Netに舞う女
羽佐間 修:作

■ 第1章 投稿小説「ちなみ 陵辱」12

 遠目からも派手な雰囲気の女が、カツ、コツ、ヒールの音が響いているだろうと思わせる歩き方で駅に近付いてきた。
――来た! きっとあれだ!
 ウェーブが効いたブラウンの長い髪の毛をなびかせ、黒いロングコートを着て、黒いサングラスの女がすっと写真BOXの中に消えた。
――商売女か? 主婦って書いてあったが…

 真介は、眠気の覚めぬ目を擦りながらコンビニから周りの様子を伺う。
――香ちゃんは?
 赤いジョギングスーツの香を探したが、見当たらない。
――今日は、早川が回収に来るだけなのか?

「ん?! やたらと撮ってるな、あの女…」
 BOXの中で何度もフラッシュが光るのだ。
――香の文章に煽られて、ちなみに負けまいとたくさん撮ってるんだなぁ。 あはは。  奥さん、ちゃんと顔を隠して写さないと家庭が破滅しちゃうよ

 15分は中に篭っていただろうか、ようやく黒いコートの女が出てきた。
 少しよろけながら来た方向へと女は歩いていく。
 真介は、コンビニを飛び出し、早川の車がいない事を確認して、BOXへと走った。

「あった!」
 写真は、6枚もポケットに溜まっていた。
――すげー!頑張ったな、奥さん
 着ていたコートの下は素っ裸だったのだろうか、写真の中には衣服の欠片も映りこんでいなかった。
 豊満な乳房を両手で揉みしだくカット、少し濃い目の恥毛が大写しになったカット、開脚して陰部を指で開いたカット、バックからアナルまで晒したカット、指がオマ○コに根元まで埋まったカットなど恥ずかしい箇所を余す所なく曝け出していた。
「?! 何だ、これ…」 
 最後の1枚を見て少し驚いた。
片足を鏡に掛け、大股を開いて淫部をモロ出しにしているのだが、中心部から光る筋状のものが連なっていた。
――まさか、小便か?
 BOXの中を見ると床は濡れていて、BOXの外に流れ出していた。
 真介は最後の1枚だけをポケットに入れ、後は取り出し口に戻して、女の後を追った。

――どこの奥様なんでしょうねぇ
 どこの誰だか判ってどうするよ?と自問しながら、ちょっとした謎解き気分でウキウキしながら女の後を尾行けた。
 今日の女”麗香”は、香りと違い走らなかったので余裕を持って後をつけた。

   ◆

「えっ… オイオイ… うそだろ…」
 女の後を付いて行くと見覚えのある一角に来た。
 昨日の朝、真介が息せき切って走った地帯だ。
 女は、マンションに吸い込まれていった。
「秋津ロイヤルマンションって…」
 女が乗ったエレベータは、5階で止まった。

「あ〜〜はっはっはっは! くくくっくっ 何てこった! あの女、香だったのか!! それで”麗香”か?! あ〜〜はっはっ」
 ポケットから写真を取り出し、片足を大きく掲げ大股を開いて小便をする同じポーズの6枚の写真を見詰め可笑しくて仕方がなかった。
――何の証明写真だよ?!香ちゃん。 くっくっ

 面白い出来事だったが、真介には訳が分からなかった。
――香は誰に命令されたのか… 彼女が書いているんだよな?! それとも早川が亜久里 香なのか?…

 駅までとって返した真介は、ちょうど早川のクラウンが走り去るところを目撃した。
 BOXを見てみると、写真はなくなっている。
――今夜の更新もまた見ものだな ふふっ

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