真梨子
羽佐間 修:作

■ 第7章 淫獄20

――えっ! 鍵が掛かってる、、、
 バスルームに鍵を掛けているのに出くわしたのは初めてだった。 真梨子が入浴する時に脱いだばかりのショーツの匂いを嗅ぐのは俊一の大きな楽しみの一つになっている。
 今日はすれ違いざまに匂った真梨子の牝臭の元を確かめずにはいられなかった。
 実家にいる時も、真梨子は家人に対して、そんな警戒心を見せるような事は一度もなかった。
――バレタ?!
 少し心配になったが、今の俊一にはたかぶった気持ちを抑える事は出来ない。 真梨子の発する匂いを求めて真梨子の寝室に向かう。
 はたしてベッドの上にはさっき見た薄紫色のまるでネグリジェのような生地のドレスはあった。
――軽い!
 俊一は宝物を扱うようにドレスをそっと手に取り、その柔らかい生地に顔を埋め鼻いっぱいに姉の匂いを吸い込む。
――あぁぁ 姉さん、、、 ねえさん、、、
 少し汗を吸った感じがするドレスからはいつもの香水に混じって微かに姉の体臭を感じる。 瞬く間にジーンズの中で痛い程ベニスがいきり立つ。
 俊一は存分にその香りを楽しみ、そしてドレスを股間に押し付ける。
「ふぅ〜〜、、、」 

 肩紐を摘んでワンピースをかざしてじっと眺め、慎重に元の置いてあった形にドレスをベッドに戻して自室に戻った。

 俊一は一目散にクローゼットの扉を開け、ドール・ユリを引っ張り出してベッドに横たえた。
――くっそー! どうしたらいいんだよ?!
 分身は隆々といきりたったままで、真梨子に対する悶々とした気持ちを俊一は持て余していた。
 
『踏み越えてはいけない一線なのよ!』 雅に言われた言葉が頭に思い浮かぶ。
――そんな事は、わかってるよ!
 しかし瞼に焼きついたドレスをまとった余りにも魅惑的な姉のシルエット、そしてあのなんとも言えない淫靡で妖艶な牝の匂いが俊一に纏わりつく。
 俊一はドール・ユリの乳首を指で転がし、真梨子に瓜二つの人形のバストを鷲掴みにした。
 リアルな乳房の感触にドキリとする。
――この人形で我慢しておけって事か、、、
 過ちを犯さぬようこの昂ぶりを鎮めるには、姉・真梨子にそっくりなこの人形に吐き出すしかないと俊一は思った。
――本当に姉さんは、久美や裕美みたいなマゾ女なのか?!
 覚えたばかりの目くるめく官能の世界の女達に、いつしか真梨子のイメージを重ね合わせ、手渡されていたローションを指にすくいドール・ユリの股間に這わせていた。
――姉さん…
『この人形、アソコの襞のビラビラの具合まで真梨子さんとそっくり同じなのよ』
雅の言葉を反芻しながらローションでぬめるドールユリの秘孔の奥に指を差し込んでいく。

   ◆

「俊ちゃん、おやすみ、、、」

 淫らな入浴タイムの後、俊一との気詰まりな夕食がようやく終わり、自室に戻った。
 他愛のない会話を交わしながらの食事だったが、俊一の目は明らかにいやらしい光を帯び、セックスの対象として身体に視線を這わしていると

真梨子には感じられた。
 気付かないフリをして平静を装い、あくまでもいつもの姉として俊一に相対するのは哀しかった。
――俊ちゃんにまであんな目で見られて、、、 何もかも私が悪いの、、、

「あっ! 浩二さん、、、」
 俊一と食事をしている間に、浩二から携帯に着信があり、メールも届いていた。
――ごめんなさい、浩二さん、、、
 画面には(25秒間着信)と表示されている。 留守電に切り替わるまで浩二が受話器を握り真梨子の応答を待っていてくれた事を知ると、申し訳なくて胸が締め付けられる。 その時間には、啓介の浣腸の余韻に浸り、淫らな自慰に耽っていたのだ。

 届いているメールを開く。

【件名:真梨子、元気かい?】
忙しそうだね。 まだパーティから戻っていないのかな?! 僕も今から証券会社の人たちと打ち合わせを兼ねた会食だから電話には出られないからね。 また明日電話する。身体に気をつけるんだよ。僕の大事な真梨子へ chu!

「ううぅぅぅぅぅ、、、、 こ、浩二さん、、、 ごめんなさいぅぅぅぅぅ、、、」
 ベッドに突っ伏し、泣き崩れた。 変わらぬ愛を注いでくれる浩二の心に触れ次々と涙が溢れ、真梨子は慟哭する。

 嗚咽を洩らしながら小一時間は泣き続けたであろうか、、、
 部屋の外で俊一がトイレのドアをバタンと閉じた音が響いて真梨子は我に返った。
――浩二さんの夢の邪魔は出来ないの、、、 今は浩二さんを騙し続けるしかないんです、、、 バカな真梨子を許して、、、
 小器用に指が動き、文字が携帯の液晶画面を走る。
 高倉のパーティの様子、日々の生活ぶり、浩二への想いを、愛と感謝に満ちた文章で綴り、浩二の携帯に送信した。

 ベッドに潜り込むと再び涙が込み上げてきた。  抜き差しならぬ立場に追い込まれた我が身を呪い、涙が瞳に溢れ頬を濡らす。
 眠ってこの苦しさから逃れられるものならと目を瞑ると、疲れきった身体は休息を欲しがっていたのだろうか、スイッチの切れる機械のような鮮やかさで真梨子は眠りに落ちていった。

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