縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第4章「覚醒」3

−麗香・ドッグスクール @−

昨夜、あづみは命じられた通り、麗香にメールを送っていた。

麗香は、side S に属した初めての女性メンバーだ。
プロフィールには、会社勤めの普通の男性と結婚しているが、女性を虐めるのも好きだという両刀使いの30歳代の女性サディストと書いてある。
縄で女性を縛って弄る事が無類に好きらしく、サークルの中に「麗香・ドッグスクール」という牝犬(マゾの女性)に、自分で自分を縄で縛る方法を教える講座を持っていた。
『masterkojiの愛奴、☆マリコ☆も既に入会しているので、おまえも入って、自分で自分を縄で縛れるようになれ!』というのが隆(★調教師)の命令だった。

今まで、サークルのメンバーに命じられるまま淫具を操り、自ら身体を虐め、慰めてきた。
Netを通して幾人もの他人に支配される疑似体験は、確かにあづみの疼く肉体を慰めてはいた。
しかし、あづみの身体の奥に刻み込まれた麻縄の快楽の記憶だけは、身体が思い出すのが怖くて、触れないようにしていたのだった。
が、逆に”縄”を避ける事が縄への欲望を増幅させているのかもしれない…
最近の身体の奥底から込み上げてくる狂おしい程の淫欲が、縄に触れて更に激しくなって抑えられなくなってしまわないか、とても不安だった。
―(でも「♪あづみ☆」のバーチャルな世界だから、大丈夫だわ、きっと…)

実際の人間に服従する”支配される快感”にだけは、再び触れてはいけないとあづみは、固く心に決めていた。
あの快楽地獄ともいうべき世界に再び足を踏み入れたら、二度と戻ってこれないんだろうと、あづみは確信していた。
―もう、あのころの私とは違うわ…
最愛の未来(みく)と、夫、健一との幸せな生活だけは、失いたくなかった。

先日、浩二からメールで貰った励ましの文章を頭の中で反芻する。
『頑張ってる自分に、たまには、ご褒美をあげても罰は当たらないよ!
別にさ、Net上で俺たちと遊んでるのって浮気をしているわけでもないんだぜ^^ 
反対にそんな事にならないようにイヤらしい身体や淫乱な心を懸命に鎮めようとしてるんだからさ!』

―(そうよね!私、凄く頑張ってるもん!^^)
激変した生活環境のストレスの中で、慰めも必要なのよ! とあづみは思う。
一人暮らしの気安さと、自分で自分を縛る”自縛”ならオナニーの延長だわ! 浮気じゃないもん! と自分に言い聞かせて、麗香にドッグスクールの入校を自分に納得させた。

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