真梨子
羽佐間 修:作

■ 第8章 牝奴隷1

− 恩師の誘い − 8月8日(月)

 目覚めはとてもすっきりしていた。  一夜開けて昨夜の事は本当にあった出来事なのか訝しく思える程に不思議と爽やかな目覚めだった。
 しかしアナルのひりつく痛みが昨日の出来事が現実に起こった出来事だと真梨子に思い知らせる。

 現実に差し戻されると、とても仕事に行く気分にはとてもなれない。 しかし肉奴隷として弄ばれながら貞淑な妻を演じ続け、変わらぬ日常を過ごし、仕事もしっかりこなすことが啓介の厳命だ。

 ベッドを抜け出し、真梨子はいそいそと身支度を始めた。
 夕べ、帰宅したとき真梨子の身体をねめつける様に這った俊一の目が心を塞ぐ。 俊一と顔を合わせたくなくて、彼が起きだしてくる前に出掛けたかった。
 朝食をテーブルに用意し、玄関に向かいかけた時、背中で俊一の声がした。

「姉さん。 今日は早いねえ。 今夜も遅いのか?」
「えっ、ええ、、、たぶん遅くなると思うわ、、」
「そう。 頑張るんだなあ、姉さん。 程ほどにしとかないと身体壊すぜ」
「ええ、、、ありがとう。 もう直ぐお盆休みでしょ。 キリのいいところまで仕上げておかないとダメだから」
「ふ〜ん。 社会人って大変だなあ」
「そ、そうよ。 俊ちゃんだってもう直ぐよ。 朝食はテーブルの上に置いてあるから。 じゃ、行ってきます」
――俊ちゃん、、、 見ないで、、、
 いつもの腸内洗浄をした後、啓介に命ぜられているアナルプラグを呑み込んだばかりの後姿を弟に見られていると思うだけで、真梨子の心は騒ぎだしていた。
 
   ◆

「真梨子を襲わないようにそんなことで誤魔化そうとしてるのかあ?! くっくっくっ」
 モニターを眺めて横田はほくそ笑む。
 愛奴育成倶楽部・東京サロンで真梨子の部屋を映すたくさんのモニターが並び、真梨子の寝室に侵入する俊一の様子が映し出されていた。
 画面の中の俊一は、ランドリーバッグから引き出した真梨子が就寝する時に着けていたキャミソールとショートパンツに顔を埋め姉の匂いに浸っている。
「真梨子みたいな魔性の天使を姉に持ったのが災難だったなあ」
 キャミソールでは飽き足りないのだろう、真梨子の濃厚な香りを求めてランドリーバッグを漁っている俊一を見て嘲笑を浮かべた。
 やがて俊一はバッグの底にハンカチに隠れるようにあったショーツを見つけ出す。

『ねえさん、、、』
 スピーカーから俊一の切ない叫びが聞こえる。 俊一は姉の股間を覆っていたショーツの匂いを鼻いっぱいに吸い込み、その柔らかな極々小さい布切れで肉棒を包み、満たされない想いを鎮めるかのように自慰を始めた。
「ふふっ。 しゅんちゃん、いつまでそんな事で我慢できるかのかなあ!? くっくっくっ」

   ◆

「、、、真梨子さん、、、 おはようございます、、、」
「おっ、おはよう、、、 久美ちゃん、、、」
 オフィスに出勤すれば会うのは分かっていたことだが、いざ顔をあわせてみると何を話していいのか思いつかない。
 久美も同じ思いなのか、恥ずかしそうに顔を伏せて逃げるように給湯室へと出て行った。
――久美ちゃん、、、 少しやつれてた、、、 あの後ずっと梶部長に、、、
 仲の良い先輩、後輩という以上に信頼しあっていた間柄だった二人が突然、身体を弄ばれる牝犬奴隷として出逢い、レズビアンの関係を結ばされ、真梨子は恥辱の排便の姿まで見られてしまった。
 一昨日までは久美が自分と同じように淫極に堕ち、被虐の快楽に狂っているなんて知る由もない。
 まして二人が調教される過程ですでに肌を重ね、淫らな快楽を交わしていたなんて夢にも思わなかった。

 二人が淫らな世界に堕ちたきっかけは奈保子のエステだ。 久美も身体を触られているうちに奈保子にその性癖を見抜かれたのだろうと真梨子は思っていた。
 きっかけはどうであれ、久美が虐められて悦ぶ性癖を持っているのは肌を通して真梨子にも判った。
 奈保子はエステで出会ったマゾの素養を持った女を、雅に提供する役割を担っていたのだろうと思っている。  しかし不思議と奈保子を恨む気持ちは抱いていない。
  二人にとって不幸だったのは、その性癖を慰撫するために奈保子に連れていかれたhalf moonに二人の上司、梶が客でいた事だ。
 卑劣な梶に秘密を握られズルズルと淫らな世界に引き込まれ、今はケイスケに従属の誓いをした牝犬奴隷に堕とされているのだった。

 給湯室からポットを持って戻ってきた久美が、秋山と真梨子にコーヒーを入れてくれた。
――久美ちゃん、、、
 秋山が目を丸くして久美の後姿に視線を送っていた。 梶に命じられ久美はブラジャーを着けておらず、身体にフィットしたキャミソールのTOPにポッチリ乳首が浮いているのに秋山は気付いたようだ。
――今日からは私達二人で嬲られていくんだわ、、、

 やがて東京支社に出社している梶から恥辱の命令が届けられる事を予感しながら、二人は言葉を交わすことなくそれぞれの仕事を始めた。

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