縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第3章「高倉由紀ビューティクリニック」4

休み明けの火曜日、陽子は、あづみの顔を見るのが何となく気が重い・・・
どんな表情を自分が浮かべてしまうのか自信がなかったからだ。
あづみは、いつもと同じように笑みを浮かべ
「陽子ちゃん、日曜日はご苦労様でした。今日もよろしくね〜!」と明るく挨拶をして陽子の前を颯爽と通り過ぎていく。
「おはようございます」とつられて明るく挨拶した。

不意に、スタッフルームに向かいかけたあづみがきびすを返し、
「そうだ、陽子ちゃん、ちょっと相談があるの。お昼一緒に食べながらお話しましょ^^いいかしら?」
と小声で尋ねてきた。

「ええ、もちろん!」

―#麻耶のことがもうばれたのかしら?!
少し心配になったが、あづみの表情からみると、良い話のようで、ヤキモキせず昼を待つことにした。

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「凄いじゃないですか! 先生! おめでとうございます!」
遅いお昼ごはんに訪れたパスタ専門店で、あづみから日曜日の高倉由紀からの申し出の顛末を余すところなく聞いた。
あづみの家族も大賛成で、このビューティサロン・ジャムは、夫の健一が引き継いで経営するという。
このことは、本部も、高倉ビューティも了解済みで来月から早速その体制になるという。
いきなり聞かされて、凄く驚いてしまったが、素直にあづみの実力が認められた事がとても嬉しく涙さえにじんで来た。
が、その次には自分の処遇はどうなるのだろうとふと不安がよぎる。

あづみは、陽子の不安を察したかのように、直ぐに言葉を繋いで
「それでね、大きな組織に乗り込んで行くのに私一人じゃ不安なので、貴女を私の右腕として連れて行きたいって条件出してたら、即OKの返事が返ってきたの。貴女には事後承諾になっちゃったけど、私を助けてくれない? お願い!」と手を合わせながらあづみが言った。

陽子は地元出身だが、親から独立したくて、一人でアパートに住んでいるので、福岡に転居するのには何の問題もない。
一瞬、昨夜のあづみの緊縛写真が頭をよぎり、何なのか自分でも説明できないあづみに対する怒りで、少し意地悪してあげようか?! と思ったが、仕事とは全く別の話だと思い返した。

自分にとって尊敬するあづみの頼みだし、まして自分にとってもこの上ないチャンスでもある。
「何言ってるんですか! あづみ先生! 怒りますよ^^ 私に手なんか合わせてお願いなんてしないでください。連れて行くと声を掛けて頂ける私の方こそお礼を言わなくっちゃいけないんですよ〜^^  うふふ^^
私でよければどうか連れて行ってください、せんせい!」
あづみは、陽子の手を取り、涙をこらえながら言った。

「陽子ちゃん、ありがとう! 頼りにしてるわ。ありがとう」
「話が急で大変だけどよろしくね^^」
「はい!」

「うふふっ^^*」「あははっ^^*」
共通の大きな目標が出来た二人。
顔を見合わせると、なんとなく可笑しくなって、ふたりして暫くのあいだ、周りの目を気にしながら笑いあっていた。

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