夢魔
MIN:作

■ 第27章 誓約21

 生徒指導室の扉を開けて中に入ってきたのは、狂だった。
 狂は黙って指導室の中に入り扉を閉めると、ユックリ美由紀の横に歩いて行く。
 美由紀の横に立った狂は、スッと美由紀のお尻に手を当て、優しく撫でさする。
「な、何よ…何の用なの? 工藤君、今は私の調教中よ…」
 白井がオドオドとしながら、狂に告げると狂はスッと冷たい視線を白井に向け
「調教…、これが?」
 小さな声で、白井に問い掛けた。
 その目と言葉、小さな身体から立ち上る迫力に、白井は狂もまごう事無きこの計画の中心人物だと、再認識させられる。

 狂はポケットから、ナイフを取り出すと刃を立てて、美由紀の身体の真上を横に薙ぎ払う。
 美由紀の身体を縫い止めていた、テグスが全て断ち切られ、美由紀を苛んでいた苦痛が取り払われる。
 狂が美由紀の両足のテグスも全て断ち切ると
「そのオ○ンコに入ってるのは、自分で外せ…。外し終わったら、服を着て職員室に戻ってろ。今日は終わりだ…」
 美由紀の顔を覗き込み、優しく微笑んで終わりを告げた。
 美由紀は何がなんだか解らないまま、マングリ返しの姿勢でコクコクと頷き、モソモソと身体を動かして、狂の命令に従い、クリスタルの筒を外し、釣り針を全て取り外して、洋服を着込み指導室の扉に向かう。
 美由紀はビクビクしながら、身体を室内に向けると、ペコリと頭を下げて、扉を開いて出て行った。

 白井はブルブルと怒りで顔を真っ赤に染め
「一体、何の権限が有って、人の調教を止めるの!」
 狂に食って掛かる。
 狂はナイフの刃を黙って畳むと、ポケットに収めユックリと白井の顔を見、口を開く。
「奴隷を壊してはいけない…。この、ルールは知ってるよな?」
 狂の言葉に、白井はビクリと震えた。
「俺の言った意味が分かって、尚続けるつもりなら…それ相応の覚悟をしろ。俺は、稔のように甘くは無い、お前の親父の会社ごとぶっ潰して、お前から全て奪った上で、お前を壊す。良く覚えておけ…」
 狂はいつもの軽口を一つも口にする事無く、淡々と語った。

 白井は蒼白になりながら
「お父様の会社を潰す? 高校生の貴方にそんな事、出来る訳無いじゃないの! 大口を叩かないでくれる!」
 なおも狂に向かって強がる。
 狂はそんな、白井の言葉を鼻で笑うと
「お前馬鹿か? 俺達が普通の高校生に見えるんだったら、とっととこの学校から出て行け。お前の親父の白井興産…確か、資本金5億程だったな? その程度の会社潰すの、1週間かからねぇよ…嘘だと思うんだったら、今からでも潰しに掛かるぜ。潰れた後で後悔しても遅いがな…」
 狂は白井に向かい、冷酷な微笑みを浮かべ、静かに告げた。

 白井は狂の態度に、狂の言っている事が本当だと察知する。
「お、お父様は関係ないでしょ…。私の事なんだから、私にしなさいよ…」
 白井は冷たい汗を浮かべて、狂に言うと
「フン…、理不尽な力を行使して来たんだ…。お前自身が受けるのも、悪くないだろうが…、先ずは全てを無くして、自分で死にたいと思う位置迄追い込んでやる、お前自身は、それからだ…。本当の力って言うのを、嫌と言う程味合わせてやる。楽しみにしてろ」
 狂は鼻で笑って、ポケットに手を突っ込み、白井に背を向け指導室を出ようとした。

 白井は狂の言葉に、もう父親の会社がターゲットに成って、自分が追い込まれる事が、決定した事を知る。
「ちょ、ちょっと…待って、待って下さい! お願い、お願いします」
 白井は慌てふためき、必死で狂を追いかけ、縋り付き
「ゆ、許して、許して下さい。もう、二度としませんから。二度と奴隷を壊すような真似をしませんから…お願いですから止めて下さい!」
 泣きそうな顔で狂に許しを請う。
「約束しろよ…。俺はどこでも見ているからな…」
 狂は白井に念を押して、白井の身体を振り解き、生徒指導室を出て行った。
 白井はポツンと生徒指導室の床に座り込み、顔を蒼白にしてガタガタと震える。

◆◆◆◆◆

 由香を伴い直美と奈々はイソイソと職員室を出て、廊下に移動する。
 直美が由香の手を握って先頭を歩き、奈々が由香の背中を押す。
 3人はイソイソと人気の無い校舎裏に、急いだ。
 職員室では、黒澤が立ち上がり大貫と大城に目で合図して、職員室をでる。
 黒澤が職員室を出ると、大貫と大城が後を追って、職員室を出て行った。
 黒澤が小会議室に入ると数秒遅れて、大貫と大城が小会議室に入ってくる。
「さて、大城先生? 一体何を吹き込んだんですか?」
 黒澤が大城に質問すると
「はい、あの子達、自分達の服に盗聴器が仕掛けられているのも知らず、2人でグジグジ服従するか、しないか相談していて、最後には逃げ出す相談を始めたので、私が大貫先生に芝居して貰って、釘を刺したんです」
 そう切り出して、朝の階段室の話を一部始終話し始めた。

 黒澤は話を聞き終えると、大城を見てフッと笑い
「それでは、私はまるで貴女方の主人では無いですか…。一方的に私を祭り上げられるのは、私としても困ります」
 大城に冷たい目線を向けて、静かに告げる。
 大城は黒澤の言葉と目線に震え上がり、床に平伏して
「申し訳ございません! 私の独断でこのような事をしてしまい、どうかお許し下さい」
 黒澤に謝罪した。
 大城が平伏すると、大貫が一歩前に足を踏み出し
「黒澤先生…大城先生をお許し頂けないでしょうか…? 彼女も、悪気が有ってやった訳では無く、彼女達の背中を押しただけのつもりだったんです…」
 大貫が黒澤に大城を許すよう口添えする。

 黒澤はジロリと大貫を見詰め
「大貫先生…。それは、私に折れろと言う事ですか? 貴女は、私にそれを依頼する立場に居る人間ですが、貴女だったらどうします? 自分の知らぬところでコソコソ動かれ、挙げ句に自分の奴隷を連れて行かれたら? 貴女はそれでも納得出来ますか?」
 大貫に問い質す。
 黒澤の言葉は確かに正論であるが、その物言いは明らかに、大貫達を仲間と思っていない節があった。
 大貫はそれを感じ取り、プルプルと震えると
「黒澤先生…先生の物言いは、私達を信用されていません…。まるで、全く関係ない他者を相手にお話をされているように聞こえます」
 黒澤に向かって抗議する。

■つづき

■目次3

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊