Netに舞う女
羽佐間 修:作

■ 第1章 投稿小説「ちなみ 陵辱」5

― 香 ―

 綾はキャンパスに着くと、直ぐにパンストを脱ぐためにトイレに向かった。

「綾。 今日は暖かいからそのタイツ、暑いんじゃないの?!」と校門で出会った仲良しの麻生 香奈に言われた。
「うん。 脱いでくるね」
 綾も家を出るときから学校に着いたら季節外れのタイツを脱ぐつもりでいた。

 麻生 香奈とはオリエンテーションの時に、隣に座ったきっかけで仲良くなり、今ではキャンパス内では一緒に過ごすことが多い。
 付属高校から進学してきたお嬢様育ちの香奈は、綾たちの中で当たり前のようにリーダー然と振舞い、またその仕草が自然で嫌な感じを与えず、根っから上に立つ人間のオーラと言うべき雰囲気を持っている。

 季節外れのタイツを穿いたのは、ちなみの受けた命令を実行し、ショーツを穿かずに出掛けたからだ。
 最初は肌色のパンストを穿いてみたのだが、鏡に映る下半身は綾の薄い陰毛が透けて見えていた。
 短くしたスカートが思いのほか恥ずかしく、油断して屈むとお尻の下端が見えてしまいそうだった。
 もしもの事があっても大丈夫なように、厚いタイツを穿いて出掛けたのだった。 

 タイツを下ろすと、マチ部分には白い分泌液がはっきりと付いていた。
――やだ… 濡れてる…
 そろっと指を触れてみると、驚くほど蜜が滴っている。
――うそっ! こんなに…
 花弁をティッシュで丹念にぬぐい、用意していた木綿のショーツを穿いて教室に向かった。

   ◆

 香が、勤め先の図書館から戻ると、運営している「投稿エロ小説サイト-香の部屋-」の主催者:亜久里 香充てにメールが届いていた。
 感想や激励、クレームなどは設置しているBBSに書かれるので、メールで送られてくるほとんどは投稿小説の原稿なのだが、今日のものは少し趣が違っていた。

亜久里 香 様

東京在住のTODOと申します。
貴女の小説をいつも楽しませて頂いております。
今連載されています「ちなみ 陵辱」についてお尋ねしたいことがありましてメールをさせて頂きました。
この物語は、貴女の想像なのでしょうか?
それとも現実に起こっていること、それとも貴女が命じたりされている事なのでしょうか?
実は、先日私の住まい近くの駅(西武池袋線秋津駅)で白いミニスカートの女の子が赤い傘を持って駅に立っていたんですよ。
次の日も小説どおり、更に短いスカートを穿いて現れましてね
足が細くて綺麗で、とてもチャーミングな女の子です。
そしてこのちなみちゃんと思しき女の子のアルバイト先がケーキ屋さんの喫茶ルームなんですよ
偶然でしょって言われればそれまでなんですがね。
物語の環境があまりに私の生活圏と似ているもので物語りにいつも以上に没頭しています。
ちなみちゃんはどんな風に穢されていくんでしょうね。
サブキャラクターもまだまだ登場するんでしょう?!
ワクワクします!!
これからも素敵な作品を期待しています。
頑張ってください。

「ふ〜ん。 そうなんだ」
 『Blogで露出命令される女子大生の遠隔調教』をコンセプトで書いている新作だが、主人公ちなみの生活環境を、香の身近な立京大に求め、ちなみもこの近所に住んでいることにした。
――私の小説を真似るように実行している子がいるっていうの?
 驚いたのは、TODOが言うちなみを気どっている女の子がアルバイトしているのが、ケーキ屋だということだった。
 確かに設定の中でちなみがアルバイトをしている喫茶店を、香のお気に入りのケーキ屋ロートンの喫茶ルームを思い浮かべて書いていたのだ。
「明日、久しぶりに行ってみようかな?! ちなみちゃんを気どってる女の子も見てみたいし」

   ◆

――この子?!
 メイド服っぽい制服がよく似合う、とても可愛い女の子がいた。 
 香は、お気に入りのいちじくのタルトに舌鼓を打ちながら彼女の動きを目で追った。
 きびきびとした立ち居振る舞いは見ていて気持ちがいい。
 クリクリ動く瞳が愛らしく、客に向ける笑顔も芯からものなのだろう、どの客も女の子の応対に気持ちよさそうに笑みを浮かべていた。

 香もつい話し掛けたくなって紅茶のお代わりを彼女にオーダーした。

 ティーポットを置く彼女の胸元の名札には”本城”と書いてあった。

「貴女、アルバイトなの?」
「はい。 この春からお世話になっています」
「学生さん?」
「はい。 立京大の1年生です」
「そう。 本城さんって仰るのね」
「はい。 本城 綾といいます」
「そう。 可愛いお名前ね。 貴女、動作がキビキビしていてとても気持ち良いわ」
「あはっ。 ありがとうございます」
「毎日入ってるの?」
「はい。 定休日の水曜日以外は授業が終わってから使ってもらっています」
「そう。 じゃ夕方ならいつ来ても貴女に逢えるわね。 貴女にお給仕して貰うと凄く気持ちが良いもの」
「うわっ 嬉しい! そんな風に言ってくださるととても嬉しいです。 ありがとうございます。 どうぞごゆっくり」
「ええ。、ありがとう」
 ぴょこんとお辞儀をして綾は、離れていった。

――まさかこの子が、、、 今時の若い子にしたらとても珍しく礼儀正しくてしっかりしてるし、、、
 しかし女の性は外からは判らない。 そう、、、香自身がそうであるように…

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