縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第7章「姦計」7

−1023号室−

心臓が早鐘のように鼓動を打つ…
幸い、廊下には誰もいない。

指示された通り、廊下を左側に向かって壁際を伝うように歩きだした。

数メートル進んだところで、背後でドアが、ガチャリと閉まる音がした。
はっとした…
慌てて戻ってドアを開けようとしたが、ドアは既にオートロックで施錠されてしまっていた。
−あぁぁ…
もう選択の余地はない。
1023号室へ向かうしか途は残されていない…
両手で股間と乳首の飾りを隠しながら、1023号室の前に辿り着いた。

切羽詰まった便意が身体を遅う。
”コンコン”
ドアをノックする。
反応がない…
再びノックした。
携帯電話の麗香もきっとこの中にいるはず…
「開けてください… お願いします…」小声で電話に必死に話しかける。

”チン”

エレベータが近くの階で止まったらしい乾いた音が耳に届いた。
−ひぃ…まさか、このフロアなの?…
耳を澄ませ、人の気配を探る…

−イヤ…
足音が近付いてくる。
−このフロアだ! もうダメ。見られちゃう… どうしよう…
こんな姿の私を見られたらどのように言い訳しても、変態扱いされて警察に突き出されてしまう!… こっちへ曲がってこないで!…

身体をドアの方へ向けてうずくまり、身を固くしてその足音がこちらに向かわない事を願った。

「ああぁぁぁ…」
足音が近付き、あづみの真後ろで止まった。
−ヒイ… 向こうへ行って… 見ないでぇ…

「アンタ、変態か?」
頭の上から、若い男の軽蔑の色を含んだ蔑みの言葉が降ってきた。

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