縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第5章「魔手」1

− 陽子の心配 −

陽子は、あづみの事が気掛かりでならなかった。
少し慣れたとはいえ、家族と離れ、一人暮らしの生活を始めてはや2ヶ月。
毎日、慣れない仕事を懸命に頑張ってこなしているあづみは、ほぼ連日のように夜中まで打ち合わせを兼ねた会食にも顔を出している。
陽子とは、ほぼ毎日顔を合わすが、あまりゆっくり話す時間も取れないほどだ。

しかし、そんなことより、アトランティス倶楽部で見せるあづみの痴態の事が気に掛かっていた。
お店から戻ってホームページを見ると、昨夜にはなかった画像がUPされていた。

「麗香のドッグスクール」という、”自縛教室”でmasterkojiの愛奴の☆マリコ☆と共に、自分で自分を縄で縛るという講座を受けて、夜な夜な自縛しているらしい。
その時の証拠としてあづみのページに縄掛けされたあづみの画像が日に日に増えていっているのだ。

携帯で撮られた画像で、そんなに鮮明ではないが、どう見ても、何度か行った事があるあづみのマンションの一室で撮られた写真だ。
それに顔のモザイク処理が甘くなっているみたいで、あづみを知っている人がみたら判ってしまうに違いない。
どんどんエスカレートしていくあづみの事が、心配でたまらない。
『あづみ先生、家族と離れて暮らすストレスなのかなぁ… 凄くいやらしい…
元々そんなそんな趣味があったのかしら…
これからはマスコミの取材が増えるように聞いてるし、高倉先生のお耳に入る前に、やっぱりあづみ先生にサークルはもう辞めて貰うように言わなきゃ・・・』

陽子は、あづみの気持ちが少し分かる気がした。
ウソをついてサークルに参加した事を疑われないようにと思って、一度だけ参加した「生贄イベント」で集団チャットで虐めて可愛がるという行為に初めて接した時、ビックリするほど感じてしまったし、下着や唯一持っているバイブレータの写真がホームページに掲載された時は、凄くドキドキする経験をした。

でも、あづみのようにここまで来ると、あまりにも危険な気がする。
こんな事が公になってしまうと、せっかくの高倉ビューティでの地位も、幸せな家庭もみんな失ってしまうかもしれない。
陽子は言いにくいけど、あづみにサークルでのあづみの痴態を知っている事を告げ、辞めるようにいうのは、あづみに可愛がってもらっている自分の務めだと思った。
相談があるので話す時間を取ってくれる様に頼んでいたら、それじゃ明後日の休みの日に、夕食を一緒にしましょうと時間を貰った。
夕方まで、お店の内装工事に立会うので、どうせ佐世保には帰れないし、さみしいから一緒に食事しながら話しましょうと、あづみは悦んでくれた。

『そうだ! 先生をこの部屋に、招待して故郷・佐世保の料理をご馳走してあげましょっと^^* 外のお店じゃ他の客もいるし、喋り辛いもんね^^
よ〜し! 長崎名物けんちん汁と、長崎てんぷらと、こぐり(いわしと大根の味噌炊き)だぁ〜^^*
先生の好きな球磨焼酎も用意しておかなくっちゃ^^』

翌日、早速あづみに伝えると、嬉しい! 期待してるわ! ともの凄く喜んでくれた。
喜んで貰った事も、一緒に食事できる事も嬉しいが、その分言いにくい話をしなければならない事で、陽子は少し複雑な気分だった。

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