夢魔
MIN:作

■ 第28章 暗雲19

 一方暴走した稔は、普段なら1時間程で昏睡から目覚める筈が、深夜を過ぎても一向に目覚める気配を見せず、大量の食料に囲まれて、安らかな寝息を立てている。
 その寝顔を、美香が泣きそうな顔で、ジッと見詰めていた。
(稔様…稔様…お目覚め下さい…稔様…)
 美香は稔の手をソッと握りしめ、祈るような気持ちで呟いている。

 美香の祈りが通じたのか、美香の握る稔の手がピクリと動き、美香の手を握り替えした。
 美香はその反応に、表情を喜びに変え、稔の顔を覗き込む。
 稔の頭が左右に揺れ、軽いうめき声が上がる。
 その時美香の頭の中に、狂の注意が蘇った。
[良いか、稔のうめきが始まったら、急いでその場を離れろ。手とか、身体に触れようと絶対するな! その場から離れられ無かったら、床に伏せて稔が声を掛けるまで、絶対に動くなよ]
 美香はその言葉を思い出し、ビクリと震えた。

 美香の左手は、まだ稔の手を握っていたのだ。
 慌てて放そうとしたその瞬間、美香の左手を稔の手が握りしめる。
 美香は自分の左手が、そのまま心臓に変わったと思う程、ドキリと胸が締め付けられた。
(あっ、もう遅いわ…狂様に、あれだけ注意されたのに…。でも、良い…稔様になら、例え殺されても構わない…)
 美香の心がそう決意を固めた瞬間、稔の瞼がスッと半目に開き、どこか神秘的な表情を作ると、稔の右手がスーッと上に持ち上がる。
(ああぁ…狂様の言われた通り…後はあの右手が、私の喉に掛かるのね…)
 美香は目を閉じ、スッと顔を少し上げ、白く細い首を晒し、稔の手を待った。

 稔の手は美香の頭に触れ、黒髪を優しく撫でるように、こめかみから頬へ移動する。
 美香はどこかウットリとした表情を浮かべ、稔の与える破滅を待った。
 だが、稔の手は狂の説明と違う動きを始め、頬を優しく撫でるとユックリと、向きを変えさせたのだ。
(あ、あれ? こんな事…言われて…ない…)
 美香は不思議に思いながら、顔の正面が稔に向いた時。
「ああ、やっぱり美香の手だったんですね…とても柔らかくて繊細な指…。所で、ここはどこで、僕はどうしたんですか?」
 稔の優しい声が美香を呼んで、問い掛けてきた。

 美香は狂に聞かされ思い描いていた事と、実際に起こった事柄のギャップについて行けず
「え、あ、そ、その…ここは…えっと…、あれ? 稔様…あれ? …」
 軽いパニック状態に成ってしまった。
 オロオロとする美香を見た稔は、スッと上体を起こし、美香の身体をベッドの上に引き込むと
「大丈夫だよ。僕はここに居る…さあ、落ち着いて、僕に教えて下さい…」
 美香の身体を優しく抱き締めて、美香を落ち着かせた。

 美香の気持ちは、稔に抱き止められ落ち着くと、今度は逆に安心が込み上げ、ボロボロと涙を流し始める。
「み、稔様…稔様〜…無事で良かった…。美香…死ぬ程心配しました…」
 美香の泣き出した意味が、全く掴めなかった稔は、キョトンとした顔をして
「ちょっと、待って下さい、僕は、今美香が泣いている意味が分かりません。それどころか、ここがどこなのか、僕がなぜベッドに寝ているのかすら、理解出来ていません」
 美香の頬を両手で支え持ち、困惑した表情で美香の目を覗き込んだ。
「あぁ〜…はい、申し訳ございません…。私も詳しい事を細部までは、お聞きしておりませんが、稔様は[暴走]を起こして昏睡され、狂様と真様、弥生さんの3人で、庵様とお父様の病院に運ばれました。庵様は直ぐに手術に入り、今はICUで狂様が看病を成されている筈です…。稔様は、1時間程で昏睡から目覚められると聞いておりましたが、今までお目覚めに成らず、心配しておりました」
 美香は稔の目に見詰められながら、説明をしたため、後半は頬を赤く染め、目を潤ませながらの説明になった。

 稔は美香から視線を外し、少し考え込むと
「そうですか、随分心配を掛けましたね…[暴走]を起こしたんですか…。お腹が減っている訳では無いのに…、良く理由が分かりませんね…」
 ブツブツと呟きながら、記憶をまさぐる。
 暫く考え込むと、稔のお腹が[グ〜ッ]と危険信号を成らし
「あ、今度は本当にお腹が空き始めました。美香その食べ物を頂きますね」
 稔は食べ物を美香に手渡され、次々に口に放り込み、飲み物で押し流す。
 美香が準備した、コンビニのおにぎり15個と総菜パン10個と弁当2個が、30分立たずに消えた。

 稔は2リッターのお茶を飲み干しながら、美香の身体を引き寄せ
「美香、ベッドに上がりなさい…」
 美香に命令を出す。
 美香は突然の命令に驚きながらも、直ぐにベッドの上に乗ろうとすると、稔の左手が布団を捲り上げ、右手は美香を巻き込むように抱き寄せ、隣に寝かせる。
「美香、心配を掛けました…僕は、大丈夫です。ほら、この程度に…」
 稔は美香の耳元に囁きながら、美香の手を自分のチ○ポに誘導した。
 美香は稔の行動に戸惑いながらも、脈動する稔のチ○ポに触れ、マゾ奴隷状態に入る。

 美香の身体からフェロモンが発散し、少女から牝に変わると、自分の衣服を剥ぎ取り
「あぁ〜、嬉しいです…、ホッと、致しました…。稔様に何もお怪我が無くて…本当に安心しました…」
 稔の横で妖しく肢体をくねらせ、稔の身体をまさぐった。
 稔は美香を抱き締めながら、今自分の中に起こっている事に、驚いていた。
(お、おかしい…。僕は、確かに性欲は強いですが…この、感じは何ですか…。美香を今すぐ抱きたい、犯したい、貪りたい…この渇望のような、欲求は何なんですか…)
 稔の意志の中に奥底からドンドン、美香を犯したいと言う、欲望が湧いて来るのだ。

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