縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第2章「ゲーム・サークル アトランティス倶楽部」6

「あ…じゃ、赤ワインを・・・」
「はい。かしこまりました」
「あの〜、近藤さんはまだ来られていませんか?」
会釈をして、立ち去ろうとした黒服に聞いてみた。
「まだお見えではありません。早くおみえになるといいですね!」と意味ありげな笑みを浮かべて立ち去っていった。

「ふぅ〜・・・」思わずため息がでた。
「ご縁がありますね。私は橘といいます。あらためてよろしく! 貴女は…」と橘がソフトな口調で尋ねた。
「あ、あづみといいます。よろしくお願いします」
「貴女のような美しい方と同じ席で光栄ですな^^ なぁ、サチ!^^」
目線を彼の足元に向けると、床にうずくまるように伏せていたサチが、赤い首輪に繋がった鎖を引かれ、ゆっくりと上半身を起こしてあづみを見つめた。
裸だった。
赤いボールギグを口から半分覗かせながら「バフッ」と声を漏らしてうなずいた。
あづみも時々付けられる事があるが、長時間付けられるととても苦しい。
外された後も顎の感覚が暫くもどらない・・・
サチの口から一筋、涎が糸を引き彼女の太股に繋がった…


―やっぱりそういう人達のパーティなんだわ・・・
初めて訪れる店で、下着を着けない恥かしい格好で一人でいるのはなんとも心細い。
が、昌也が来ると、あづみ自身がこのサチのような存在にさせられるのは分かりきっている。
この中に知っている人がいない事が、何よりの望みだった…
見渡して、参加している人達を確かめて見たかったが、それは同時にあづみの顔をみんなにも見られることになる。
今から何をどうしていいのか思いも付かない。
ドキドキしながら、『どうしよう?』の言葉だけが頭の中を廻っていた。

程なく、先程の黒服がワインが運んできて、グラスにワインを満たしてくれた。
ワインと一緒に、フランスパンのようなバデットに、ハムやチーズを挟んだカスクートがテーブルに置かれた。
「食事はパーティの後で改めてね! との伝言です。お腹の虫押さえにこれをどうぞ^^」
「ありがとう^^」
お店を終わって食事をする時間がなかったので、少しお腹が空いていた。
橘が、「どうぞ、御遠慮なく^^ 私たちは済ませてきましたから」と勧めてくれた。

さっそく、一つ手にとってほうばる。
「美味しい!」
とてもいい材料を使っているのだろう、上等のバターの豊かな味が芳醇なハムを引き立てている。
バデットの歯ごたえもちょうど良い。
ワインも至極上等なもののようで、フルーティでとても美味しい。

もう一つ手に取ろうとした時、店内にアナウンスが流れた。

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