夢魔
MIN:作

■ 第28章 暗雲6

 稔は小会議室を出ると、美香を連れてそのまま玄関に向かう。
 美香は稔の後を、静々と付き従い歩いていた。
 玄関を出て、正門に向かうと工事業者が測量を行っている。
 正門から玄関までの間の幅20m奥行き30m程のスペースに、管理棟が建てられる予定に成っていた。
 工事は夏休み中に行われ、地下2階。地上3階の建物が、建つ予定に成っている。
 その他にも、教室棟の地下が拡幅工事をされ、職員棟に3階が増設される工事も始まっていた。
 この校舎の造成工事は、理事長の考案で行われているため、稔にもその細部は解っていない。
 稔は工事業者の作業を見ながら、理事長の行動を疑い始めた。

 稔と美香は学校を出ると、森川邸に向かう。
「さてと、お腹が空いてきましたね…。そこらで、何か食べていきますか?」
 稔が美香に問い掛けると、美香は稔の背後に擦り寄り
「あの、私の手料理では、駄目でしょうか…。稔様が来られても大丈夫なようにと、お父様が大型冷蔵庫を購入成されて、食材が詰まっております…。お父様、稔様のためにと、その中に高級な食材を沢山詰めてしまって…。私達では食べきれないんです…」
 美香が困ったような表情で、稔に告白すると
「満夫も、そんな事に気を回さないで良いんですがね…。解りました、美香の手料理を堪能しましょう。頼みましたよ」
 稔は溜息を吐いて金田の行動を呆れ、にっこり微笑んで美香に依頼する。
 美香は頬を真っ赤に染め、嬉しそうに微笑むと、元気に返事を返した。

 暫く通りを歩いていると、稔がポツリと美香に問い掛ける。
「こうやって、2人だけで歩くのは、久しぶりですね。そうだ、絶頂を我慢する訓練からですか?」
 稔の言葉に美香は頷き、はにかんだ表情を浮かべると
「そうで御座いますね、稔様と二人っきりに成れたのは、数える程でしたが…。その中でも、通りを二人っきりで歩けたのは、あの時だけでした。私にはとても、胸躍る楽しい一時でした…」
 稔の質問にウットリと答えた。
「そうですか、でわ、こんな事はどうでしょう?」
 稔はそう言うと、美香の手をスッと掴み、美香の身体を引き寄せ、自分の腕に絡めさせる。

 美香は稔の突然の行動と、その結果が余りにも信じられず、目を見開き固まってしまった。
(み、稔様…わ、私…今、稔様の腕を掴んでる? これ、腕を組んでるの? えっ? なに? どう言う事?)
 美香は余りの成り行きに、脳が付いて来ずパニックに陥った。
 稔はこれまで、厳格に美香を躾け、礼儀を学ばせてきた。
 その稔が突然、自分にこんな夢のような事を許可したのだ、美香にしてみれば、思考が付いて行く筈も無かった。
 そして、それ以上の事を稔が、美香の耳元に囁いたのだ。
「今日はこの後、美香以外誰も森川家に帰って来ません。梓は学会に出席して、明日の夕方まで居ませんし、満夫も週末の発表のために、病院で缶詰状態。美紀は今日は玉置さんの所で、帰ってくるのは明日の昼以降…。さて、そこで今完全に身体が空いた僕は考えたんですが、この時間を利用して、誰にも内緒で、今まで励んで来た奴隷に、ご褒美を上げようと思うんですが…要りませんか?」
 稔の言葉を聞いた美香は、頭の中が真っ白になり、呆然と佇んでしまった。

 稔は黙り込む美香に溜息を吐くと
「う〜ん…こう言うのは、余り良く思われないんですね…。今まで、忙しくしていたので、時間が出来たからと思ったんですが…僕の考え違いでしたか…」
 独り言で、ボソボソと呟いた。
 美香は稔の独り言を聞いて、意志が覚醒する物の、身体の反応がそれに全く付いて来ず、ガクガクとぎこちなく身体を動かしながら
「ち、違います…イヤ、それ要ります…やん、稔様…止めないで…。下さい…美香に…それ…下さい〜!」
 ボツボツと単語を吐き出し、最後にやっと、力が入って稔の腕を両手できつく抱きしめ、しがみついて大声で稔に訴えた。

 稔は初めてここまで取り乱す美香を見て、キョトンとした表情で美香を見下ろす。
 美香は激情が爆発したような顔で俯き、ハアハアと荒い息を吐いている。
 稔が驚いて見ていると、美香は大きく深呼吸を一回して、キッと稔の顔を見詰め
「稔様、美香そんなご褒美頂けるなら、何でもします。いえ、何でもさせて下さい!」
 稔に必死の顔で懇願した。
 稔は美香の必死な顔を見て、困惑を浮かべると、スッと視線を外して上を向き
「う〜ん…ちょっと違うんですよね…。僕の考えるご褒美は、庵や狂の話を聞いて、考えた物なんですが…」
 そう言って眼鏡を外し、素顔を晒すと美香の顔を正面から覗き込み
「僕がして上げるんです。先ずはこんな所ですか…」
 そう言うと、美香の唇にとても優しい、軽めのキスをする。

 その瞬間美香の身体がストーンと膝から折れて、地べたに座り込んでしまい、足がピクピクと痙攣していた。
 美香の腕は稔の腕に絡めたまま、ぶら下がったような状態で万歳し、目は大きく見開いて稔を見詰め、口がポカンと開いている。
 稔は美香の姿を見て、心と身体のバランスが釣り合っていない事に気付く。
(美香はこう言うのは苦手なようですね…。どうも、美香は根っからの奴隷なんですね…命令され服従する事で、能力を発揮する。でわ、こんなのはどうですか?)
 稔は美香ににっこりと微笑むと、美香の前にしゃがみ込み
「美香…。美香は可愛い女の子です。ですから、甘えたおねだりも身に付けなければ成りません。僕が命令する、甘えたおねだりを精一杯考え、実行しなさい。今日はその訓練です」

 稔がそう告げると、美香の心と身体の歯車がかみ合い、蕩けるような微笑みを向け
「はい、稔様、美香はご命令に従います〜」
 稔の首に腕を巻き付かせ、抱きついて命令に従った。
「稔様〜…もう一度…キスして下さい〜…。優しいキスじゃなくて、強いのをお願いします〜」
 美香は鼻に掛かった声で、ウットリと目を潤ませ稔に唇を差し出す。
 稔は美香のおねだり通り、濃厚な口吻を美香に与えた。
 美香の背中が何度もビクビクと跳ね、お尻がブルブルと震える。
「美香…こんな、通りの真ん中で、キスされただけでイッたね?」
 稔が問い掛けると、美香はコクンと頷き
「はい、美香イッてしまいました…。エッチな美香をお仕置きして下さい…」
 美香は頬を染め、上目遣いで稔を見詰め、稔の命令通り甘えながらおねだりした。

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