持った恵美には、光の言葉が信じられない。
 だが、それと同時に自分の中に、同じ言葉が有り、同じ欲求を渇望していた。

 茫然と佇む恵美に対して、迫田がソッと声を送り込む。
「私達は…、正直胸を張って言える性癖じゃない物を持っている…。だから、密かに集まっていた…」
 迫田の言葉に恵美の耳が、ピクリと動き聞き入った。
「ハッキリ言って、ノーマルの人間に、俺は踏み込んで欲しくねぇな…。お前らが言うデリカシーって言うモンを、もうちょっと踏まえて欲しいね…」
 山源の言葉に、恵美の身体がフルフルと震える。
「こっから先は、普通の人じゃ無理無理無理〜。早く帰って、少女漫画のような夢を見て寝〜た〜ら〜」
 森の言葉で、3度カチンと頭に来た。

 恵美は完全に頭に血を上らせ
「良いわよ、! 私も付き合うわ! 光ちゃんが言うその世界、私にも見せて頂戴! その上で、私は判断して物を言わせて貰うわ! 無理かどうかは…私が堪えられるかどうかは、それからにして! もし私が堪えて、同じ事を出来たら…。森先生! 私に謝罪しなさいよ!」
 恵美は捲し立てるように、迫田達に大見得を切り、森に謝罪を求める。
 森はへらへらと笑い、恵美の言葉に合意した。
「よう、今言った言葉は、嘘じゃねぇだろうな…。あんた、最後まで見て行く…そう言ったな…。俺は、その上であんたが、同じように振る舞えたら、何だって言う事を聞いてやる。今すぐ教師を辞めろって言うなら、それも聞いてやるし、死ねって言うんだったら、死んでやる」
 山孝が真剣な表情で、恵美に向かって告げると、恵美は怒りのまま
「言ったわね! その言葉に嘘は無いでしょうね? やってやるわよ! どんな事をしてでもね!」
 山孝に向かって、言い切った。

 山孝はニヤリと、心の中で笑うと
「じゃぁ、もし…もしだよ…。あんたが音を上げて、儂達に謝罪して、許しを請うたら…あんた、どうする…?」
 静かに恵美に問い掛ける。
「私も何だって、言う事を聞いて上げるわ! そんな事、有り得ないでしょうけど、私が許しを求めたら、その時点で私は貴方達の言う事を、何だって聞いて上げるわよ! これで良いんでしょ!」
 恵美は怒りにまかせて、山孝に言質を取られた。
 山孝は心の中でほくそ笑みながら
「本当に、何でも言う事を聞くんですな?」
 恵美に対して、再度念を押す。
「しつこいわね。どんな事に成ろうとも、私は約束は必ず守ります!」
 恵美は自分の身体に、何を付けられているか、完全に忘れて、山孝の言葉を認めて誓った。
 恵美は自ら、罠の蓋をパックリと閉じてしまった。

■つづき

■目次3

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊