真梨子
羽佐間 修:作
■ 第6章 従属21
−全裸オフィス− 8月1日(月)
「姉さん。 お代わりできる?」
「ええ。 朝から凄い食欲ね、俊ちゃん。 たくさん召し上がれ」
梶から何の連絡もないまま、週末は弟・俊一と二人きりで過ごした。
真梨子も行った事が無かった表参道ヒルズで買い物や食事をしたり、昨日の日曜日には、はとバスツアーで皇居や靖国神社、東京タワーなど普段行く機会の無い東京の名所巡りをしてそれは楽しいく時間だった。
本当は神戸に戻って浩二に抱きしめられたかった。
しかし一週間前、札幌で我を忘れてしまう快楽の果てに啓介に屈して従属を誓い、自ら願って受けた精の膣奥で感じた熱さは未だに身体が覚えている。
妊娠は避けられたとはいえ愛する夫・浩二に対する裏切りはとうに一線を超えているのは真梨子には判りすぎるほどわかっていた。
この事実は、真梨子に重く圧し掛かったままで、浩二に逢うことを臆させていた。
しかも先週末には真梨子だと知られていない事が救いではあったが、恩師の小松原に尻の鞭打ちで気を失うほどの快感を覚え逝かされてしまった。
神戸に帰るには、梶の了解を得なければならない事もあり、東京に来ている俊一の世話を 理由に帰れないと浩二には連絡をしていた。
それでも何とかこのまま9月迄の東京赴任を終えて会社を退職し、専業主婦となって浩二との新たな生活を送る事が真梨子の唯一の支えだった。
「姉さん!ますます料理の腕が上がったよね! 浩二義兄さんは幸せだよなぁ」
「なぁ〜に?! また何か買わそうとしてるの、俊ちゃん」
「いや、素直な感想だよ。 夕べの舌を噛みそうな肉料理もめっちゃくちゃ美味かったけど、この味噌汁や卵焼き、ホントに美味いよ!それにこんなに綺麗で優しくて、色っぽい奥さんだもん、浩二義兄さんは本当に幸せな男だよ」
「朝から何いってんの。 早く食べちゃいなさい」
「はい、はい。 何か喋り方が母さんに似てきたよ、姉さん」
「あらっ、そう?! うふふっ」
俊一と向かい合って二人きりで朝ご飯を食べるなんて初めての事で、真梨子は何やら面映ゆい感じがしていた。
大好きな弟が自分が作った料理を美味しそうに食べる姿を見ていると、ドロドロに身体が融けてしまうような週末の快楽地獄の記憶も、なんとなく薄れていくような気がする。
「じゃ俊ちゃん。 私、会社に行くけどお出かけするならちゃんと火の元と戸締り、お願いね」
「はい!お姉さまー。 かしこまりました!」
「もう〜 ホントにちゃんとしてね、俊ちゃん」
「ああ、分かってるよ。いってらっしゃい」
◆
お昼前に、横浜のパイロット店舗の調査に出掛けた秋山と丁度入れ違いに、梶がプロジェクトルームにやってきた。
「あっ… お疲れ様です…」
プロジェクトルームは梶と二人きりだ。
席に着いた梶は、受話器を取りどこかへ電話をかけはじめた。
呼び出した相手が電話口に出るのを待つ間に、梶が真梨子を手招きをする。
真梨子は席を立ち、梶のデスクの前に立った。
――今日は何をされるんだろう…
真梨子はいつもにも増して嫌な予感がしていた。
――久美ちゃん… 早く戻ってきて…
菅野久美は昼過ぎには外出先から戻ってくるはずだった。
「スカートを捲って立ってろ!」
「…はい」
オズオズと白いワンピースの裾を持ち上げ、大腿までのストッキングと白いレースのTバックの下半身を梶の目の前に晒した。
電話口の相手と話し始めた梶の視線は、深く切れ込んだショーツの先端のティアドロップを思わせる魅惑的な恥丘の膨らみに向けられている。
――恥ずかしい…
明るいオフィスの中で下着姿を晒す…
それだけで、真梨子の身体の芯は甘い蜜を溢れさせ始めていた。
「真梨子。 お尻の腫れは引いたのか? くっくっくっ」
電話を終えた梶が真梨子に言った。
「…はい」
「そうか。それはよかったな」
「はい…」
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