縄奴隷 あづみ
羽佐間 修:作

■ 第9章「エピローグ」1

東京白金の高級住宅街
「ガチャン!」
いつものようにオートロックの鍵が開錠される音で、あづみは、朝6時に目覚めた。
目覚まし代わりに、飼い主が眠る前にセットする。
ここに住むようになってもう4ヵ月が過ぎ、季節は真夏を迎えていた。

住むというより飼われているというべきか…
箪笥がたくさんある納戸に設置された、藁が敷き詰められた大型犬用のドッグハウスが、あづみの寝床として与えられていた。
急いで顔を洗い、朝食の準備をするためにキッチンに向かった。
好みのうるさいご主人様家族それぞれに合わせてこしらえなければならない。

「おはよう! あづみ^^」
「おはようございます。まどか様!」
セーラー服の似合う痩身の可愛い女子高生に向かって、丁寧にお辞儀をして朝の挨拶をした。
あづみの飼い主、高校2年の吉岡まどかだ。
吉岡 隆(昌也)と真由美の連れ子、つまり高倉由紀の孫だ。
真由美が、聖マリア女学院を退学したのは、非行の果てにこのまどかを妊娠したからだった。
それまで、真由美の歪んだ性の捌け口にされていたあづみは、彼女が突然退学した事で、その地獄から解放されたのだったが、今日までその理由を知る事はなかった。
高倉ビューティの成功により、高倉由紀は、贖罪のつもりで真由美、まどか親子を、まったく甘やかして育てて、彼女達のやりたい様にさせてきた。
女に対しては、厳しいサディスティンとして振舞う真由美が、隆(昌也)に対して従順なマゾ奴隷として仕えている事を知り、非行の限りを尽くし、ようやく住む場所を得た娘の為に、隆を娘婿として迎えたのだった。
幸いにも、隆は、腕のいい美容師で、しかも経営センスを持っていたので、望外の跡継ぎが出来た事を喜び、高倉ビューティ内における権限を与えるようになり、今では代表権すら与えている。

隆のこの自宅は、高倉由紀と同一敷地内に2年前に建てられた瀟洒な洋館作りの豪邸だ。
東京転勤とは名ばかりで、ここでは吉岡家の家政婦兼娘のまどかのペットとして務め、外では、セレブエステの広告塔として好色な金持ち達の生贄として”奴隷”が主な仕事だった。
食事、睡眠、入浴、排尿、排便、生理、運動、あづみのすべては、まどかに管理され、従順なペットとして過していた。

今回の事も、すべてはまどかが、あづみを欲しがった事から始まっていたのを知ったのは、この家に飼われる様になって直ぐの事だった。
母親の真由美のパソコンを覗いて「アトランティス倶楽部」を知り、興味本位で「фmiyu†」というIDで参加して、あづみの動向を逐一知っていたのだった。

グレテいるという程ではないが、我がまま放題に育ち、とにかく言い出すと訊かない性質だ。
隆は真由美の連れ子のまどかには、まったく関知しないし、真由美や隆の性癖も知っていて、真由美はまどかに何となく遠慮してしまうので、余計に自由気儘に暮らしていた。
しかし現実的で賢い子なので、見るからの不良のような格好をすることなく、お嬢様学校に通い、賢く可愛い女の子を演じていた。
まどか自身にも、真由美の血筋なのか、サディスティックな性向があるようだった。
去年の12月になったなばかりの頃、朝食を摂っているときに、まどかが真由美に言った。
「ねえ、ママ^^ あづみって女、私に頂戴! ペットにしたいの! いいでしょ!?」
「ペットって貴女…… いきなり何いいだすの?」
「あづみを、お家で飼いたいの^^」
「いいでしょ?! 隆さん!」
まどかは、隆の事を名前で呼んでいた。
「はは^^ やっぱり血は争えないもんだなぁ^^ いいよ! 但し、条件がいくつかある。
ちょっと俺に計画があってな^^ 春になるまでは、我慢しなさい! それとまどかが飼い主になる事は認めてやってもいいが、2,3年は仕事ででも使いたいからその時は、俺やママが預かることになる。
それと最後にもう一つ! 生き物だから、健康に気をつけてちゃんと飼う事! 身体をむやみに傷付けない事! 世間に麻木あづみが牝犬奴隷だとばれない事! それが条件だ! どうだ? 守れるかな?」
「いいわ^^ 約束よ! 隆さん、ママ!」

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