真梨子
羽佐間 修:作

■ 第9章 肉人形2

「いらっしゃい、俊一君。 元気にしてたの?!」
「こ、こんばんわ。 お久しぶりです、、、」
 真梨子がマンションに帰宅した同じ頃、俊一は星野に呼び出されて、久しぶりにhalf moonを訪れていた。
 開店前の薄暗いスタッフルームに艶やかな真っ赤なドレスをまとって現れた雅を前に、俊一はソファからあわてて立ち上がり、ぺこりと頭をさげた。

 雅は俊一から目を離さずにこりと微笑みかけ、向かい側のソファに足を組んで座り、悠然とタバコに火を点けた。 星野の有無を言わせぬ誘いに用件もわからぬまま訪ねていたせいもあり、うつむき加減の俊一の視界に映る大きく割れたスリットからのぞく雅の妖艶な美脚が、言いようの無い威圧感を感じさせる。
 
「あのぉ、、、 今日はいったい、、、」
「ふふっ。 しばらく君が来ないから久美が寂しがってたのよ。 もうすぐ来るから今夜は可愛がっていくでしょ?!」

「、、、あっ、、、 い、いえっ、、、 今日は、、、」
「あらっ〜、、、以外ね。 久美に飽きちゃたの!? それとも身近に素敵な牝犬でも見つけたのかしら!? うふふっ」
 雅は逡巡した素振りをみせる俊一をからかうような視線でねめつけた。
「い、いや、、、 そ、そんなことは、、、」
「そう。 何か用事でもあるのかしら!?」
「あっ、いやっ、、、 あの、、、 せっかくですけど、今日は帰ります、、、」
「ふふっ。 やっぱりお姉さんじゃなきゃ詰まんない?!」

「えっ、、、」
「ふふっ、そうでしょう?! 俊一君」
「なっ、な、何を、、、そんなこと、、、」
「俊一君、、、君には言ったはずよ。 血の繋がったお姉さんとは間違いを絶対起こしちゃダメだって!」
「ぼ、僕は、、、」
 しどろもどろになる俊一の前に雅が幾葉かの写真を投げ出した。

「こ、これは、、、」
 それは週末に真梨子にセーラー服を着せて奥多摩まで出掛けて真梨子を嬲った時の写真だった。
――なんで雅さんがこんなものを、、、
「随分、危ない遊びをしてたのねえ、貴方たち。 誰に見られていたのか判ったものじゃないわよ」

 雅が新たにテーブルに投げ出した写真を俊一は慌てて震える指で繰る。
 公園の木陰を裸で歩いたり、ヒップの下端が覗けそうなミニスカートでショッピングモールで買い物をする姉・真梨子の恥ずかしい姿がはっきりと写されていた。
「ぅぅぅっ、、、」
 そして最後の一枚を見て凍りつく。 それはネットカフェのBOXの中で背面座位で交わる二人の高い位置からのショットが鮮明に写っていた。
――店の監視カメラ?! この人はいったい、、、

「ぼ、僕を見張ってたんですか?、、、」
「ほほほっ。 お姉さんに対する君の様子を見てたら危なっかしくて心配だったのよ。 私が真梨子さんのご主人に単身赴任の間、安全に楽しませてやってくれって頼まれてるって話はしたわね。 実の弟とセックスするのは確かに真梨子さんみたいな女には魅惑的な体験かもしれないけれど、そこまでは貴方の義兄さんの望んではないわ」
「、、、、、、」
「いつからなの?」
「、、、2週間前、、、です、、、」
「そう、、、 で、これからどうするつもりなの?!」

「ど、どうって、、、」 

「あ、愛してるんです、、、」
「あららっ。 ふふっ。 愛してる!かあ、、、 禁断の扉を開けちゃったわねえ。 もう普通の兄弟には戻れないわよ、、、」

「、、、こんな事、続くはずないってわかってます、、、 わかってるんです、、、」
 俊一は、真梨子に言っていた通りこの背徳の関係を夏休みの間で終わらせなければいけないと思っている。 このままずっと姉を自分の女として愛し続けられたらと心の底から願っているが、愛する姉は、義兄の元に帰るのが姉にとって一番幸せな事はわかっていた。

「こんなことが真梨子さんのご主人や、周りの人にばれたらどうするの?」
「この夏の事は、一生誰にも言いません。 夏休みの間だけ、、、 もうすぐ神戸に戻りますし、姉にも出来るだけ会わないようにします、、、」
「忘れられるの?! あんなに素敵な牝犬」
――牝犬、、、 そう、、、 僕の姉さん! でも、、、

「わ、忘れます! 忘れなきゃいけないんです!」
「うふっ。 貴方に真梨子を忘れるお手伝いをしてあげるわ」
「・・・・・・?」

 ドヤドヤと屈強な身体をした男達が数人入ってきた。 そのうちの一人は2mはあろうかという大男の黒人だった。
 
「お前達! このボクちゃんを可愛がってあげて」
「えっ?! なっ? なんなんだぁ」
 男達が俊一に群がり、羽交い絞めにして後ろ手に手錠を嵌め、足首をロープで縛った。

「やっ、やめろ〜! 離せっ! 何をする気だ!」
「ほほほっ。 俊一君に真梨子をきっぱりと忘れさせてあげるわ。 君が今まで知らなかった素敵な世界を味あわせてあげる」
 黒い大男が俊一を軽々と肩に担いだ。
「よせ!ほどけよ! 放せ! 放してくれ〜っ! 何処へ連れて行くんだ〜!」
 自由を奪われた身体で懸命にもがくが、丸太ん棒のような太い腕でがっしりと抱え込まれ逃れようもない。
「た、頼む! やめてくれ〜! 雅ママ〜〜!」
「星野が言うのよ。 貴方には真梨子と同じ血が流れてるって、、、 確かめてみるといいわ」

 恐怖に引きつったような表情を浮かべた俊一の姿は、スタッフルームの奥の調教部屋に消えていった。

■つづき

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