夢魔
MIN:作

■ 第28章 暗雲27

 狂が出て行った後の旧生徒会室で、稔が独り言を呟いて居ると京本と迫田から次々に連絡が入る。
 どちらも4人目を堕としたと言う、連絡だった。
 稔はその連絡を受けると、直ぐに両チームを集め、2人目の奴隷をチョイスさせる。
 京本と迫田は焦りを感じていたのか、どれもランクAの堕とし易い女教師を選び出す。
 稔は京本と迫田のグループに意味深な言葉を告げる。
「良いですか、奴隷と主人には服従と支配が必要不可欠です。呉々も安心してはいけませんよ」
 8人の教師の中でこの言葉の意味を、正しく理解したのは京本、迫田、山孝、小室の4人であった。

 稔が解散を告げると、黒澤から連絡が入る。
「もしもし、どうしました? まさか、もう朝選んだ3人を堕としたんですか?」
 稔の問い掛けに、黒澤は笑いながら
『まさか、そんなに早く3人は無理ですよ。今の所1人だけです。ところで、柳井君に技術指導をして貰うというのはOKですかな? 私がやってしまうと、どうもみんな私に忠誠を誓いたがるモノで…井本の奴が拗ねてるんですよ…』
 稔に依頼し、その理由を告げた。
「そうですか、別に構いませんが、僕の調教方法がベストかどうかは解りませんよ…。それに、井本先生が拗ねてしまって居るなら放っておけば良いんです。朝言った僕の言葉を理解しない、井本先生が悪いんですから…」
 稔は黒澤の依頼を承諾するも、井本に対して辛辣な言葉を告げる。

 黒澤は困ったような声で
『う〜ん…、やっぱり、私もチームを預かる者として、それなりの責任を感じてるんです。ですから、落ち零れを出すのもどうかと思いましてね…』
 稔に心情を語ると、稔は平然とした声で
「ああ、それもあと少しです…。2度目のチーム編成を、2人目が出そろった時点で行いますから。その時点でその方の真価が問われます」
 黒澤に今後の計画を語った。
「従える技量のない者に、奴隷を持つ資格はありませんからね。これは最低限の事です」
 稔が付け足した言葉は、黒澤にはハッキリと理解出来たが、他の3人が理解しているかは疑問だった。
 黒澤は電話の向こうで、頭を抱えた。
 黒澤と約束を交わした稔は、その足で森川の家に行き、美香を伴って隣の市の総合病院に出掛る。

◆◆◆◆◆

 一方稔と仲違いした狂は、真と弥生と共に町外れの診療所に来ていた。
 中に入ると待合室の有った場所に机が並べられ、処置室はガラスで区切られ、様々な器機が搬入されている。
 弥生はそれらの器機を、目を輝かせて見、はしゃいでいた。
「わ〜、ミルサーに、遠心分離器…自動頓服調剤器に、軟膏ミキサー…何でも有る〜。これ、全部使えるんですよね?」
 弥生がキラキラとした表情で、狂に問い掛けると
「ああ、全部使って良い。一様、弥生の言った物は、全て置いて有る。後は、こっちのPCを使って制御してくれ。仕様は、弥生の昔の会社とほぼ同じシステムだ。少し俺が手を加えて、1mcg〔マイクログラム〕の重量配分が出来るようにしてる」
 狂は制御コンピューターの説明を始めた。

 弥生は狂の後ろに立つと、ディスプレイを覗き込み
「あ、もう既に私達が作った、お薬の調合データーが入ってるんですね。あれ、こっちのソフトは何ですか?」
 表示された画面の内容を確認すると、見た事がないソフトを見つける。
「これは、俺が作ったソフトだ。新薬制作の参考にしてくれ。こいつは、混合する薬剤と量を入力すると、それに併せて演算し人体に与えた時の毒性や効果や様々なデーターをシミュレーションして映し出す、通称[モルモット君]だ」
 最低のネーミングセンスだが、弥生にとっては夢のプログラムである。
「試しにほら、弥生の作った媚薬のデーターを、入力すると…。こんな風になる」
 狂が操作すると、[モルモット君]の胸あたりと下半身が赤くなり、頭部が青く染まる。
 ディスプレイに次々に効果が文字として打ち出され、最後に悪影響が映し出された。

 弥生はそのソフトを見て、[おー]と歓声を上げ、パチパチと手を叩き
「狂様。これ発売したら、相当売れますわ…。だって、マウスが要らなくなちゃう…」
 驚愕の表情で狂を褒め称えた。
「止せやい。俺が天才なの解ったろ? この程度は軽いモンよ」
 狂は照れながら、昂然と胸を張り弥生に威張る。
 だが、次の瞬間弥生に真剣な目を向けると
「だが、俺は薬学の知識は無い。本当にこうなるか、100%信頼はするな、あくまで参考に留めろよ」
 狂は弥生に釘を刺した。
 弥生は真剣な表情で[はい]と狂に返事を返す。

 狂が弥生に説明をしていると、真が奥から戻って来て
「狂君、奥のあれは何ですか? ここで一体何をするつもりなんです?」
 不思議そうに狂に問い掛ける。
「ああ、あれね…。稔の発案なんだが、ほら、脱毛やピアッシングを希望する奴隷に、総合病院じゃ不味いだろうって言い出して、こっちでする事になったんだ…。だから、一通りの物を揃えてる。開腹手術までは無理だが、大概の処置はここで出来るように成ってるんだ」
 狂は真に処置室の手術台を説明して、奥に進んで大きな扉を開けると、30畳程のスペースで、隅に薬の箱が山積みに成っていた。
 室内はコンクリートの打ちっ放しだが、天井にはクレーンが2基付いており、重量物の運搬もスムーズに成っている。
「でっ、ここが倉庫に成るんだ。搬入は裏から出来るし、機械も使える。これからは少し楽になる」
 狂は資材の搬入を手伝わされ、酷い目にあった時の事を思い出し、ニヤリと笑った。

 2階に上がると生活スペースに成っている。
 階段の正面に20畳ほどのリビングキッチンが有り、採光を多く取ったかなり贅沢な作りで、リビングキッチンを出て直ぐ脇にはトイレが有り、その横が洗面所と浴室だった。
 トイレは洋式が2つ並んでおり、洗面台も数人が使える物が置いていて、浴室もどう見ても大人6人が同時に入れるサイズから、この診療所は最大7〜8人の宿泊を計算している造りに成っているのが解る。
 奥に行くと8畳程の2人部屋が3つ、20畳程の主寝室が1つ、そして10畳程の正方形の板張りの部屋が1つ有った。
「ここが、真さん用の診察室。真さんが言った通り、部屋は正方形で採光は南と東に1つずつ。内装材も全て指定通り」
 狂は板張りの部屋を示して、狂に微笑みかけた。
「う〜ん…、有り難いですね。このサイズがやはり私にはピッタリ合う…。ここなら、私の能力を100%発揮出来そうです」
 真は板張りの部屋に入ると、柱や内装材の感触を確かめながら、満足そうに言った。
(おいおい、真さん…。真さんのあれって、100%じゃ無かったの…一体この人、どこまで化け物なんだ…)
 狂は真が呟いた言葉に、思わず寒気がする。

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