真梨子
羽佐間 修:作

■ 第8章 牝奴隷23

− 帰省 − 8月15日(月)

 実家に戻ってからの真梨子は平穏で心休まる時間を過ごしていた。

 久しぶりに味わう懐かしい母の手料理、嫁いだ後もそのままに残してくれていた自室の心地良い居心地、そして何よりも家族の絶対の愛に包まれて、翻弄される日々へ不安を暫し忘れさせてくれた。
 一緒に帰省した俊一は、地元の友達と遊び歩いているようで実家に居つかず、案じていた両親の前でなぶられるような事はなかった。
 そんな心休まる日々もあっという間に終わりに近づき、明日は東京へ戻らなければならない。
 最終日の今日は出張から戻る浩二を伊丹空港まで迎えに行き、その足で羽佐間家のお墓参りを済ませ、一緒に実家に戻ってきた。 神戸のマンションに戻るつもりだったのだが、両親のたっての願いで浩二が実家に泊まる事になっている。

 俊一も友人宅から戻り、久しぶりに家族全員が揃い浩二を交えて夕食を共にした。
 夕食の後、浩二は真梨子の父・泉 俊夫と、俊一の男三人で酒を酌み交わしている。
 もっぱらの話題は浩二の会社の上場についての事で、最初は年齢差を理由に強行に結婚に反対していた父親が上機嫌でしきりに浩二を褒めそやすのを真梨子は片付けをしながら苦笑しながら聞いていた。
「浩二君。 仕事は順調なようだが子供はどうなんだ? 私たちも歳だし、君も若くないんだから早く孫の顔を見せてくれんかね」
「はあ、、、 頑張りますよ、お義父さん、、、」
「真梨子を一人で東京なんかにやってどうするんだ?! 女に仕事なんか出来るか! 女は仕事なんかせんと家庭を守るのが仕事だ」
「父さん、そんな事ないよ。 仕事振りを見たわけじゃないけど、姉さん結構、頑張ってるぜ」
「そうよ、父さん。 真梨子姉さんが大学卒業の時、学部で一番だったって父さんも自慢してたでしょ。 それにいまどき女性の事をそんな風に言うなんて古過ぎよ」
 酒の肴を運んできた妹・詩織が、俊一に加勢する。
 詩織は真梨子と8歳違いで、今年から俊一と同じ○△大学に進学し、チアリーダー部に所属する活発な女の子だ。
「うるさい! 真梨子はこれからは浩二君の世話をして内助の功ってやつで世の中のお役に立つのが一番だ。 二人で一緒に暮らすがええ。 女は男を立てにゃいかん! なあ、母さん」
「はいはい。 お父さん、もうそのへんで。 もうすぐ新居も完成して、真梨子の東京の仕事も後一月ほどで終わるそうですから、そんな生活が始まりますよ。 ねえ、浩二さん」
「ええ。 そのつもりです」
「そうか。 まあ、浩二君にすべて任せるよ。 真梨子の事、宜しく頼むよ」
「はい。 お義父さん」
「おい、俊一。 ビールがないぞ。 取ってきてくれ」
「ほーい」

   ◆

「姉さん。 ビール冷えたの、まだある?」
 キッチンで洗い物をしている真梨子は浮かないな表情を浮かべ振り返った。
――浩二さんとの幸せな生活って、、、
 居間から聞こえる会話に、浩二を欺きながらの暮らしを思うと胸が張り裂けそうな気がしていた。
「ええ。 まだ数本冷蔵庫にあるけど、まだ飲むの? お父さんにあまり飲ましちゃダメよ。 少し血圧が高いんだから」
「ああ、わかってるよ。 でも今日の父さん、ご機嫌だな。 義兄さんの大ファンになっちゃってるよ。 あんなに反対してたのになあ。 現金なもんだね! あははっ」
 俊一は冷蔵庫からビール瓶を取り出し、真梨子に近付いて耳元で囁いた。
「姉さん。 今夜義兄さんに抱かれるんだろ?」

「ちょっと、、、 俊ちゃん、、、」
 真梨子は小声で俊一を嗜める。
「いいよ。 抱かれても、、、 夏休みの間は僕の奴隷だって約束したけど、今夜は特別に義兄さんに譲ってあげるよ。 いっぱい愛して貰えばええやん。 マゾ女なの!ってコクれば?! ねっ! 真梨子姉さん」
 俊一は、自分の身体を死角にして真梨子のヒップをさわさわと撫でながら囁く。
「も、もう許して、俊ちゃん、、、 ここでは何もしないって約束してくれたでしょ!?」
「何もしてないやん。 今夜、素知らぬ顔をして義兄さんに甘える淫らな声、しっかり聞いててやるから。 間違ってもこっちに戻る前の夜みたいに 『俊ちゃん! 挿れてぇぇぇ!』なんて叫んじゃだめだよ」
「あっつぅぅ、、、、」
 俊一は去り際に真梨子の尻たぶを強く抓り、詩織と入れ替わりに両親と浩二の待つ居間に戻っていった。

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