夢魔
MIN:作

■ 第26章 開幕37

 美由紀に感謝され、ホッと気持ちを落ち着けた真は、にこやかに微笑みながら、美由紀に向かって話し掛ける。
「で、どうします? 少し時間は掛かりますが、乳房のバランスや身体の変調、全部ひっくるめて治します?」
 美由紀はその笑顔に、心の底から安らぎ信頼して
「はい! お願いします! これが戻るなら、何でもしますし、どんなご命令にも心から従います!」
 自分の全てを投げ出す覚悟で、縋り付き平伏し懇願した。
 真は優しく美由紀の身体を起こすと
「あ〜…、そんな物は要りません…。ただ、施術の時は…心を落ち着けて、自分の身体に素直になって下さい…さっきのように、私に疑心を持たれると、貴女の身体にも負担が掛かりますし、余分な力も使います…。効果が薄れ、時間も掛かっちゃいますんで…。私のような醜男に触れられるのは、嫌かも知れませんが、宜しくお願いします」
 美由紀に依頼した。

 美由紀の瞳からボロボロと涙がこぼれ落ち
「申し訳御座いません! 源先生の仰られた事が…余りにも信じ難く、夢のような事だったため、私は警戒してしまいました。そのため、源先生にご負担をお掛けした事、心からお詫びいたします」
 床に額を擦り付けながら、謝罪する。
 真が頭の後ろを掻きながら、[いや〜]と照れ笑いを浮かべると
「それと、源先生が仰るような事、私は決して…決して思いません…。源先生に触れられて…嫌なんて事は…絶対に有りません! 有り得ません! あんな、安心できる触られ方をして、嫌がる方が居るとは、私には到底思えません。私の方こそ、何百人にも使われたこの身体、源先生とってには穢らわしいでしょうが、宜しくお願いいたします。私は源先生が望まれるなら、いつ何処ででも喜んでこの身体を差し出しますし、使って欲しいと心から思います」
 美由紀は真剣な表情で真に詰め寄り、縋り付きながら心から告げた。

 美由紀の言葉に、真は困った表情を浮かべながら
「え〜…、新庄先生のような、お美しい方にそんな事を言って頂けるのは、嬉しいんですが…私には独断で、先生を使う権利が無いんです…。勿論、治療や教育は違いますが…、私はさっきも言った通り、SMには興味も関心も有りません。なので、貴女を使う事は私の意志ではできないんです。あくまで、貴女の主人の依頼により、肌を合わせるのが私のポジションなんです…」
 美由紀に自分の立場を説明する。

 すると、光子が興味本位で真に問い掛けた。
「えっと…源…先生。あたし…いや…、私何かも、相手をして貰えるんですか? …その、[教育]の一環として、技術習得みたいな感じで…。それって、OK何ですか?」
 光子が丁寧な喋り方を心がけようと、一生懸命考えながら、真に聞くと真はスッと光子の横に移動して
「ええ、優先はこの立場の方ですが、それも柳井君の許可が有れば可能ですよ。何と言っても、この計画のリーダーですから彼の意向は絶対です」
 小声で、ソッと耳打ちした。
 奴隷として、内情の全てを知ら無い美由紀が、同席しているための配慮であったが、美由紀には無駄であった。

 美由紀は中学生から虐めに遭っていたため、他人の小声で話す言葉に敏感に反応できる。
 単純に言えば[地獄耳]だったのだ。
 それは、美由紀にとっては、当然であった。
 虐められていた現場では、その他人同士の囁きが、自分の処遇に大いに関わって来るのである。
 耳を澄まし、内容を理解すれば、逃げ道や処し方などを見つける事の出来る、言わば必需品のような物だった。
([この立場の方]…[柳井君]…[許可]…[計画のリーダー]…[絶対]…。どう言う事…? 柳井君って…2年の特別奨学生よね…、彼が、何か知ってるの…? いえ、違うわ…雰囲気から行くと、源先生より…上…。一生徒が…どう言う事…)
 美由紀は、その聡明な頭脳で分析を始め、自分が置かれている立場を理解しようとする。

 更なる情報を得ようとして、首を巡らせた美由紀の視線に、白井の顔が入る。
 白井は光子と真を、火の出るような視線で見詰めていた。
 正確には、真に肩を抱かれ、ヒソヒソと内緒話をされている、光子に対する視線が、刺し殺しそうな程の敵意に満ちていたのだ。
 美由紀はその視線を見つけた時、全身に鳥肌が立ち、腰が抜けそうに成った。
(あ、あんな目…見た事がないわ…。何? 良子様は…山基先生がお嫌いなの…? いえ、違うわ! 源先生が近付いて、あんな風に話し始めたから…。だとしたら、良子様は源先生に目をつけたの…。駄目よ…、絶対に駄目! あの方は、私の希望! 何が有っても、良子さんの毒牙から源先生をお守りしなきゃ!)
 美由紀は、決死の覚悟を固め心に誓う。

 内緒話をしていた、光子と真に小室が近付き
「済みません。私は源先生に、[これから色々、ご教示していただく事になる]そう聞いています。ですが、どうにも先生の力量を判断できかねて居るんですよ…。確かに、校長室での事も、今ここで見せて頂いた物も、凄い物だと思いますが、それは単純に源先生が、女性を喜ばせるためだけの技術ではないんですかね?」
 薄笑いを浮かべ、問い掛ける。
 真が、話し掛けて来た小室に、視線を向けると
「う〜ん…。そう、見えるのは仕方がないですね…。実際、私の持っている技術が、教育した方にどう現れるか何て、男性の方には解りづらい所では有ります。まぁ、教育前とその後の差が解るのは、普段肌を合わされている方同士の話に成りますからね」
 真はそう言って、頭をボリボリと掻き、小室に答えた。

 小室はスッと光子の方を指し示して
「実はですね、私は山基先生とは、合宿から何度かご一緒して居るんですよ。ですから、是非源先生の手腕をお見せ頂けないかと、そう思ってお話をさせて頂いたんです」
 真の目を覗き込んで、依頼してきた。
 小室の視線には、明らかに懐疑と侮蔑の色が込められている。
 [どんなトリックを使って、女をイカせているのか?]と、小室は疑い[そのタネを暴いてやる]と、目が言っていた。
 真はそんな視線に、慣れている。
 それは、誰もが向ける視線だったからだ。
 真はニッコリ微笑んで
「では、この方を使って、貴男にお試し頂きましょう…」
 凍り付くような雰囲気に変わり、宣言した。

 光子は呆気に取られながら、真と小室を交互に見詰め後ずさる。
「ちょ…、マジ? いや、嫌だ…直弥さん酷くね?」
 光子が顔を引きつらせながら、一歩下がって小室に視線を向けると、突き放そうと宙に浮かせた光子の手を真が掴む。
「あきゅん! ひぃ〜〜っ!」
 光子は有り得ない感覚に襲われ、その場にへたり込み、真に快感に染まった、驚愕の目を向ける。
「さぁ、教えて上げますよ…身体の使い方。快感の使い方…。SEXの技術を…、触りだけですがね…」
 真は光子に微笑みかけると、両手を触れさせた。

■つづき

■目次3

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊