Netに舞う女
羽佐間 修:作

■ 第1章 投稿小説「ちなみ 陵辱」17

- 調査報告 -

 綾は、児童文学研究会の3度目の昼食会に参加していた。
 麻生香奈に誘われて先週初めて参加したのだが、ゼミ教室で開かれる食事会は綾にとってとても楽しい時間になりつつある。

 綾は京都の山奥の田舎者で、おっとりしたタイプなのを自覚していたので、様々なサークルから勧誘を受けていたが初めての一人暮らしのリズムに慣れるまではサークル活動の事は考えないようにしていた。
 それは大都会・東京に対する気後れも少なからずあったからかも知れない。
 こんな感覚は、今も昔も東京近郊の人達には理解できない事の一つだろう。
 綾の育った京都の片田舎の人間にとって東京は未だに「花のお江戸」の感が拭えない。
 綾にしても、東京のイメージは「芸能人が住んでいる華やかだけど怖い街」の域を出ていなかったのだ。
 GWも過ぎ、授業にも、アルバイトにも、日々の暮らしにも慣れてきて綾の心にも少し余裕が生まれてきていたところに香奈に誘われたのだった。
 しかもそのサークルが「児童文学研究会」だったのは偶然とはいえ綾は縁を感じた。
 綾は幼い頃から絵本が大好きで、高校1年生までは絵本作家になる!と本気でそう思っていたほどだ。
 一見クールでお嬢様然とした時として我侭な振る舞いを見せる香奈が、一緒に入部しようと誘ってきた時、絵本の事を子供のように嬉しそうに語る意外な一面を見せた事で、どことなく香奈の前では構えてしまっていた気持ちが解れ、本当の友達になれそうな気がしてその足で一緒に入部の手続きに赴いたのは先週のことだった。
 そして何よりも綾が気に入っているのは他のサークルと違い、月曜日と木曜日のお昼休みに、開放されたゼミ教室でご飯を食べて、おしゃべりをするだけで拘束される活動がほとんどなく先輩・後輩の関係もゆるゆるなサークルだった。

 部員は男女ほぼ半数ずつの20名程で、イラストを描く人、児童文学を書く人、詩を書く人など様々な才能を持った人が集まり個性的な面白い先輩が多くとても居心地がいい。
 年数回発行される部誌に向けて、互いの批評やアイデアをワイワイと語る楽しい集まりだ。

 れと香奈に加えてもう一人仲の良い友達がサークルで出来たのが綾には嬉しかった。
 学部は違うが同じ1年生でイラストが得意だという自宅通学の杉村さえだ。
 化粧っけがなく綾がイメージする東京育ちの女の子とはまるで違って落ち着いた感じの控えめな女の子だった。
 ただ後日知ったことだが、華奢な身体に不釣合いなほどの大きなバストで、さえは物凄く気にして目立たないような服の着こなしをしていた。
 今日も香奈と3人でお茶を飲みながら、卒業するまでに3人で絶対絵本を1冊、ものにしましょうね!と大いに盛り上がっている。

 綾は、すべての時間を自分だけの為に使える喜びに改めて大学生になったと実感していた。

   ◆

 今から石野が報告に来ると電話があった。
 散らかったマンションで話すのも気が滅入るので外の喫茶店にしようと言うと、見せたい物があるので是非マンションでと石野が言った。
 男を迎えるために部屋の片付けをする間抜けさに真介は閉口するが、せめてもゆっくり座れるスペースくらいは確保しようと、空き缶や雑誌を整理した。

 体裁が付いたところでビールを1本開け、香のサイトをチェックする。
――おやおや、香はどうしようか迷ってるのかな?
 これで3日間、小説の更新が滞っていた。

(ピン・ポン)

――ずいぶん早いな
 ドアを開けるとニヤニヤ意味ありげな笑みを浮かべる石野が立っていた。
「まあ、むさくるしい部屋だが入れよ。 で、わざわざ会って報告って何だよ?」
「お会いするのはお久しぶりですね。 藤堂さん」
「そういやそうだな。電話やメールがほとんどだったもんな」
「ええ」

「石ちゃんも飲むか?」
「いえ、結構です。 それよりもパソコン借りていいですか?」

 石野はカバンから取り出したディスク・パックを真介のパソコンに接続した。

 石野の指が軽やかなタッチでキーボートを叩く。
「藤堂さん。 これを見てください」
 画面には女の裸体らしき大量の画像のサムネイルが並んだ。

 そのうちの一つを石野がクリックし、開いた画像に真介は度肝を抜かれた。
「これは… もしかして…」

 石野の操作で次々と表示される裸体画像は、縄の緊縛、アナルファック、野外露出、蝋燭プレイ、剃毛プレイ、鞭打ちとありとあらゆるSMプレイの画像で局部にも顔にもまったくモザイク処理が施されていなかった。
「石ちゃん、これは…」
「そうです! これ、すべて菊地香です」
「うっ、本当かよ?!」

――本当に香なのか…
 石野からマウスを奪い、幾つかの写真を開いてみる。

 確かに香だった・・・
 見る見る真介の一物は自分でも驚くほどガチガチにいきり勃った。

 モニターに映るどの写真も市販されるグラビア写真のように取ってつけたようなセクシーポーズではなく、本当に弄られ肉体を捧げている女の汗と涙と淫汁に彩られ喘ぎ声が聞こえてきそうなほどリアルな”その時”を写したカットばかりだ。
 蜜にまみれたオマ○コに肉棒が捻じ込まれている様子も、引き出されているところなのか、アナルが噴火口のように盛り上がってペニスを咥えこんでいるカットも高精細に描写されている。
 写真を繰る間に更に真介の股間を痛いほど勃起させ夢中にさせるものに気付いた。
 それは、モザイクなしの性器が余すところなく写っているからではなく、苦痛に歪む表情も、許しを乞い泣き叫んでいるらしい表情も、男の怒張に貪りついている表情も、そして快楽の縁を彷徨っている表情も、どれもこれもとてつもなく淫らで美しい香の濡れた瞳だった。

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