夢魔
MIN:作

■ 第28章 暗雲1

 学校は昼休みを迎えていた。
 職員室にも人影が無く成り、閑散としている。
 その職員室の奥まった一室に、9人の人間が集まり、話をしていた。
 その9人は、校長、教頭、指導主任の学校三役と、黒澤、大貫、京本、小室、迫田の各教科主任と、稔だった。
「いや〜本当に、惨憺たる有様ですな…」
 校長が各教科主任から提出された、1学期の期末試験の結果を見て、呆れ果てた声を上げる。
「本当ですな…。学年の平均点がどれも、30点を切っている…」
 教頭も溜息を吐いて、試験結果の集計用紙を机に放り投げた。
「3年の点数が、この時期これだと…、かなり問題有りませんか?」
 指導主任が口を挟むと、各教科主任が教師の顔で項垂れる。

 そして、全員の視線が稔に集まると
「お、凄いですね…流石は美紀です…。この問題で平均53.5ですか…」
 稔は集計表の中から、自分の奴隷の名前を見つけ、ニコニコ微笑んでいた。
「柳井君…、そんな暢気な事を言っててどうするんだい? 君と工藤君は良いよ、全科目満点なんだから。だが、入試を控えた3年生にはこの事実は、重すぎるよ」
 黒澤が真剣な表情で、稔に問い掛けると
「この結果は、解りきったものです…。計画通りですよ」
 稔は顔を上げ、教師達に告げる。

 稔の言葉に驚いた教師達に、校長が笑いながら
「いや、脅かして済まんな、実はこの試験は、生徒全員に夏休み補習を受けさせるのが目的なんだ。PC教室でな…」
 計画の内容を告げた。
 すると小室がそれに気づき
「って事は、夏休み中に生徒達を目覚めさせるって事ですか?」
 驚きながら、校長に問い質すと
「ええ、この学校は1年が5クラス2年が4クラス3年が3クラスで、計12クラス有ります。1日2クラスしか捌けませんから、1回の教育に必要な日数は必然6日間です。これは、日曜を省くとして1週間に相当します。それが、5回必要なので、全クラスの教育に掛かるのは5週必要だと言う事です。これは、夏休みに当て嵌められると、思いませんか?」
 稔が校長に代わり、理路整然と説明する。

 稔の説明を聞いた小室は、頷くしかなかったが
「しかし、それはそれで、問題が起きませんか? 監督する教師も…」
 京本がそう呟いた時、自分でその事に気が付いて
「そうか、それで奴隷化を始めたんだ…。奴隷にすれば、文句は出ない…」
 呟いた京本に
「それだけでは、有りません。登校してくる生徒達に、体罰が自然に感じるようにするには、お手本も必要ですし、まだ、奴隷化されていない教師も、学校に出て来て籠絡するチャンスが増えます、それに調教のため教師達が集まっても不自然では有りません…。以上が今回の期末試験のレベルを上げた理由です」
 稔が補足説明をする。
 稔の説明を聞きいた教師達は全員頷いた。

 稔は資料を集めながら、教師達に話し始める。
「それを、全員に納得して不自然に成らないように伝えるため、午後から臨時の職員会議を開いて頂きます」
 一旦口を閉じた稔は、その場に居る主任教師達が、頷くのを確認すると
「補習の話とは、別の事があります。どちらかと言うとこちらの方が、皆さんに集まって頂いた本題です」
 再び口を開いて、静かに話し始める。
「本題とは、意識調査に近い物で、現状の女性教師達の反応を見たいと思っています。議題は[首輪]についてです…。先ずは大貫先生に、女教師を糾弾して頂き、そうですね…黒澤先生がそれに反対して下さい。教頭と指導主任も大貫先生に倣って糾弾側をお願いします。京本先生と小室先生は黒澤先生と擁護派に付いて、会議を煽って下さい。迫田先生は頃合いを見て、校長に採決を求めて下さい。落とし所は当然解っていますよね…」
 稔はこの会議で、首輪をした教師を公認させ、尚かつ各女教師達の言葉と態度を見て、現状の意識調査を行おうと考えていた。

 稔は全員に会議での役割を話して、会議をコントロールする事を依頼する。
 会議を司会進行する学校3役と、それに対して教師サイドの意見を束ねる、各主任教師がグルに成れば、会議の結果など、どのようにでも操作できた。
 その中で、各個人の反応を見て、稔はこの後の女教師達を陥落する、順番を決めて行くつもりで有った。
 そして、それはポイントに割り振られ、サディスト教師達のランクを決める為に使うつもりで居る。
 それを薄々感じる者、何となく重要な物だと鼻を利かせる者、全く感じない者反応は様々だったが、全員稔の指示に合意した。
 稔は伝達事項を終え、立ち上がると校長室を後にする。
 各主任教師達も自分の奴隷に会議の役割を伝えるため、イソイソと出て行く。

 稔と教師達が退室すると、校長は電話の受話器を持ち上げ、ボタンを押した。
 暫くすると、受話器から女の涼やかな声が響き、校長は自分の名前と用件を告げ、理事長に電話を繋ぐよう依頼する。
「もしもし、私です。柳井はどうやら、夏休み中に片を付けるつもりのようです…」
 校長が電話口に報告すると
『ほう、随分早いな…。確か、生徒に手を付けるのは、2学期が始まってからだと聞いていたが…。奴は何か、感づいているのか?』
 老人の声が訝しそうに問い掛けてきた。
「いえ、恐らく、何か別の理由で、女教師達が早く堕とせるように成ったのが、原因だと思います」
『別の理由? 一体何だそれは!』
「あっ、も、申し訳有りません。私も留守にしている間に、何かが起こったようで、ハッキリとした理由は分からないんです」
『留守というと、どこかのSMクラブで、遊び呆けていた時か…。本当に、クソの役にも立たないなお前は!』
 理事長は、苛立ちを押さえず、叩き付けるように通話を切った。
 校長は苦虫を噛み潰したような顔をして、受話器を電話に戻し、大きな溜息を吐く。

 そんな校長の反応を見て、教頭は内心腹を抱えて笑っていた。
 教頭は自分だけが仲間はずれに成り、SMクラブに行けなかったのを根に持ち、校長達が出掛けている間の情報を、一切報告していなかったのだ。
 教頭は深刻な面持ちで、校長に擦り寄り
「校長…済みません…。何分、彼らは私にも極秘裏に、物事を進めていたようなので、情報が入って来ませんでした…」
 教頭が校長の前で頭を下げると
「ああ、別に構いませんよ…最初から、当てにはしていませんでしたし、彼らの方が1枚も2枚も上手ですから、掴ませられる情報の信憑性も、疑わしいですからね」
 校長は、教頭の謝罪を嫌味で返す。
 教頭の後ろに控えた指導主任が、鼻で笑いながら
「無能…」
 小声で呟いた。

■つづき

■目次3

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊