縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第4章「覚醒」7

−麗香・ドッグスクール 3−

部屋に戻ると、何をおいても直ぐに、首輪を付ける事が習慣になっていた。
玄関横の下駄箱の靴箱に忍ばせてある。
隷属する相手は、浩二であり、調教師であり、麗香であった・・・
『心は行動に現れるんだよ! 毎日続ける事でホントになるんだ!』

近頃のあづみは、一日、精一杯働き、クタクタに疲れたその身体を、淫らな命令で虐めて貰う事が、唯一の息抜きようにさえなっていた・・・

再び蘇ってしまった縄の怪しい快感・・・・
自分で縛る力加減には限界があり、かつて昌也に施されたようなギリギリと骨が軋むような拘束感は味わえないが、麻縄の毛羽が肌を擦る感覚は、あづみの秘奥を熱くさせるには十分の刺激を呼び起こす。

今日は、会社から戻ると、ガーターで吊ったストッキングだけの姿で、ログインするように、麗香に命じられていた。

あづみは、高倉由紀から、下着は女性らしい美しいものを着ける様にアドバイスされていた。
由紀曰く、エレガントで上品な上着の下に、男性に魅せる為の下着を着けている自分をいつも意識する事で、しなやかな物腰の女に見えるという。
異性に対して良く思われたいのは動物の本能だが、あづみは『凛とした媚びない女性らしい美しさ』というものがあると思っていた。
女性の社会的進出がようやく日本でも当たり前になってきたが、男のような物言いをする性差を感じさせない女が増えて、その姿はあまり美しいものとはあづみには思えない。
『女らしい=弱い、媚』と決め付け、他人の意見にまったく耳を貸せないTVで吠える狭量な女性評論家を見ていると、『いつの時代の話なのかしら!?』と哀れにさえ思えた。

スタイリストの薦めもあって、博多へ来てからは、ガーターベルトでストッキングを止めて穿くようにしていた。
確かに動き回るにはパンティストッキングの方がはるかに機能的だが、ストッキングのズレなどを意識する事によって、自分の動作から、直線的な動きが消え、丸みが出てきたように感じがして、気に入っていた。

MSN Messengerを繋ぐと、既に麗香はログインしていた。

麗香とのチャットが始まる。
あづみは、いつもにもましてドキドキしている・・・
麗香に今日からのチャットは音声に切り替えると命じられていたからだ。


webカメラを要求されたが、それだけは堪忍してくださいと必死で頼んだ末、ようやく音声チャットで許して貰ったのだ。
『のろまのおまえとのチャットは疲れるわ! おまえだって手が自由になってそれの方がいいだろ!? 何せ縛られて手が使えないんだからね! ほほほっ!』
初めて聞く麗香の声は、突き放すような怜悧な感じがする甲高い声だった。

お昼休みに、お店の近所の家電量販店で指定されたワイヤレスのヘッドセットを買った。
耳に引っ掛けているだけで、音も聞こえ、話も出来るらしい。

まず、10mのロープを2本繋ぎ、50cm間隔で結び目を作れと命じられた。
『モタモタしないの!』
「はい!」
―(何、これ… 目の前で命令されてるみたい…)
あづみは、戸惑い、ドキドキして手が震えていた。
いつものような文字のやり取りの時間差もなく、相手が怒っている様子が手に取るように判る。
自分がドギマギしているのもすべて伝わってしまっているんだろう…
―(どんな人なんだろう・・・)
リビングのソファで裸のまま作業を終え、次の命令を待つ。

『貴女の寝室のドアノブと、リビングの玄関へのドアノブの間に、その縄を張りなさい!』
『はい!』
言われたとおり作業をしている間、ヘッドセットからは麗香の息遣いが聞こえていた。

『出来ました・・・』
『そ! じゃこの間、教えた、後ろ手縛りで自分を縛りなさい! この前よりきつく縛るのよ! あづみ!』
『はい・・・』

窓に、エステで磨き上げられた裸身を映しながら、我が身を拘束していく・・・
『ああぁぁ・・・』

黒いガーターで吊った黒いストッキングと赤い首輪を付けただけのイヤらしい自分の身体を見つめながら縄を身体に這わせていく。
身体の奥から、淫汁が吹き零れてくる・・・

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