縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第5章「魔手」13

−全身脱毛−

あづみと陽子は、頭髪のプロだが、高倉ビューティの主力であるエステについては、通り一遍の知識しかなかった。
しかし、自分が担当したカットやパーマのお客様が、引き続き同僚のエステを受けるのに立ち会ったりして勉強していたので、かなり実践的な知識を身につけていた。

年末に、高倉由紀から直接電話が入り、新規事業用の新しい技術についても熟知するために、あづみと陽子に、東京本社での研修に来るよう指示があった。
「セレブ フルボディ スペシャルエステ」と名付けられた新サービス開始の3月まで2ヶ月を切っていた。
まだ博多の店には、設置されていない新しい機械を使ったカリキュラムは、代々木の高倉ビューティ本社の研究所でしか行えない。

年明け早々の忙しいスケジュールをやり繰りし、2週目の木曜日から月曜日までお店の休みを絡めて、東京へ行くスケジュールたてていた。

エステと一口に言っても数多くのメニューが開発されている。
高倉ビューティでは、フェイシャルエステ、Bodyエステ、Epilation(脱毛)、Hairエステ、ネイルケア、Men’Sエステなどそれぞれに高倉由紀の他店とイと味違うアレンジが施され、人気の元となっていた。

由紀からは、私に次ぐ高倉ビューティの”広告塔”の役目も負っているのだから『いつも綺麗でいてね』と言われ、博多の店でもサービスを体感する事を兼ねて、あづみも出来るだけ時間をこしらえて、自社のエステサービスを自分の体に施していた。
掛け値なしに、本当に心地よく、終わったあとの肌の張りは、驚くほどだった。

外出が多いあづみの代役を務める陽子と、二人同時に店を空けるわけにはいかないので、あづみが先発で受講し、陽子は、日曜日から木曜日まで受講する。

仕事はとてもやり甲斐があり、勉強する事も苦にはならないが、一つだけ気が重いのは、やはりなかなか愛娘の未来(みく)に会えないことだ。
3歳の可愛い盛りで、覚えたばかりの言葉をたどたどしく懸命に喋る未来の姿が瞼に浮かぶ。
年末・年始に2日だけ、水前寺に帰ることが出来、久しぶりに顔を見る未来は、普段会えない分を取り戻すかのように精一杯あづみに甘えた。
短い休みを終え、博多に戻る時、玄関先で、手を力いっぱい振って見送ってくれる未来をみていると、涙が止まらなかった。
未来の事を思うと不謹慎な気もするが、明日の日曜には、東京で陽子と1泊できるので、少し心が弾んでいる自分に気付いた。
研修だから、そんな機会を持てるかどうかは分からない。
陽子と始めて肌を合わせてからまだ2週間弱だが、すでに2回、陽子があづみの家に泊まり、あづみを慣れない手つきで縄掛けし、懸命に”ご主人様役”を努めようとしてくれていた。

女の陽子が相手だからか、不思議と夫:健一に対して、罪の意識は起こらず、二人の時間をそれなりに楽しめていた。
それは、もう何年も夫婦の交わりがない事と無縁ではないだろう。
健一は、この正月休みの間も、親戚達と朝から酒を飲み、あづみの身体に触れようともしなかった。
陽子との関係は、女の柔らかい体の感触も、女ならではの微妙な愛撫がもたらす快楽はもちろんだけれど、それよりも、普段仕事上では部下として命令に従う陽子に、その時は立場を逆転して従属する事、その心の揺れを楽しんでいると言ったほうが正しいのかもしれない。
淡い期待を抱きながら、東京行きの準備をした。

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