The Report from a Fallen Angel
ぽっけ:作

■ 10

――――
義三郎様へ

お元気ですか?
私は今、安藤さんの屋敷で暮らしています。
安藤さんの屋敷では簡単な家事の手伝いをしています。
サブさんに会えないのが少し寂しいですけど頑張っています。

サブさんも頑張っていますか?

食堂の方はどうですか?
私が居なくなって人手が足りなくて困っていませんか?
そのことを思うと凄く心苦しいのです。
――――

「絵美子ぉ……客なんて……もう、いねぇんだぁ……」

――――
安藤さんの屋敷では凄く豪華な食事が出ます。
少しだけ両親と暮らしていたときのことを思い出します。
けれど、そんな見た目が綺麗な食事よりも
サブさんと一緒に小さなテーブルを囲んで食べた
定食のお残りの方がよっぽど美味しいです。
サブさんの心の篭った料理……また、いつか食べられますよね?

   絵美子
――――

文面はそこで終わっていた。
手紙を持つ手が震えた。
そのまま手を離さなければ破いてしまいそうだった。
その日は一晩中、泣き通した。

次の日は一日中、手紙の返事を書いていた。
こんな汚い字で読めるだろうか?
完成しては、そんな不安に苛まれ、結局8回書き直した。
辛くはなかった。
手紙を書くことこそが、散り散りになった自分と絵美子を繋ぐ唯一の行為だったからだ。

そして、次の金曜日、また彼女からの手紙が届いた。
――――
義三郎様

お手紙有難う御座います。
本当に字が上手くなりましたね。
この様子だと、私の手紙もすらすら読めているんでしょうね。
凄く嬉しく思います。

今回は悲しいお知らせがあります。
本当はこんなことは書きたくありませんでした。
サブさんとの手紙は楽しいものにしたかったからです。
――――

今回の手紙は前回とは少し様子が異なっていた。
彼女の言う、悲しいお知らせとは……一体……

――――
けれど、安藤さんはこの内容を手紙に含まなければ手紙を出すことを許してくれません。
もう何度も書き直しています。
この手紙で安藤さんの許可が貰えるのだとしたら、この手紙は11枚目の手紙になります。
――――

許可? 手紙を出すには安藤の許可がいるのか?
そういえば、あのとき、安藤は全ての手紙を確認すると言っていた。
つまり、この手紙でのやりとりは全て安藤に筒抜けだということだ。
もちろん、いい気分はしなかった。

――――
私、サブさんが好きでした。
一緒に暮らしていて、優しいサブさんのことがどんどん好きになりました。
勿論今でも、好きです……
だけど……ごめんなさい、サブさん。
サブさんの手紙が届いたその日に、私は安藤さんに犯されました。
――――

犯された――――
そのフレーズが頭の中でなんども繰り返された。

――――
こんなこと伝えたくはありません。
でも、言わなければ、唯一のサブさんとお話しする機会が失われてしまいます。
だから、私は書きます。
白状な私をお許しください。

安藤さんは私の部屋に突然上がりこんできて、服を脱げと命令しました。
私は断りましたが、もし脱がなければサブさんの手紙をその場で燃やすと言いました。

私は結局服を脱ぎました。
裸になった私を安藤さんは組み伏せ、私は無理矢理唇を奪われました。
それだけでは終わりませんでした。

そのまま安藤さんのモノが私の中に入ってきました。
その瞬間、私は乙女ではなくなりました。
痛かったです……血も沢山出ました……

私、もう綺麗な女ではありません。
ずっとサブさんに捧げるつもりだった大切なものを好きでも無い人に奪われました。

たった一つ願い事が叶うのなら
サブさんのことをまだ、好きでいたい……
――――


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