真梨子
羽佐間 修:作
■ 第7章 淫獄14
俊一は「private」とプレートが貼ってある部屋に招き入れられた。
「あのー、姉は…」
ビニール製の粗末なソファに座り、殺風景な事務室然とした部屋を見回しながら尋ねた。
「俊一君だったわね、、、 言ってもいいのかなぁ… 貴方、今から言う事、見た事は誰にも内緒にできるかしら?」
「は、はい…」
「そう。 じゃ教えてあげるわ」
雅の言い様は何やら妖しく重い雰囲気を感じさせる。
「お姉さんはね、ここのお客様でもあるんだけど、時々手伝って貰うこのお店のスタッフでもあるの」
「スタッフ?? ですか… アルバイトって事ですか?」
「うふっ、いいえ。 そうねぇ、人に言えない欲望を満たすボランティアってところかしら」
「人に言えない欲望、、、 こ、ここはいったい何のお店なんですか?」
秘めた怪しげな笑みを浮かべる雅を見ていると、俊一はその唇が動くと、姉についてとんでもない事を耳にしそうな気がして不安に包まれていた。
「貴方、SMってわかる?」
「はい?! あっ、はい、いや… あの虐めたり、虐められたりする変態みたいなセックスの事ですよね?!」
「おほほほっ。 変態は良かったわ。 俊一君、あなたお姉さんの事、好き?」
「は、はい」
「そう、ほほほっ。 そんなに純粋な眼差しで真っ直ぐに見詰められると、気恥ずかしくて何だか言い辛くなっちゃうわね」
俊一は固唾を飲んで次の言葉を待った。
「俊一君。 ちょっとこっちへいらっしゃい」
雅は立ち上がり、左奥の窓の前に立った。
「あれを見てご覧なさい」
控え室の小窓から雅が指をさす方を見ると、一段高いステージの上で縄で全身を穿たれた女がスポットライトを浴び、皮のレオタードを着た女に鞭打たれているのが見えた。
「ここはね、会員制のSM倶楽部なのよ」
「えっ?! SM倶楽部?! まさか…」
――人に言えない欲望? 姉さんがこの店の? そんなバカな!
「こっちをみてご覧なさい。 俊一君」
雅はステージと反対側を指差した。
そこには、全裸でカウンターに寝そべる女が、スツールに座る男に身体を弄られているのが見えた。
――うわっ! 恥ずかしくないのか… あの女
「あれ、真梨子さんよ」
「う、嘘だあ!! そんなはずが… うそだ…」
俊一は振り向き、雅を睨んで叫んだ。
フロアへ続くドアに向かおうとする俊一を制して雅が続ける。
「うふふっ。 俊一君には俄かに信じられない事かもしれないけど、世の中には恥ずかしい姿を人に見られたり、苛められたりするのが好きなそういう性癖を持った人がたくさんいるのよ。 珍しい事じゃないわ。 聞いたことあるでしょ?」
「ええ… それはありますけど… 姉もそうだと・・・」
「そうよ。 貴方のお姉さんもその中の一人なのよ」
俊一には、信じられなかった。
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