真梨子
羽佐間 修:作
■ 第8章 牝奴隷9
− 禁断の扉 − 8月10日(水)
駅のホームで憂いを帯びた表情で佇む真梨子は、誰もが振り返るほどに美しい。 男なら誰しもつい構ってやりたいと思わせる儚さが漂っていた。
今朝も昨日に続き、梶の痴漢の獲物になるためにいつもの時間に新御茶ノ水駅にいた。
昨日は、イヤホンを付けさせられ前日の小松原教授に陵辱されたホテルの様子を聞かされながら電車の中で大胆に柔肉を嬲られ、乗客にばれる恐怖と怪しい快感に翻弄された。
そして今日は下着を一切着けずに電車に乗るように命令され、その通りの格好でホームに立つ。
『誰かにばれたら、私達恋人同士です!』って言うんだぞと梶の言葉を思うと今日はもっと恥ずかしい事を強いられるに違いない。以前車内で浣腸されたおぞましい記憶が脳裏をかすめ、梶の乗った電車が到着するのが怖い。
――えっ、翔太君?!、、、 たっ、確かに彼だわ、、、
ホームに翔太の姿を見かけた。 2ヶ月ぶりに見る翔太は悲しげな目をして真梨子をじっと見つめている。
やがて真梨子に向かって翔太が歩き出した。
――ど、どうしたらいいの、、、 また、私を、、、
肩をすくめ身を堅くして真梨子は立ち尽くす。 真後ろに翔太の気配がした。
下着を付けていない無防備な下半身が心許なく恨めしい。
「もう大丈夫だから、、、」
「えっ?!」
「奴はもう来ないから、、、」
振り向くとニコリと微笑む翔太の目には涙が浮かんでいる。
――えっ?! 泣いてるの?!、、、
それだけ言うと翔太は駆け足で立ち去っていった。
――何?どういう事、、、 もう大丈夫?! 奴って?! まさか梶さんの事?、、、 どうして翔太君が?
翔太の言葉の意味が分からないまま定刻通りに電車がホームに滑りこんできた。
大きく肩で息をし、真梨子は指定された車輌に乗り込み、そして梶の姿を探した。
◆
「あららっ、俊一の野郎。 朝からお姉ちゃんを想ってオナニーか! くくっ」
高倉ビューティの秘書室で真梨子の部屋の隠しカメラの映像を監視していた横田は嬌声を上げ、昌也(吉岡専務)に電話をかけた。
「専務。 俊一の奴、真梨子が出掛けたとたんに真梨子の部屋を物色しだしましてね。 クローゼットからセーラー服やら下着を引っ張り出してきて、今ドール・ユリに着せてるところです。 真梨子を抱きたくて仕方がないくせにドールで誤魔化そうとしてますよ。 くっくっくっ」
(そうか。 そろそろ我慢の限界だろうな。 ふっ)
「何で橘さんは、こんなまどろっこしい事するんですか。 近親相姦させたいんなら愛奴倶楽部でご対面させりゃいいじゃないですか。 真梨子も実の弟にケツを掘られたら気が狂わんばかりに悦ぶでしょうに」
(横田。 お前もまだまだだなぁ。 そんなんじゃ詰まらんだろう。 橘は今度は真梨子に自分を裏切らせようとしてるんだ。 この前の大学教授に身体を売らせたのも同じさ」
(はぁ…?!)
「橘に溺れるしか逃げ道がないと決意した真梨子に、橘は自分にだけ尽くし捧げきる事を許さず旦那を裏切り続け、旦那を愛し続け、騙し続けながら橘に尽くせと惨い命令を真梨子にしたんだよ。この前は橘に見られていることを知りながら恩師に尻を打たれて快感に泣き叫ぶ姿をさらしてしった。今度は橘の知らぬところで実の弟に犯され、近親相姦という背徳の交わりを結んでしまうという、真梨子に道徳的にも貞操感的にも二重にも三重にも罪の意識を背負わせようとしてるんだ。 橘や俺達に無理やり弟とやらされたら真梨子の心に言い訳が出来るだろ!? 俺達の知らぬうちに俊一とやっちまうと真梨子は誰にも言えない秘密を持つ。橘にもな」
(はっはあ、なるほど。 橘さんに強要されて弟とやってしまうんじゃなくて、強姦されたにしても橘さんの知らぬところで弟とやってしまう事に意味があるんですね! それで橘さんに対して後ろめたい恥ずかしい秘密を持たせる!)
「そういう事だ。 淫らな自分に対する言い訳が出来ないようにな」
(何だか遊び過ぎた方ってややこしいですねぇ、、、 面倒臭いことをしないと興奮しないんですかね)
「ああ、そうかもな。 そのプロセスが楽しいんだよ。それに橘はかなり真梨子に惚れ込んでいるようだからなあ」
(そのようですね。 あっ、俊一がドールに挑むようですよ! あははっ! ご覧になってます!?)
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