夢魔
MIN:作

■ 第28章 暗雲7

 稔と美香は森川の家に着き、リビングに腰を下ろす。
 いつものように稔がソファーに座ると、美香は稔の足下の床にペタリと座り、稔を見上げる。
 美香の頬は上気して赤く染まり、目は泣いているように潤んでいた。
 稔はソッと美香の頬に両手を添えると、優しく口吻し
「美香は今から、梓の娘でも無く、美紀の姉でも無い、一人の女子高生、美香だ…何も人の事は考えなくて良い。僕の可愛い奴隷として、自分の好きなように振る舞いなさい…」
 美香の耳元に囁くと、美香の身体がブルリと震え、表情が更に蕩け、身体の力が抜け稔の足にしなだれかかる。

 美香の呼吸はハアハアと荒く弾み、稔の足に頬を擦りつけウットリとしていた。
「稔様〜…美香…稔様の足…ペロペロしたいの〜…」
 美香は顔を上げ、上目遣いで稔を見て、鼻に掛かった甘え声でおねだりする。
 稔はそんな美香の頬を優しく撫で
「良いよ…、美香の好きなようにしてご覧…」
 にっこり微笑んで、美香に許可を出すと、美香は稔の靴下を丁寧に脱がせて、赤ん坊がオモチャを口に含むようにし、ピチャピチャと舐め始めた。

 美香は飽くことなく稔の足を舐めると、突然何かを思い出し
「あ〜っ! 稔様のご飯〜!」
 ガバリと身体を起こして、立ち上がり台所に走り出す。
 美香は何を思ったのか、台所に走りながら、着ている物を全て脱ぎ散らかし、全裸になって台所に飛び込んだ。
 稔が呆気に取られてみていると、美香は直ぐに台所から出て来て、稔に飲み物を差しだし
「今お作りしますから、暫くお待ち下さいね〜」
 楽しくて堪らないといった表情で、稔に微笑みかけ、キッチンに戻っていった。

 稔がソファーから立ち上がり、ソッとキッチンを覗いてみると、美香はコマネズミのように、キッチンを移動し、ガス台にフライパンを掛け、冷蔵庫から材料を取りだし、鍋の味を整えて、野菜を刻み、肉に下味を付ける。
 その様子は人気レストランの、ピーク時のシェフのように、一所に止まらず全て流れの中で行う。
 稔はクスリと微笑むと、スッと流しに立ち、包丁を握って、周りの材料と鍋から上がる匂いで、ニンジンを手に取り
「これの、皮むきをすれば良いね?」
 美香に問い掛ける。

 美香はフライパンで、タマネギを炒めながら、驚いた表情を向け
「イヤン稔様〜…。美香が全部したいです」
 身体を震わせ、頬を膨らませて、だだをこねる。
 稔はそんな美香に、優しく微笑んで
「美香が居ないと寂しいんだ、早く料理を一緒に食べたいから、僕にも手伝わせてよ」
 美香に告げると、美香は嬉しそうに微笑んで
「は〜い、美香も一緒に食べたいです〜。じゃぁ、そちらお願いします。味付けと調理は任せて下さい」
 稔に言って、料理を再開した。

 稔が野菜を切っていると、フライパンの油が跳ね、全裸で調理していた美香の乳房に当たる。
「あつぅ…」
 美香の小さな悲鳴を聞いた稔は、直ぐに包丁を置き、ガス台の前で乳房を片手で押さえて、調理を続ける美香に近づき、素早くガス台の火を消して、美香の乳房を押さえていた手をどけ、火傷を確認した。
 油の跳ねた跡は白い美香の乳房に、赤い斑点を残していた。
 稔は驚く美香を尻目に、その斑点に唇を寄せ、火傷を冷やした。
「はうん、くふ〜ん…稔様〜…な、何するんですか〜」
 美香が鼻に掛かった声で、稔に問い掛けると
「美香、少し手を止めなさい。僕は、美香の綺麗な身体に、こんな火傷の跡が残るなんて我慢出来ない…。治療が先です」
 稔は真剣な目で美香を見詰め、言い切った。

 美香は稔が真剣な表情で、自分の身体を褒めた事と、それが傷つく事が我慢成らないと言われた事で、天にも舞い上がるような気持ちになり、陶然としながら[はい]と小声で返事をするのが精一杯だった。
 稔は美香の乳房に丁寧に、火傷の薬を塗ると、キッチンの隅に掛けてあった、エプロンドレスを手にし
「お願いだから、これを付けて下さい」
 そう言って美香の裸身にエプロンドレスをソッと掛け、美香の背後に回り、細腰の真ん中で蝶結びを作り、後ろから抱きしめた。
 美香は目の前が、グルグル回る思いだった。
(何? 何? このシュチュエーション…私が妄想した事が…全部、現実になって行く…やだ…稔様…私、そんな事されたら…おねだりしちゃう…。お料理の最中…[後ろから抱きしめて、使って欲しい]って…私の妄想…おねだりしちゃう〜…)
 美香は常々妄想する、稔とのラブラブシュチュエーションが、次々に現実の物となり、その最終項目が頭から離れなく成ってしまっていた。

 稔の治療が終わり、料理に戻っても、美香の動悸は止まらない。
 頬を赤く染めたまま、ソースを作り、根菜に湯通しをして、味を調えたサラダを盛り、後はパスタを茹で上げ、メインの肉を焼くだけに成った。
(ヤダ…妄想が頭から離れない…。ここで、後ろから腕を回されて…首筋に優しいキス…)
 美香が鍋を見ながら、妄想を思い浮かべていた時、稔が背後から近寄り、ソッと肩に手を添えながら
「どんな感じですか?」
 耳元に突然囁いて来た。
 美香はその瞬間[ひゃっ]っと悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちてしまった。

 美香はガス台の前の床に蹲り
「稔様…稔様〜…。もう、お許し下さい〜…、これ、恥ずかし過ぎます〜…」
 身体を抱きしめ、嫌々をするように身体を振って、許しを請い始めた。
 美香は心の奥を全て、晒され裸にされたような気持ちになり、堪えられなくなったのだ。
 稔は美香の身体を覆い隠すように抱きしめ、耳元に囁く
「美香に足りないのはそれだよ。美香は自制が強すぎる。だから、自分の本当を晒せない…。美紀は逆に我欲が強すぎる。だから、自制が止められない…。2人は、同じ場所で引っかかって居るんだ…」
 稔は美香の身体を優しく押し倒すと、フッと微笑んで
「今、何を一番して欲しい?」
 優しく問い掛ける。

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