縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第1章「縄の洗礼」10

どんなパーティなのか想像できた。
―会員制だから身分のしっかりした人なのだろうか・・・
もう指定された時間まで30分しかない。
ポエムからは急いでも10分近くかかる距離だ。
紙袋を抱えトイレに向かった。

トイレに入り、紙袋から取り出したチャイナドレスは、絹のスベスベする生地で、丈はロングだが腰の辺りにまでスリットが入っていた。

とりあえず、トイレで素っ裸になり、チャイナドレスを着てみた。

それにつけてもスリットの深さが問題だ。
―少しでも大股で歩けば、無毛の秘丘がみえてしまうかも・・・
着てきたパンツスーツを紙袋にしまう。

ショーツを着けようとも思ったが、後から昌也にばれると厳しいお仕置きが待っている。
席に戻る前にマスターに声をかけた。

「今日のパーティ用ドレスなんです^^ 似合います?」
あづみの上から下までを一瞥し、
「ほっほー^^ セクシーで素敵ですよ! 良く似合ってます!」とマスターが誉めてくれた。

「ありがとう! マスター^^」
時間が迫っていた。

コートを羽織り「マスター、ご馳走様〜」と精一杯明るい素振りで挨拶を残してポエムを出た。

あづみは急ぎ足でクラブ鹿鳴館へ向かいながらも、『行かない事』をずっと考えていた。
夏にハプニングバーを嫌がって以来、昌也に逆らう2回目の出来事になる。
その時は、暫く不機嫌だったが、何とか許してくれて今日まできた…
―どうなるだろう… 行かないと捨てられてしまうのだろうか…

コートの胸元を合わせ急ぎ足で歩いた。


明治ビルに着いた。
エントランスには何人かの人がいた。
すぐに右側のエレベーターホールに向かう。
上階行きのボタンを押す前に、地下から上ってきたらしい右端のエレベータが開いた。
はたして先客がおり、タキシードを着た髭を蓄えた老紳士と、その影になるようにパーティドレスを着た女性が乗っていた。
「どうぞ!」といざなわれ、エレベータに乗り込む。
フロアボタンを押そうとしたら既に 8F のランプが点いていた。
「貴方もパーティに?」と紳士が尋ねた。
「は、はい。 お二人も?」
「ええ。今日は楽しみましょうね^^」
「え、ええ」と今日の内容がまったく判らないあづみは、生返事を返した。

「挨拶なさい!」と紳士が連れの女性を前に促す。
男性の陰になって良く見えなかった女性は、ネグリジェのような生地のドレスで、下着は何も着けていなかった。
乳首も下半身の陰りも透けて見えている。
しかも、首輪をされて、鎖がその紳士の左手に繋がっていた。
「…こんばんは。サチです。よろしくお願いします。」
声が幼い・・・。
ファッションに気をとられていたが、随分濃いメイクがされているが、きっと高校生か、もしかすると中学生かもしれないとあづみは感じた…
「こ、こちらこそ。 あのー、今日のパーティは・・・」

8Fに着きドアが開いた。
紳士が「さぁ、行きましょう!」とあづみの腰に手を廻しエスコートする。
後をサチが鎖に繋がれて追っていく。
廊下の突き当りに会員制クラブ鹿鳴館があった。

「本日はスペシャル会員様の貸切クリスマスパーティにつき、御予約のない会員様は入店をご遠慮申し上げます」
と張り紙がしてあった。

重厚なドアを老紳士が開けて、お先にどうぞ! と身振りであづみを店内へと案内する。
早鐘のように鼓動が打ち、手に汗をかく。
意を決してあずみは、足を踏み入れた。

今から起こる出来事が、夢を諦め東京を離れる原因になるとは、あづみには知る由もなかった・・・

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