Netに舞う女
羽佐間 修:作

■ 第1章 投稿小説「ちなみ 陵辱」9

― 早 川 ―

 藤堂 真介は息も絶え絶えで駅に辿り着いた。
 写真BOXから少し離れた所で膝に手をつき、息が整うのを待った。
――俺の身体も鈍ったもんだ・・・
 かつては、サッカー部の花形選手として名を馳せた時代もあったのだが、悲鳴を上げる己の肉体にガックリしていた。
 肩で息をする真介の横を訝しげな視線を向けながら幾人かの通勤客が通り過ぎていった。

 真介は、噴出す汗を拭いながら、ゆっくりと写真BOXに近づく。
――あった!
 何気ない風を装いプリント排出口に目をやるとまだ写真は残っていた。
――ん? どういう事だ… もう30分経つというのに… 回収しにこないのか? 唯の小説だったのか?

 真介はもう暫く様子を伺うことにし、コンビニで週刊誌を手に写真BOXを見張った。
 暫くすると、1台の車が駅のロータリーに留まり、運転席から出てきた男が写真BOXに近づいてきた。
 男は明らかにそこにあるのを知っているように写真を拾い上げ、小走りに車に戻って行く。
 真介は、あわててコンビニを飛び出し、走り去る車を目で追った。

「シルバーのクラウン 2.5ロイヤルサルーン 多摩3×9さ1○3△ 」
 読み上げながら頭に記憶を刻む。
 裏社会のルポを何本かこなすうちに張り込みや尾行を幾度も経験していたからか、咄嗟にナンバープレートを確認する事が出来た。
「探偵屋の石野に頼むか、、、」
 持ち主の氏名、住所くらいなら陸事で調べることも出来るが、勤務先や背後関係まで調べるのは少し面倒な事だ。
 石野は、対象人物の素行調査はもちろん、盗聴など非合法な情報収集にも長けているし、何より仕事が迅速で確実なので真介は重宝して使っていた。

――しかしあの男が小説の中に出てくるMr.Mか? ちょっとイメージが違うな、、、 それとも奴が亜久里 香なのか?

「まっ、回収された写真を見て”香”の小説がどう更新されるか楽しみだな」

   ◆

「はぁ、はぁ、はぁ… 」
 写真BOXから急ぎ足で部屋まで戻ってきた。
 ドアを閉めて綾は漸く落ち着いた。

――私、どうしちゃったの…
 今しがた、自分のとってしまった破廉恥な行為が信じられなかった。
 フラッシュが光った後、椅子の上に立ちつくし、鏡に映る小さなショーツだけの自分の下半身を見ると、気持ちが昂ぶり思わずショーツの上から淫核をなぞり、オ○ニーを始めてしまったのだ。
 バランスを崩し、椅子から落ちそうになった時、自分のしている事にはっと気付き、慌てて身繕いをしてBOXを飛び出した。

――どうしてあんなに興奮しちゃったんだろう… こんなに濡らしてしまって…
 熱いシャワーを浴びながら、泡にまみれた秘裂に指が這うと驚くような快感が奔る。
 証明写真BOXでの出来事が鮮明に蘇った。
 フラッシュが光った瞬間、キュンと胸を貫いた衝撃は、思い出しただけでまた身体の奥を熱くさせる。
――もう、我慢できない…

 乳首を指の間で挟み乳房をやわやわと揉みあげると、甘い快感が込み上げてきた。
――朝からオ○ニーしちゃうなんて…

 シャワーの飛沫を浴び、自分の恥かしい写真を誰かが見て驚いている姿をながら綾は自慰に耽った。

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