Netに舞う女
羽佐間 修:作

■ 第1章 投稿小説「ちなみ 陵辱」4

 一眠りして起きるともう夕方だった。
「腹減ったなぁ。 飯のついでに買い物でもするか」

 自分で料理などしない真介の買い物は、食品とかの類ではなく、真介の必需品、酒、水、ビールなど飲み物がほとんどだ。
 ストックが乏しくなっていたので、煩わしいが駅前のスーパーまで車で行くことにした。
 冴えない白い中古のブルーバードだが、車好きでもなく、月に数えるほどしか乗らないので真介は気にも留めていない。

「おっ! 綾か?…」
 買い込んだ品物をトランクと後部座席に一杯詰め込み、スーパーの駐車場の出口で、歩道を歩く歩行者が途切れるのを待っていると、目の前を綾が小走りで横切った。
 朝、彼女が駅に来る道とは違う方向に駆けて行く。
 車を道に出し、追跡しかけたが赤信号で停まっている間に、綾は角を曲がって見えなくなってしまった。
――彼の家にでも急いでいるのか? それともバイトか?
 とりあえず綾が消えた角を曲がってみると、少し先にケーキ屋があった。
――ひょっとしてここがあの子のバイト先なのか?
 真介は甘いものは苦手だったが、車を停めて店に入ってみる事にした。

「いらっしゃいませ。」
 ショーケースの向こうに立つ店員が愛想良く挨拶した。
 そこには綾の姿はない。
 左奥に喫茶コーナーと書かれていたので、中に入り窓際の席に座った。
 コーヒーをオーダーし、店の中を観察した。
 二人いたウェイトレスは、メイド服のような制服を着て店のアンティークな雰囲気とマッチしてとても可愛らしい。
――綾が着たらもっと可愛いだろうなぁ。 しかし空振りだったな。 いい歳をして何やってんだか、、、
 店内は禁煙になっていて、ヘビースモーカーの真介にとっては至って居心地が悪く間が持たない。
 コーヒーを飲み干し、そそくさとレジに向かうと、果たしてそこには綾がいた。

 千円札を出しつり銭を受け取る時、綾の手が真介の掌に触れた。
 ほんの少し指先が触れただけなのに、なぜかとてもやわらかい感触がした。
――あちゃー。 ときめいてるよ、俺、、、

 店のドアを開けると、後ろから『またお越しください』と綾の声がした。
 心に響く優しい声に思わず振り向くと、深々と頭を下げている綾が目に入った。
――良い娘だなあ
 18歳位の小娘にどきどきしている自分に驚き、思わず苦笑いがこぼれてしまった。

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