Netに舞う女
羽佐間 修:作

■ 第1章 投稿小説「ちなみ 陵辱」18

「そして、えーと… この写真、開いてください」
 石野が指差すディスプレイのサムネイルを拡大すると、汗みずくになって女をバックから犯す勝ち誇った表情の男が写っていた。

「これが香を捨てた鈴木陽一助教授です」
「し、しかし、石ちゃん・・・ これどうやって手に入れたんだ?」

「えへへ。 実は昨日のお昼に香ちゃんのマンションにお邪魔しちゃいましてね」
「えっ、おいおい!大丈夫かよ?!」
「くくっ! ばれなきゃOKなんですよ!」
「……」
「PC本体と、CDとかDVDとか目に付くメディアをこのディスクにコピーしてきました。 探せばもっとあるのかもしれませんが、あまり長居はできませんしね。 それとですね、彼女が一日中どんな操作を行っているのかを逐一監視できる特製のスパイウェアをインストールしておきました。」
「おいおい!そんなもの入れたら直ぐにウィルスやスパイウェアのチェックでばれるか、駆除されちまうだろ?!」

「えへへ。 今回インストールしてきたのは警察のサイバーテロ担当の情報通信部が情報収集の為に使っているやつだから大丈夫ですよ。 市販のウィルス・チェッカーではまず検出は無理ですね。」
「へ〜、驚いた。 石ちゃん、よくそんな物持ってるな! 随分力が入ってるじゃない。安いギャラなのに」

「いやぁ〜、あんなにいい身体をした偏差値の高い本格的なマゾ女ですからね〜 興味をそそられますよ!」
「そうか… 本格的か…」
「ええ。 かなりね! 画像を見た時マジで興奮しました! くふふっ」
「確かに…」

「あっ、それと彼女のパソコン画面のキャプチャの置き場所は、ここです」
 フリーのオンラインストレージのURLがエクスプローラに登録された。
「ここを見れば彼女がパソコンで何をやっているのか逐一監視できます」
「ああ、わかった」
 口にはしなかったが、これが機能すると香の秘密が分かるかもしれないと思うと真介はかなりわくわくしていた。
「中身はざっとしか目を通していませんが、画像とメールをフォルダに分けて入れてます。 事情は知りませんが、早川は香のパシリみたいな事をやっているようですね。  藤堂さんが香にこだわるのは、香が…  」 

「よく整理してくれて助かるよ。 石野探偵様! しかしこれ以上は詮索しないでくれ」
真介は石野の話を途中で制した。

 石野は、まだ香のサイトの事を知らないようなので暫くは伏せておきたい気がした。
「ちょっと俺なりにこの情報をじっくり見てみたいからさ。 時期がくれば話すこともあるかもしれないが…」
「わかりました。 しかしこの鈴木って酷い野郎ですよ!」
 目をきらつかせながら石野は、香と鈴木の顛末を説明し始めた。

   ◆

「ふ〜ん… 確かに酷い男だな、この鈴木って先生は… 香が可哀想になってくるよ」
「ええ、ホントに!でも藤堂さんの言われる意味とは少し違う気がしますね」
「って言うと?」
「本当に可哀想なのは、こんな快楽を叩き込まれて変態の身体にされちまってポイ捨てされて以降、男と付き合った形跡がないんですよ。 聞き込みしても規則正しい生活で男の出入りもまったくないようです」 
「鈴木にまだ未練があるのかな?」

「さあ、それはどうでしょう… そうかも知れませんが、それよりもこんな性愛を欲する自分を怖がってるんでしょうね。 付き合う男にそうやって苛めてくれとお願いする訳にもいかんでしょう。 知ってしまった被虐の悦びを自ら封印してるって事ですね。 地獄の苦しみなんじゃないですかね?!」

「そんなものか?…」

「です!あははっ で、藤堂さんはどうするつもりなんですか?」

「どうするって?」
「香です」

「どうするって何も…」
「今回の調査は仕事ですか? それとも個人的な?」
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
「こんな女に出遭う事は滅多にありません! 藤堂さんの個人的な関係なら手出しをしませんが、そうでないなら是非手に入れたいと思いまして。 えへへっ」
「いや… 個人的といえばそうなんだ。 ただちょっとした縁で気になって調べてみたんだが… 今のところどうしたいのか俺にも分からん…」

「そうですか。 じゃ僕はあまり気持ちを入れ込まないで淡々と仕事としてこの女の事を見るようにしますよ。 この女を藤堂さんがどうにかするっていうんだったら作業として面白いのでいくらでもお手伝いしますから」

「ああ 何だか済まんなぁ。 いずれ君の出番もあるかも知れんが、それまでは静観していてくれ。 それと言わずもがなだが、このデータの管理はしっかり頼むよ!」

「はい。それはもう!信用第一の商売ですからね。 ここに持ってきたのが原本でコピーはとっていません。私の出番が来ることを願うばかりです」
「そうか。信用してるよ。石野名探偵様」

 真介は石野が帰ってからずっと香の写真を見ていた。
 1枚1枚じっくりと見ていくと、石野が香が可哀想と言った意味が少し分かったような気がした。
 尽くしてきた男に出世の為に紙屑の様に捨てられた事が可哀想なのは当然だ。
 写真の撮られた日付順に香の姿を見てみると、アブノーマルなセックスに溺れたくないと必死に抵抗している香が見えるのだ…
 やがて抗えば抗うほど、深く深く肉欲に飲み込まれて溺れていく香の様は、哀しいほどに肉の悦びに浸っているのが判る。
 苦痛なのか、快楽なのか、顔を歪め涙が溢れる香の表情は、凄惨なほど淫らで美しかった。

――こんな快感を身体に刻み込まれてしまったのに、自分に封印してきたんだな… 香…

 石野が持ってきたデータを見てもうひとつ判ったことがあった。
 菊池 香が、亜久里 香であることが確認できた事だ。
 メールのやりとりを見てみると、早川は石野が言ったとおり、香がこの小説でドキドキするために仕立てたMr.Mだった。
 そして”麗香”は香が恥ずかしい事を命じる香自身だったのだ。

――立京大学 鈴木 陽一助教授 か… 立京大学っていえば綾の通ってる学校だったな…

 鈴木 陽一に対して無性に腹立たしく感じる。
 そして何よりこんな性を押し殺している香と、潜めている綾… 苛められる事で快感を感じる女達の事が無性に愛しく、そして陵辱の限りを尽くし自分の手で虐めてみたいと真介は思った。

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