夢魔
MIN:作

■ 第28章 暗雲28

 狂が真に説明していると、弥生の姿が見あたらなかった。
 狂は訝しみながら弥生を捜すと、弥生は主寝室でキャッキャとはしゃいでいた。
 狂が呆れて弥生に声を掛けると
「狂様、凄い凄い〜。クイーンサイズのウォーターベッド、始めて見ました〜」
 弥生はベッドの上で身体を弾ませながら、嬉しそうに狂に告げる。
「正確にはウォーターベッドじゃない…、ジェルベッドだ。普通のウォーターベッドだと、真さんの動きで壊れそうなんでな…強度を上げるために、こっちにしたんだ。これも、特注品だ…可愛がって貰え」
 狂はニヤリと笑って弥生に告げると、弥生は頬を真っ赤に染め、俯きながら[はい]と答えた。

 狂はセキュリティーとこの施設の性質上、窓は全て強化ガラスで覆われ、外と接している扉類は全て鋼鉄製で、ピッキング不可能な錠を使っている事を説明し
「絶対に無くすなよ! こいつが無かったら壁をぶち破らなきゃなんねぇ…。セキュリティー上スペアーは1本、こっちは真さんに渡す。俺達も入る事はできねぇ、2人の城だ…大事に使ってくれ」
 鍵を弥生に渡して、そう告げた。
 弥生は狂達の気遣いに、感激の涙を流しながら
「弥生、死ぬ程頑張ります! 絶対に狂様達のご期待に添う事を誓います!」
 狂に抱きつき、感謝する。
 後に、この堅牢さがネックに成るとは、この時の狂は考えて居なかった。

 診療所の説明を終えた狂は、弥生に問い掛ける。
「これで、大量生産の目処は立ったな…。ところで、稔のオーダーはどれくらいでこなせる?」
 弥生は少し考え込むと
「そうですね。間違い無く、今の20倍の速度で調合出来ますから、5日も有れば揃います。今あるストックの3倍の量が2週間有れば揃いますね」
 弥生は狂にキッパリと答えると、狂はニヤリと笑って
「後は新薬を作るなり、3人で時間を使うなり、有効に使ってくれ…。聞いてるぜ、美由紀の事…随分優しいんだな?」
 弥生に告げると、弥生は頬を染め
「イヤですわ…。美由紀は本当に可哀想な女性です、真様に癒されても罰は当たりませんし、私も彼女の事は好きです…。それに、私一人では真様がお可愛そうです…。真様、結構我慢して、私に合わせて下さってるんですよ。最近それが解るようになりました…」
 少し照れながら話すと、真の事を気遣い落ち込んで行く。

 狂は真の異常性と弥生の成長を感じ取り
「そ、そうか…。まぁ、弥生が納得してるなら、俺がとやかく言う事じゃ無いな…」
 かなり、驚きながら曖昧に弥生に告げる。
 弥生は頬に手を添え、大きく溜息を吐くと
「真様、私を早く修行に連れてって下さらないかしら…。このままじゃ、真様の伴侶として、役不足も良い所ですわ…」
 ブツブツとぼやき始めた。
 狂はそんな弥生を見詰めながら
(こいつも、化け物の世界に足を踏み入れてんだな…。今のこいつがどれだけか知らないけど、きっと、とんでも無いんだろうな…。真さんとずっとSEXしてるんだから、当たり前っちゃぁ〜当たり前なんだろうけど…)
 弥生が女性版SEX魔神に見えて、仕方がなかった。

 狂が弥生と話をしていると、真が主寝室に駆け込んで来て
「狂君? ここは、いつから使って良いんですか?」
 狂に問い掛ける。
 狂は真の表情を見て、相当気に入った事を確信し
「真さん、今から使って構わないよ。だけど、成るべく極秘裏に使って…。まだ、人目が集まるのは、避けたいんで…。理事長グループにここがバレると、話がややこしく成るから」
 真に許可を出すと、注意事項を与えた。

 真はにこやかに微笑むと
「う〜んこうしては、居られませんね…。香炉と敷物を急ぎ取って来なくてわ」
 バタバタと慌ただしく出て行こうとする。
 その真の背中に、弥生が慌てて声を掛けると
「真様…出来れば、美由紀を呼んで下さい…。晩ご飯美由紀に任せますから」
 真は弥生に振り向きざま
「はい、解りました。でわ、今から5分後ぐらいに家に着くと、連絡していて下さい」
 弥生に向かって告げ、そのまま出て行った。

 狂はその会話を聞いて、頭を捻る。
(俺の常識がおかしいのか? 確か、弥生は真さんの婚約者で、美由紀は愛人? の筈だよな…。それを弥生自らが呼び寄せて、真さんもアッサリ連れてくるって…おかしいだろ?)
 狂は独占欲が強いため、自分も奴隷を一人しか考えていない。
 いわゆる、[一穴主義者]である。
 だから、どうしても稔や真の状況が納得行かなかった。
「弥生…。今お前、美由紀を呼んだけどさ…。良いの? その、真さんが別の女とSEXしても…」
 狂は弥生にどうしても、この答えを聞きたかった。

 弥生は狂にキョトンとした顔を向け、クスクスと笑うと
「狂様…、私一人で真様の相手が務まるはずが無いじゃないですか…。それに、あの方に嫉妬なんてしたら、それだけで冒涜ですよ。神様が誰かを助けたからって、それに嫉妬する者は居ません。あの方は、心に傷の有る女性に取ってリアル神様です」
 真面目な顔をして言い切った。
 狂は弥生の顔を見詰め
(真さん…SEX教団の…教祖みたいに成ってる…。あれ、立川流って確か、SEX教団か…。その宗家だから…そのまんまじゃん!)
 狂は改めて、真の立場に気付き、頭を押さえて溜息を吐く。

■つづき

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