縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第6章「大阪出張」5

−川嵜 巧−

小倉を離れると後10分程で、博多に到着する事を車内アナウンスが告げた。
隣の男性が身支度を始めた。

その時あづみの携帯が鳴る。
秘書の横田真二だった。

『先生! お疲れ様です。まもなく博多ですよね!?』
「ええ…」周りを気にして受話器を手で囲い、小声で答える。
『先生! お疲れのところ大変申し訳ないんですが、博多に着かれたら1軒だけ、顔出しをお願いしたいんです。
由紀先生から、地元の有力な政治家先生の食事の席に出て欲しいと連絡がありまして、駅までお迎えに来ているんですよ。』
「そ、そう…」
『よろしいですか? 先生!?』
こんな格好のまま代議士のような社会的地位の高い人の席に伺うことは出来れば避けたい…
それに股間の淫具が、またいつ暴れだすかも判らない…
しかし、由紀の指示なら是非もなかった。
「ええ…」
「それで、政治家ってどなたなの?」
『川嵜 巧先生です』

「えっ…」
川嵜 巧… あづみと同じ「博多アレンツ」に住む元代議士だ。
時々エレベータで一緒になることがあった。
前回の選挙は、派閥領袖にも拘わらず、女性問題で落選し、今は盟友と言われる総理大臣から、内閣総理大臣臨時補佐官なる珍妙な役職に就いて、次の選挙に備えている浪人中の大物だ。
以前、エレベータで一緒になった時、『あんた ええ身体しとるのぉ〜^^』と失礼な声を掛けられたことがあった。
眼鏡の奥の目がいやらしく、生理的に受け入れられない大嫌いなタイプの男だった。
憂鬱になったが、ほんの1時間程だわ! なんとかなるでしょうとあづみは楽観的に考えるようにした。

車内アナウンスが、まもなく博多に到着することを告げる。
股間の淫具の存在だけが、気になっている。
もう少し早く連絡があれば、バッグにある爪切りでも使って、何とか皮のパンティを破って、バイブを取り去ることが出来たのにと悔やんでみたが、もうそれも間に合わない。
まもなく「のぞみ」は、博多駅のホームへ、静かに滑り込んだ。

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博多駅のホームには、横田が待っていた。
「あづみ先生! お疲れ様です。ほんと突然で申し訳ありませんが、もう一仕事、お願いします。1時間ほどお付き合い頂ければ結構ですので。」
「ええ。いいのよ。気にしないで^^」
約3時間、ついさっきまでバイブでいたぶられ、2回気を遣っていたあづみの歩みは、どこかぎこちない。
先に歩く横田に遅れまいと懸命について歩く。

横田の運転する車で、天神にある、料亭に連れて行かれた。
仲居に奥の座敷に案内され、襖を開けると、既に川嵜は、床を背に座っていた。
「遅くなりました。改めまして、高倉ビューティの麻木あづみと申します。
この度は、先生に大変お力添えを頂戴しまして、ありがとうございました。
本来であれば、高倉が参って御礼を申し上げなければなりませんのに、東京で、どうしても外せない所用が出来てしまいまして、私のような者が代参しました。失礼をお許しください。」
由紀の代理として口上を述べた。
車の中で、横田から今日の事情の説明を受けていた。
今回の事業展開の中で、認可や、出店箇所の交渉に随分世話になっているらしい。
とかく女性に対しては、良からぬ噂の耐えぬ人なので、横田にも同席して欲しかったが、先方の要望でお互いの秘書は陪席しない事が条件指定されているようだった。

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