人身御供
非現実:作

■ 処女巫女2

「桔梗とやら、其の方はまだ早い……そうですよね総布様?」
「…… ……ぅ、うむっ、其の方はまだ早い」
「ど、どういった御了見でしょうか?」
「高貴なる方が神に仕えるがこそ、我等が神の恩恵を受けるであろう」
「そうじゃ、その通りじゃ!」
「……わ、た…しでは、不服かと?」
「我等が神は寛大じゃ、まずは祠の前にて祈りを捧げるがよい」
「そうなると?」
「神の恩恵を受けるであろう、その時こそがお主の役目ぞ」
「…… …… ……」
「桔梗ぉ〜〜心配しないで、この方々がきっと栄弦様を救ってくれるから」
「……姫様」

(どこまでお人好しやら……まぁ、都合は良いが)
顔に出さないのに、殊更苦労する。

「では参ろうか、奥方殿〜ぉ」
「……は……ぃ」
(御党首っ、欲に浮かれ過ぎですぞ)

苦笑。
まるで子供そのもの。
(無理も無いか、念願の琴乃姫を手に入れたのだから……な)
手を焼かせる、だが我が党首の機転などこんな物であろう。
……結局、ワシが手を焼くのだ。
これが長年の役割。

「桔梗よ、そなたにはコレをつかわす、祠の前にて祈るがよい」
「神酒……ですか?」
「左様、じゃがここの神は、やり方が特殊でな」
「?」
「まずは毎朝、昼と夜にと一口飲む、そして平伏したまま願いを述べる。
のぅ…… ……どうじゃ、簡単であろう?。」
「は…ぃ」

全てはデタラメである。

「では、精一杯励めよ?」
「…は……い」

桔梗とやらの言葉を遮るように、総布様が耳元で囁いた。

「あれで良いのか?」
「……ははっ」
「宴会の席で大量に飲んでも酔わなかった者ぞ?」
「えぇ……はい……ご安心下さいませ総布様。
あれには……眠り薬を仕込んで御座いまする。」
「くっくっく…はぁっはぁっはっぁ、見事じゃ風見ぃ!!」
「ありがとうございまする」

我等の動向を不思議そうに眺める、美姫琴乃と侍女桔梗であった。

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