真梨子
羽佐間 修:作

■ 第6章 従属14

 小松原はトイレから戻る時、カウンターの隅で見つけたドール・ユリに釘付けになってしまった。
 フィギアをじっくり見た後、小松原がカウンターに居た雅のところへ歩み寄ってきた。

「ママさん、カウンターの端に置いてあるフィギア… あれは何なんですか?」
「はい。、あれは当店のオリジナルフィギアでドール・ユリです。 少し前までよくお越しになっていたお客様の女性をモデルにして人形作家さんに特注してたものが先日届いたところですのよ」
「へえ! そのお客さんって今はもう来ないんですか?」
「さあ、それはどうでしょう。 先生を疑うとかではなくて何かとお客様同士のトラブルを避けるためにお客様の情報は一切お答えしていませんの。 悪く思わないでくださいね。  先生、もしかしてお知り合いに似た方でも?」
「い、いや。そういうわけじゃないんだが… とても綺麗な女性だなあと…」
「えぇ、とても綺麗な方ですよ」
「そうですか。 あのぉ… このフィギアの顔って本人と似ているのかね?」
「さぁ、それも何とも申し上げられませんわ。 まぁ、この業界の最高の職人さんが造られたフィギアだとだけ申し上げておきます。 」
「そうですか。 あれは売り物じゃないのかね?」
「どうでしょう?! あれは手作りの特注品ですからお造りいただけるか先生に聞いてみませんとなんとも…。 でももし作って頂けるとしてもかなり高額になりますよ。 1/6のミニチュアモデルなら、もう直ぐ入荷しますけど、会員様限定販売ですの。 サンプルが1体だけありますけどご覧になりますか?」
「おお。 ぜひ」
 雅はカウンターの下からドール・ユリのミニチュアを取り出した。
「おお! よく出来ている! 触ってもいいですか?」
「ええ、どうぞ」

 抱き上げてみるとその質感は小さな赤ん坊を抱いているような感覚だ。
 手に取り間近で見れば見るほど真梨子に似ている気がする。
――し、しかし良く似ているというかそっくりだ! 本当にモデルは泉真梨子なのではないだろうか? まさかそんなことはあるはずがない…
ミニチュアのフィギアにもカウンターにあった物と同じように局部が詳細に細工されていた。
――真梨子君の局部もこのような…

 真梨子が小松原の元を巣立って5年。 
 2年前に卒業生の結婚式で見かけた時も小松原は胸がざわつく感覚を覚えた。
 今年になって歳の離れた男と結婚した事を知り、何か嫉妬めいた気持ちがしたものだ。
 ほんの10日前、東京に居る元ゼミ生達と食事をした時、真梨子が来ることを知り楽しみにして出席した。
 久しぶりに逢った真梨子は匂い立つほどの高貴な色気を感じさせ、小松原の中で真梨子は可愛がっていた教え子から一度は陵辱してみたい対象になっていた。
――確かめたい!このドール・ユリのモデルになった女性を… もし真梨子君だったら… 

「ママさん。 会員になるにはどうすればいいのかな?」
「既存の会員様のご推薦がある事が前提ですけど、入会金は300万円頂戴しております。 先生、よろしければ是非ご入会くださいませ」
「そうですか… 300万円かぁ… 」
―真梨子君に逢ってみるか・・・

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