The Report from a Fallen Angel
ぽっけ:作

■ 13

「くそぉっ!」

助けてやらねば……彼女を今すぐに助けてやらねば!!

勢い良く家の外に飛び出したものの、そこで気持ちが萎えてしまう。
今の自分に何ができるというのだ……
住所ならいつも手紙に書いているから知っている。
だが、そこへどうやって行くのか、そこまで、どのくらいの金と時間がかかるのかは自分には分からない。
例え、運良く辿り付いたとしても、そこはあの安藤の屋敷だ。
安藤に会うどころか、若いヤクザ連中に袋叩きにされて終わり……
絵美子に会わせて貰えるはずなどない……

それに、今、家を離れたら、彼女から届く手紙はどうなる?
結局、俺にできることと言ったら、彼女からの手紙を待つことだけなのだ……

次の週も手紙が届いた……

――――
義三郎様

サブさんはこの手紙を読んで何を思っているのでしょうか?
私が安藤さんに犯される様を見て、憐れに思っているのでしょうか?
それとも、手紙の前で泣いてくれているのでしょうか?

私は少し、この環境に慣れてきたのかもしれません。
以前ほど、辛いと思うようなことはなくなったんです。

初めは安藤さんを恨んでいましたが、今はそうでもありません。
言うことさえ聞いていれば、私のことを大切にしてくれます。

サブさんとは違った形で、彼も私のことを想ってくれているのだと思います。

だから、もし、私のことを心配しているのなら安心してください。
私は元気ですから……
――――

今回の手紙はこれまでとは少し違っていた。
絵美子の中に芽生えた微妙な気持ちの変化……
今までの悲痛な叫びとは異なる、安藤との生活に何らかの活路を見出したのだろうか。

だが、そんな彼女の言葉を見て、逆に不安になる自分が居た。
そう……彼女にとって自分が必要のない人間になったのではないか、そう思えてしまうのだ。
事実、手紙の後半では、絵美子にあれだけの仕打ちをしてきた、安藤のことを肯定するような発言までしている。
自分を不安にさせないように気遣っているのか。
あるいは、絵美子自身がそう思い込むことで無理矢理、今の状況を納得しようとしているのか。

だが、これがもし彼女の本心だとしたら……

――――
今週は少し特別な体験をしました。
サブさんは絶頂っていう感覚を味わったことがありますか?
体が熱くなって、興奮が抑えきれなくて、弾けるあの瞬間です……
私は安藤さんに初めて、その感覚を教えてもらいました。

最初は何が起こったのか分からなかったんです。
少しづつ、安藤さんとの性行為に嫌悪を感じなくなってきたことは気付いていました。
なんだか、だんだん力が抜けていって、安藤さんと接している部分が熱くなるのを感じました。

鼓動が早くなって、呼吸も乱れてきて、いつの間にか体中が汗まみれになっていました。
そして、安藤さんがグッと私の体を持ち上げて、私に接吻したとき、私はあの感覚を味わったんです。
目の前が真っ白になりました。
体が何度かに分かれて震えました。
安藤さんもそんな私の反応に気付いたようで、それが性行為の絶頂だと教えてくれました。

あれ以来、私は安藤さんと体を重ねる度に絶頂を感じるようになりました。
多いときは一日に5、6回はあの感覚を味わいます。
あの蕩けるような甘い感覚が忘れられません。
安藤さんが精液を吐き出す瞬間の気持ちが少し分かるようになりました。
そして不思議なことに、あれだけ嫌だった、あの白濁液もあまり嫌ではなくなりました。

サブさん、私は思います。
どんな場所にも幸せはあるのかもしれません。
サブさんと一緒に暮らした四年間がそうだったように……
この場所にも違った幸せがあるような……そんな気がしています……
――――

そして、その次の週も……

――――
義三郎様

私は淫乱な女なのかもしれません。
私のように感じやすく、卑猥なことを好む女は淫乱というのだと安藤さんに教えられました。
サブさんは私が淫乱な女だったことを知ってショックですか?
もしかして、嫌いになってしまいましたか?

安藤さんは淫乱な私を好きだと言ってくれます。
一生、愛してくれると言ってくれます。
そして、もっともっと淫乱な女になれと言ってくれます。

私は安藤さんにもっと色々なことを教えてもらいたいと思います。
多分そうすることで、私は彼の望むように今以上に淫乱になっていくのだと思います。
――――

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