The Report from a Fallen Angel
ぽっけ:作

■ 11

手紙に書かれていた内容は、絵美子が無理矢理、安藤に犯されたというものだったのだ。

「絵美子ん中に……絵美子のべっちょに安藤のモンが……」

挿入の場面を想像するだけで胸がはちきれそうだった。
あの美しい絵美子の体に、安藤が覆いかぶさる。
そのまま醜い性器を、絵美子の中に……

「おぉおおおおおおおおっっっ!!!」

手元にあった茶碗を床に叩きつけた。
自分のせいだ……
やはり力づくでも彼女を行かせてはならなかった。

次の日、食堂は休みにした。
朝から絵美子への返事をずっと考えていた。
夕方になっても、筆は一向に進まなかった。
彼女に何て言えばいいのか……一行すら思い浮かばない。

『サブさんのことをまだ、好きでいたい……』

絵美子は自分のことを愛してくれている。
そう言ってくれた。
なら、自分も正直に気持ちを伝えよう。
例え体を安藤に汚されたとしても、例え今は遠く離れていても……
お互いの心が通い合っていれば、いつか、また二人で幸せに暮らせるときが来るかもしれない。

返事はその日のウチに書いた。
毎日、郵便を待ち続けた。
彼女からの返事は決まって金曜日。
にもかかわらず、水曜、木曜とただ店の前で手紙が届くのを待ち続けた。
食堂は常に閉店状態だ。

手紙が届いたのは土曜日だった。

封を乱暴に破いて、中身を確認する。

――――
義三郎様

お返事有難う御座います。
サブさんが私のことを愛してくれている……
そう言ってもらえて私は凄く幸せです。
でも、それ故に私は罪深い女です。
心はあなたの元にあるのに、今、近くに居るのはまったく別の男の人なのです。

サブさんにお願いがあります。
手紙を出すのは今回が最後にしようと思っています。
理由は一つ、これ以上あなたを裏切り続けることが、私にはできないからです。

手紙にはその一週間に起きた出来事をありのまま書かなければなりません。
書きたくないことも書かなければなりません。
そうでなければ、安藤さんによって私の手紙をその場で破り捨てられてしまいます。
ですから、この手紙を続ける限り、私はサブさんに自分が安藤さんにされていることを報告し続けなければなりません
――――

安藤にされていること?
机をダンッと叩きつけた。
そうだ、考えてみれば、この手紙を自分が読んでいることを安藤は知っているはずだ。
安藤は自分が絵美子が好きなことを知っていて、敢えて、絵美子にいやらしいこを強要し、それを絵美子に報告させることで、自分がうろたえる様を想像して楽しんでいるのだ。

「悪魔がっ!」

手紙には二枚目がある。
一枚目にはまだ余裕があるが、ここで頁を改めたのは、あるいは絵美子なりの思いやりなのかもしれない。
だったら、俺はこれ以上読まない方がいいのかもしれない。
読めば、今まで以上に苦しむことになるかもしれない。

だが、ここまで来ては、もう止めることはできなかった。

――――
今回もサブさんの手紙を見せることを条件に性行為を強要されました。
まずは接吻をさせられました。
私は胸を安藤さんに揉まれながら、何度も何度も接吻をさせられました。
唇が真っ赤に腫れ上がるほど、何時間も安藤さんに吸い付かれました。
それが終わると、安藤さんは裸になって、体中に接吻をするよう命令しました。
体中に私の唾液が行き渡るまで、接吻を続けました。
体臭の酷い部分では、何度も吐き気を催しました。
でも、安藤さんは許してくれませんでした。
脇や足の指の間まで丁寧に舐めあげました。
最後は……安藤さんの性器にもキスをしました。
――――

「うっ、うぐぅ……」

気付いたら、晩飯を床にぶちまけていた。
手紙にはまだ続きがある。

もう、分かっている。
自分はこの手紙を読むべきではないのだ。
読んだ先に待っているのは地獄。
俺はまた一週間、次の手紙がくるまで、安藤が絵美子にした一つ一つの行為を何度も頭の中で想像して、嫉妬と焦燥に焼かれ続けることになる。

それでも、もう止まらない。
他ならぬ絵美子から教えてもらった読字は、文面から行為に耽る二人の姿が浮かび上がってくるかの如く、想像力を働かせながら読めるほどにまで成熟していた。

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