夢魔
MIN:作

■ 第28章 暗雲3

 職員会議が始まると、大会議室へ教師達がゾロゾロと暗い顔をして入って行く。
 皆、この会議が何のために開かれるか、熟知しているようだった。
 職員会議の議題は、当然期末試験の惨憺たる結果がメインで有り、その対策として上げられた夏休みの補習授業に対する物だったが、それは30分程で片が付いた。
 どの教師も採点を行いながら、補習授業の必要性は感じていたようなので、さしたる抵抗も無く稔の計画通り、夏休みいっぱいを使って補習が行われる事に、あっさり決まった。
 そして、議題は問題の[首輪容認]の会議に入る。

 校長が議題を求めると、大貫が勢い良く手を挙げ、教頭の指名も無しに立ち上がり、6人の奴隷教師を指差して
「校長、私は教師にあるまじき行為を、見過ごせません! それは、そこの6人の首に巻いている物の事です!」
 [首輪]について、予定通り糾弾を始めた。
 大貫の糾弾で、茶番の幕が開き、奴隷候補の美人教師達は稔のシナリオの中で、踊らされる。
 奴隷教師達は、各主人からこの会議の事を知らされていたため、それぞれの役割を演じた。
 会議は予定通り、黒澤が[個人の主義への干渉]と突っぱね、それに小室と京本が賛同し、大貫を教頭と指導主任が後押しする。
 会議が紛糾を始めると、8人の女教師が断固反対の姿勢を取り、大貫を支持する。

 その会議の様子を稔と狂は、旧生徒会室のディスプレイでジッと見詰めていた。
「橋本先生は…本気で嫌悪してますね…村木、上川、瀬澤先生もそうです…東山と甲斐谷先生はどうやら釣られている感が有りますが、否定的は否定的です…。長谷川、上出先生は…これは…、嫉妬ですね…。この2人は、願望は強そうです」
 稔はディスプレイに浮かぶ、女教師の表情・仕草を分析し、カメラ越しに次々に心情を把握して行く。
 稔が言った言葉を、美香と絵美がそれぞれ分担した、女教師のデーターに書き込む。

 稔がディスプレイを見詰めていると、反対教師の言葉が途切れた瞬間、賛成教師の反抗が始まる。
「これは鬱積、反抗、不満、…対抗心この、6人はまだ駄目ですね…。首輪に対する思いより、相手に反発する事が目的に成っています。小早川、小島、木村、中原、吉田、岩崎、村井、この7人は動いて居ませんが、明らかに首輪に強い反応を見せています。あっ、まだ居ますね…金城、細谷、村瀬、神島、大河内、早乙女、神内、後藤、青木、斉藤この10人も、首輪に強い関心を持っています」
 稔は次々に、名前を挙げると美香と絵美がファイルをめくり、稔が告げた女教師の名前を探し出し、チェックした。
「金城、細谷、小早川、早乙女、神内の5人は、第1奴隷に指名されてますから、この5人から細部を煮詰めて行きましょう」
 稔がそう言うと別のディスプレイに、下からのアングルで映像が映し出される。

 映像が映し出されると、しきりに足を組み替える女教師やモゾモゾと座り直す女教師、股間を押さえ込む女教師の姿がハッキリと確認できた。
 稔は次々にその女教師達の仕草と、表情の変化を数値化して、様々な感情を10段階に評価する。
 稔の細部評価は、30分程で対象教師40人、全員分の点数を付け終えた。
 その頃になると、会議の内容も大勢が決しており、途中否定派に付いた教師達からも、離反者が出始め会議は急速に終結に向かい、議題提出者の大貫が黒澤の言葉に折れると、12人の教師が取り残される形で否定派を貫き、会議は校長の裁定に委ねられる。
 校長の裁定は勿論[容認]で、会議は幕を閉じた。

 教師達が2時間を超える会議を行った後、奴隷教師の側にそれぞれ数人の女教師が近づき、頬を赤く染め口々に質問を口にする。
 奴隷教師達はある時は素直に質問に答え、ある時は微笑んで話題を変え、ある時はやんわりと頑な否定を示した。
 奴隷教師の側に集まった女教師達は、その受け答えに[主人]の姿をハッキリ感じ取る。
 奴隷教師を質問攻めにしていた女教師が、数人笑顔を作りながらトイレに駆け込むと、その後を追うようにワラワラと他の女教師がトイレに殺到した。
 トイレはあっという間に満室となり、あぶれてしまった女教師達は、個室を求めて教室棟に走り出す。
 その姿を狂は、ケラケラ笑いながら見ていた。

 稔はデーター整理を終わらせると、椅子から立ち上がり
「狂。僕のここでの仕事は、今日は終わりました。後一つ仕事を終えて、僕は帰りますね…」
 狂に向かって、意味深に告げると
「ああ、そっちの方は頼むな…。どうも、あいつは俺の言葉を今一信用してねぇ…、お前の口から言った方があいつも納得するだろう…」
 狂は直ぐに理解し、稔の言葉に頷いた。
 稔も頷き返して、机から離れようとした時、フッと何かを思い出したのか、立ち止まって狂に向き直り
「所で、庵の機嫌は直りましたか?」
 昨夜の仲違いから、口を噤んで話をしなく成った、もう一人の親友の機嫌を問い掛ける。

 狂はパソコンを操作すると、ディスプレイを操作して、職員倉庫の映像を映し出した。
 倉庫の中では作業服を着込んだ庵が、黙々と責め具のメンテナンスを行い、沙希はそれの助手をしている。
 時折沙希が見慣れぬ責め具を見つけては、庵に使用方法について質問した。
 庵はその度、作業の手を止める事無く、沙希に使用方法を教える。
「あいつ、俺らにはぜってぇ手伝わせないくせに、沙希だとこの通りだ…。よっぽど沙希を信頼してる…。俺達に対する態度は、この状況を見れば、推して知るべしだろうな…」
 狂は大きな溜息を吐いて、肩を竦めた。
「仕方有りませんね、彼の場合は確固たる証拠がない限り、沙希を疑う事は無いでしょう…」
 稔も頷いて数秒映像を見詰め、踵を返すと無言で旧生徒会室を出て行った。

 一人部屋に残った狂は、パソコンを操作すると、監視カメラの映像を校庭に切り替える。
 校庭では盗撮防止用のフェンス設置工事が行われており、多くの重機材や部材が運び込まれ、作業員が忙しそうに動いて居た。
 狂はその作業員一人一人の顔を監視カメラに納めると、顔認識ソフトを使って素性を洗い始める。
 各出入り業者のコンピューターにハッキングして、社員リストを調べ該当者を捜す。
 次々に[一致]の文字が浮かび上がり、[該当無し]の文字が浮かんだのは、5人居た。
 狂はその5人の身元を心当たりを元に、再度検索を始めるとニヤリと微笑んだ。
 狂は納得して、ソフトを終了させると、監視カメラを校内に切り替え、自動追尾モードに切り替える。
「あ〜ぁ…疲れたし、俺も帰るかなぁ〜」
 狂は大きく背伸びをして、大きめの声で帰宅する事を独り言で呟くと、訝しむ絵美を連れて、旧生徒会室を後にした。

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