夢魔
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■ 第26章 開幕43

 美由紀は真と弥生の説得で、ようやく涙をぬぐい、身体を起こす。
「新庄先生初めのうちは、3日に一度…2週間目からは週1のペースで、3ヶ月様子を見ましょう。それぐらいには、おおむね解消している筈です」
 真は美由紀に説明して、弥生に向き直り
「弥生お風呂を沸かして下さい。少し、汗を落としましょう」
 弥生に告げると、弥生はにっこりと微笑んで
「もう沸かして有りますわ」
 真に答えた。

 真は目を丸くし
「用意が良いですね…。まさか、こんなに早く用意が出来てるとは…」
 驚いたが、弥生の表情をみて、直ぐに理解して
「はぁ〜ん…今日は、私がお泊まりすると思ってたんですね…」
 弥生に意地悪そうな表情を作り、問いかける。
 弥生はもじもじとして、俯き赤面すると
「だってぇ…、お風呂で真様のお身体を洗うの…大好きなんですもん…」
 少女のように、身体をゆさ振って、真に答えた。

 真は美由紀に向き直り
「新庄先生も、汗を流して行きますか?」
 微笑みながら問いかけると
「え、そ、そんな…。お二人のお邪魔でしょうし…男の方とお風呂になんて…」
 美由紀はドキドキしたのか、弥生以上に頬を染め、俯いて答える。
 真は微笑みを強くして
「いえ、一緒にとは…言ってませんよ…。お一人で、使われませんか?」
 美由紀に勧めると、美由紀は自分の勘違いだと理解して、茹で蛸のように真っ赤になり、更に俯いて小さくなった。

 そんな美由紀を弥生が優しく抱きしめると
「もう、真様…そんなおからかいに成ったら、新庄先生が可哀想ですわ…。ねぇ、新庄先生、2人で真様のお疲れを癒しません? お体を洗って、マッサージをするの…どう?」
 笑いながら真を諫めて、美由紀に提案する。
 美由紀はあわてて顔を上げ、弥生の顔を見詰めると
「え、そ、そんな…良いんですか…、お邪魔じゃないんですか?」
 心配そうに問いかけた。
「ええ、良いわよ…。ただし、ちゃんと心を込めてご奉仕してね。真様は、私の大事なご主人様なんですから…」
 弥生が真剣な顔で、注意を与えると、美由紀も真剣な表情で答える。
 弥生がクスリと表情を和らげると、美由紀もそれに釣られて微笑みを返す。
 美由紀の微笑みは、心の底から嬉しそうに笑い、とても穏やかで美しかった。
 それは、小学校以来浮かべた事のない、輝くような微笑みだった。

 真が、立ち上がり
「さぁ、行きましょうか…」
 2人を促すと、弥生は一目散に真の右腕にしがみつき、美由紀は怖ず怖ずと、後に従おうとする。
 真がそんな美由紀をに視線を移し、左腕を軽く曲げると
「私と腕を繋ぐのは、お嫌ですか?」
 優しく問い掛けてた。
 美由紀は真の言葉に驚いて、真っ先に弥生の顔を見る。
 弥生はにっこり微笑んで、大きく頷くと真の肩に頬摺りし、甘える仕草を見せウインクした。

 美由紀は弥生の許可を貰い、恥ずかしそうに真の左腕に絡み付くと、ソッと真の肩に頬を寄せる。
 真は満足そうに頷くと、全裸の美女2人を両脇に従え、浴室に向かう。
 全裸の美女2人は、パグのような容貌の男の肩に、ウットリと蕩けた表情で頬を寄せ、甘い吐息を鼻から漏らし、腰をモジモジとさせながら付き従った。
(ああぁ〜…こんな気持ち…初めて…。売春をさせられてた時、男の人とこうやって腕を組んだのとは、大違いだわ…。嬉しい…ううん…、心が落ち着く…、でも、ドキドキする…、それが、嫌じゃない…、むしろ、凄く嬉しい…)
 美由紀は、心を満たす感覚に酔いしれ、涙が出そうに成っていた。
 女としての絶望を嫌と言う程味わい、恋愛感情を持つ事すら出来なかった女が、初めて心落ち着ける異性に出会い、その肩に寄り添って居るので有る。
 仮にその伴侶が、1mと離れていない場所にいるとしても、美由紀にとっては心を震わせるには十分だった。

 浴室についた3人は、軽く身体をお湯で流し、湯船に浸かる。
 湯船に浸かると、弥生が美由紀に向かい
「じゃぁ、新庄先生は真様の背中をお願いしますね、私は前からっと…」
 楽しそうに告げると、真の正面に移動して、腕を取りマッサージを始めた。
 美由紀はキョトンとしながら、真の背中を見詰め、恐る恐る手を伸ばし、マッサージを始める。
「ん? ん〜っ…あ〜…う゛〜ん…。新庄先生…遣った事…無いですね…。マッサージ…」
 真は美由紀のマッサージに、数秒で根を上げた。
 美由紀自体は一生懸命なのだが、真にとっては擽っているような物だった。

 美由紀がパッと真の肩から手を離し
「すいません…。一度も経験が無くって…」
 小さくなって、真に謝罪すると、真は美由紀に向き直り
「ええ、構いませんよ。ですが、覚えておいても損はしません。こうやってやるんです…」
 真はアッという間に美由紀を回転させて、背中に手を置きマッサージを始める。
「あ、あっん、あはぁ、う、くぅん、はん、あん、ああぁん…」
 真の絶妙の力加減に、美由紀は甘い声を上げ、湯船の中で脱力して、沈み掛けた。

 真の背後から、弥生が覗き込み
「ああ、良いなぁ〜…。真様、新庄先生に優しくし過ぎじゃ有りません?」
 拗ねながら、真に抗議すると
「はい、はい、弥生には、後で特別なマッサージをして上げますよ。今は患者さん優先です」
 優しく弥生に微笑んで、軽く啄むような口吻を弥生の唇に当てる。
 弥生は満足そうに微笑むと、真の首にしがみつき、顔中にお返しのキスをした。

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