夢魔
MIN:作

■ 第26章 開幕44

 真のマッサージを受けていた、美由紀の瞳から、ポロポロと涙が溢れている。
 真がそれに気づき
「どうしました? 何か痛みでも走りましたか…?」
 心配そうな顔で、美由紀に問い掛けると、美由紀は無言で首を左右に振り
「私…今…とても、幸せです…男の人に…こんなに優しくされたの…人に、こんなに優しくされたの、初めてです…。こんなに、気持ちよかったのも、こんなに落ち着いたのも、こんなに幸せを感じたのも…、こんなに癒されたのも…今日が初めてです…。なのに、上郷先生は…もっと、もっと幸せを感じられるんですよね…こんな素敵な旦那様に、心から愛されて、癒されて…羨ましいです…。でも、上郷先生は、私にも優しくして下さるし…私、どうして良いか分からないんです…」
 美由紀は心の激情を、涙とともにぶちまけた。

 弥生は美由紀の告白を聞き、ジッと美由紀の横顔を見詰めると
「新庄先生…、貴女[真様]って呼びたいんでしょ…」
 静かに美由紀に問い掛ける。
 美由紀はその言葉に、ドキリとして振り返り、驚きの表情で弥生の顔を見詰めた。
 2人はお互い無言で暫く見つめ合うと、弥生がゆっくりと口を開く。
「良いわ、許して上げる…。その代わり、私は貴女を美由紀と呼ぶわ、貴女は私を弥生様と呼びなさい。そして、貴女は真様の[側仕え]に成って頂戴…。美由紀なら、私…許せる…」
 弥生の言葉に真が驚きを浮かべ
「弥生、今のはどう言う事です? どうして、その事を知って居るんですか?」
 弥生に問いただすと、弥生は真に向き直り
「真様…、私は真様の伴侶に成りたくて、様々な物を使って調べました。その中で、伴侶の意味も、宗家の長子の意味も、側仕えの意味も全て知りました。それでも、私は真様の横に寄り添いたかったんです…」
 縋り付くように、告白した。

 真は弥生の告白に、愕然として驚き見詰め、弥生の表情でそれを慈しむような微笑みに変え
「ありがとう…ありがとう弥生…。私は、心の底から弥生を愛します。私に出来る事は、それだけしか出来ませんが、弥生の気持ちに報いたいと思います」
 弥生を固く抱きしめる。
 弥生を離した真は、スッと美由紀に向き直り
「今弥生が話した、[側仕え]と言うのは、言わば付き人のような物で、普段は私と伴侶の身の回りの世話をし、寝食を共にして[陽気]を練って、修行を始める時に私に[気]を渡す者の事を言います。良質の[気]を溜められるよう、それなりの修行もしなければ成りませんし、立場的にも見返りのある物では、有りません。それに…」
 美由紀に説明をするが、美由紀の耳には、真の言葉は一切届いていなかった。
 美由紀の思考は、真の[寝食を共にして…]の段階で停止し、答えを出していた。

 真が説明を終え、美由紀に問い掛けると
「私を[側仕え]にして下さい。何でもします! 何でも言う事を聞きます! だから…、だから、私をお側に置いて下さい! お二人の、お世話をさせて下さい!」
 美由紀は真の質問に即答し、縋り付いた。
 真は美由紀の勢いに、目が点に成り
「あ、あの〜…私の話を…、聞いていましたか?」
 あきれたような声で、美由紀に問い掛けると、美由紀はブンブンと首を横に振り
「聞いていませんでした! ですが、私は一言で決めました! 真様と一緒に居られるという、ただ一言で私は何も要りません! お願いします私を、[側仕え]にして下さい!」
 美由紀は泣きそうな顔で必死に、哀願する。

 真は困ったような顔で、ため息をつき
「弥生…、仕方がないですね…。美由紀を[側仕え]として、認めますよ…」
 弥生に告げると、弥生は妖艶な微笑みを浮かべ、美由紀を抱きしめ
「はい、真様…。美由紀…これで、貴女は働き蜂と同じよ…真様のために、良質の精を蓄え真様に運ぶの…。その為に、たっぷり真様と私が磨いて上げるわね…。もっと綺麗に、もっと妖艶に成って、沢山精を集めてきなさいね…。上手に出来たら、タップリと可愛がって上げる…」
 真に返事を返すと、美由紀の身体をまさぐり、怪しく耳元に囁いた。
「これで、私たちは同類よ…。真様のための道具…。真様と交わり、真様を涅槃にお連れするための…同じ道具なの…一緒に歩んでいきましょうね…」
 弥生は更に小さな声で、美由紀の耳元に囁くと、熱い口吻を美由紀の唇に与える。

 美由紀は蕩けた表情を浮かべ、弥生の舌に応えながら
「はい、弥生様〜…どうか、よろしくお願いいたします〜…」
 弥生の口の中に、返事を返して激しく抱きついた。
 そんな、2人を見詰めながら、困った表情のままの真は、気持ちを入れ替え微笑みを浮かべると
「主人の私は、除け者ですか?」
 そう言いながら2人を抱きしめ、[気]を放つ。
 真に抱きしめられた2人は、電流が流れたように波打ち淫声を上げる。
「あん、真様〜…そんな事したら…弥生…イッちゃいます〜」
「あふぅ〜申し訳〜ございません〜…あはぁ〜〜…これ、凄いです〜」
 2人は真の身体に抱きつき、ビクビクと腰を振り、快感を訴えた。

 弥生と美由紀は真の身体を、自分たちの身体で洗い清め、お返しに真にタップリと、[気]を含んだ手で隅々まで洗われ、何度も絶頂を迎える。
 どちらが奉仕をしたのかよく分からないような状態で、浴室から上がった3人は、居間に移動した。
「さて、今日はこれからどうします? 家に戻りますか?」
 真は美由紀に問い掛けると、弥生が美由紀の背後から覆い被さり
「それとも、このままここにお泊まりして、私達と一緒に寝る?」
 美由紀の耳元に囁いた。
 美由紀は弥生の誘いに驚き
「えっ、お、お泊まりしても…良いんですか? 皆さんと、一緒に…居ても良いんですか? お願いします! お泊まりさせて下さい!」
 身体を入れ替えて、真と弥生の顔を交互に見て、両方に懇願する。

 真はにっこり微笑んで
「それでは、先に食事にしましょう…。何か作って下さい」
 弥生と美由紀に告げると、2人は嬉しそうに微笑みを返し、2人仲良く台所に走っていった。
 2人は仲良く、料理を作り上げると、真を交え談笑しながら、夕食を摂り、寝室に向かう。
 寝室に布団を3組敷いて真ん中に真が横になると、左右に弥生と美由紀が滑り込み、両側から真に寄り添った。
 弥生が真に甘えると、真は優しく迎え入れ、弥生が美由紀を誘い、美由紀は怖ず怖ずと真に愛撫を始める。
 弥生と美由紀は絡み合いながら快楽を共有し、やがて疲れ果て真に覆い被さった。
 真は2人を優しく撫でながら眠りに誘い、真自分も深い眠りに入る。
 美由紀は幸せそうな寝顔を浮かべ、安らかに眠った。
 その眠りは、美由紀にとって、初めてと言える安らかな物だった。

■つづき

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