真梨子
羽佐間 修:作

■ 第7章 淫獄15

− 偽りの貞淑 − 8月7日(日)X

 車は、真梨子のマンションの前に止まった。
 真梨子は丸一日、一睡も許されず陵辱の限りを受け快楽の深淵をのた打った。
その淫獄の館から啓介の運転手つきの車に裸のまま乗せられ、日暮れ時の東京の街並みを走ってきた。
 交わす言葉もなく車のウィンドウに頬を預け、無防備な下半身を啓介のなすがままに嬲られている。
 眼に映る外の景色は、真夏のギラギラした陽が姿を隠しかけ空には、紅く焼けた雲が浮かんでいた。

「どれだけ濡らせば気が済むんだ? シートまで垂れてるぞ」
「ご、ごめんなさい、、、」
「恥ずかしい女だな、真梨子。 見られるかもしれないというだけでこんなにも淫らな汁を垂れ流して。 度し難いマゾ女だが、昨夜言ったように貞淑な人妻として旦那に尽くす事を疎かにするな! そして裏切り続けるんだ! いいな!」

「はい、、、」
 啓介に従属を誓い、逃れられない業の因果を含められた昨夜の啓介の言葉が脳裏に蘇った。

          ◆

 真梨子は後ろ手に手錠をかけられ、ベッドの上で身体を横たえていた。 
――ぁぁぁ、、、ケイスケさま、、、
 気を遣り、どれくらい堕ちていたのだろうか、、、覚醒し、ベッドを離れてソファで寛ぐ啓介をぼんやりと眺めていた。 ベッドの汗が少し冷たく感じ、しばらく時間が経っているようだった。
 恥辱の排泄をしながら堕ちてく姿を大勢の前で晒して以降、休むことなく啓介に責め続けられ、何度気を遣ったか数え切れない。
 特にクリ○リスと両乳首のリングに重い錘を付けられ、四つん這いの真梨子のアナルに啓介の剛棒が激しく打ち付けられた時、身体の揺れと共に不規則に動く錘が真梨子を狂わせた。
『殺してぇ!』と泣叫び、襲い掛かる快感で気が狂ってしまうと真梨子は感じた。 気が狂ってもいいからもっと激しく身体を虐めて欲しいと願った。
 つい先ほどまでは麻木あづみを交え、3人で淫らな世界を彷徨っていた。 そしてあらぬ言葉を口走ってしまった。
『わたしにください! わたしのオマ○コに〜!』
――あんな事、言っちゃった… 
 あづみのヴァギナに啓介が精を放とうとしたその時に、思わず口をついてしまった言葉を真梨子は思いだしていた。
 自ら発したその言葉に真梨子自身も狼狽すら覚えた。 あづみのクリトリスを唇でついばみ、その目の前を啓介の剛直が激しく出入りする様に、激しい嫉妬を感じてしまった。
 強要されてもいないのに、その屈服の言葉を発した真梨子に与えられたのは、あづみの蜜壷から溢れる啓介の精子を舐め取り、バイブでのアナルオナニーだった。
 余韻に喘ぐあづみの股間に舌を這わせ、はしたない音をさせながら啓介の精子を啜り取り、自らバイブでアナルを慰め、そして乳首のリングを強く引っ張りあげられながら魔淫に堕ちていったのだった。

――わたし、、、この人から離れられない、、、
 真梨子はバスローブを羽織り、ワインのグラスを口に運んでいる啓介を見て確信した。 好きとか愛しているとかのレベルではない。 離れられないそしてそれは浩二との別れを意味する事も分かっていた。

「ん?! 気付いたか」
 啓介は真梨子と目が合うと、グラスを手にベッドに近付いてきた。
「飲むか?」
 コクリと真梨子は頷いた。
「あっ!」
 口移しに流し込まれた冷えたワインは乾いた喉に心地よかった。
――美味しい…
「美味いか?!」
「はい、、、」
「そうか。喉が渇いていたんだな」
――あっ、、、
 真梨子の胸がキュンと疼いた。
 啓介に労わりの声を掛けられたのは始めてかも知れない。 嬉しくて思わず笑みがこぼれ、心が沸いた。

「あっぅぅ、、、 ケ、ケイスケさま、、、 わ、私をケイスケさまのお側においてください! ケイスケさまの、、、女にしてください、、、」
――ああぁぁぁ 言ってしまった、、、とうとう、、、
 ずっと心の奥底に押し込めていた欲望をついに言葉にしてしまった。

「何故だ?」
――えっ、、、、
 込み上げる衝動に思わず口にしてしまった真梨子の血の叫びに対して、啓介の答えはあまりにも素っ気無いものだった。
――なぜって、、、
 容赦のない厳しい責めを受け続けながらも、楽しそうに真梨子の身体をさいなむ啓介の表情が真梨子にはどこか嬉しく、恥獄を漂うせめてもの慰めだった。
 真梨子の身体に熱中する啓介の身体からほとばしる汗にまみれ、愉悦の境地をのたうちまわったのだ。 精を放つ時の啓介の呻きを真梨子は何度も耳にしたのだ。 
 必死の申し出を受け入れてくれると信じて疑わなかった。 啓介のオンナにして貰えると思っていた。
「何を不思議そうな顔をしてる?! 俺が二つ返事でお前を囲うとでも思っていたか? 男の意のままに何度も身体を抱かせると、男は自分に惚れるとでも思っているのか?」
「い、いいえ、、、」

「お前は旦那を嫌いになったのか?」

「、、、ぁぁぁぁぁ そ、それは、、、」
「それは?」

「も、もうこんなに裏切ってしまって、、、 ケ、ケイスケさまに、、、いつもケイスケさまに、、、だ、抱かれる事を考えてしまうんです、、、」
「ふっ。 答えになっていないな。 旦那を嫌いになったかどうかを聞いているんだ」

「、、、いいえ、、、 嫌いになんか、、、 今でも、、、」
「今でも?! 何だ?」
「今でも、、、、  ぁぁぁ、、、 愛しています、、、 で、でも、、、もう私にはあの人に愛して貰う資格なんて、、、」

「ふっ、だから俺なのか? 戻る場所がなくなったから俺なのか?!」

「い、いえっ! そんな意味では、、、もう私は貴方なしでは生きていけません! どうかお側に置いてください! お願いです!」
「お前は俺の何を知っている?」
「あっ、、、 い、いえ、、、」
 真梨子は未だに啓介の事を何も知らないままだった。 プライベートジェットを持っているくらいだから桁外れのお金持ちなのだろうと想像するが、どんな仕事をしているのか、どこに住んでいるのか、年齢すら知らない。
「お前が知っているのは俺のセックスのやり方だけだ」
「、、、はい」
「真梨子。 お前は俺に愛して欲しいとでも思っているのか?!」
「そっ、それは、、、、あっ、いいえ、、、」
――そうだわ、、、 私、浩二さんを裏切って、ケイスケさまに愛されようとしていた、、、 浩二さんにそうされたように、、、
「わたしは、、、 わたしは、、、」

■つづき

■目次2

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊