真梨子
羽佐間 修:作

■ 第9章 肉人形38

「俺の子かなあ?! 俊一の子供かもなあ。 秋山君かもしれんし、秘密倶楽部の連中か、、、 おっ、小松原教授かもしれんなあ。 誰にしてもそれなりに偏差値の高い子が授かったことは間違いないさ」
 啓介が真梨子のお腹をさすりながら真梨子をいたぶる。

「いやぁぁぁ、、、  私、、、 産めません、、、」
――絶対に無理、、、 浩二さんを愛し続けろと言ってたじゃないですか、、、
 いったい誰の子供なのか、、、 可能性のある男達の顔が真梨子の脳裏に次々と浮かぶ。 

「ふふっ。 誰の種でも不義の子はいやか?! まっ、そりゃそうだろうなあ。 ちゃんと産ませてやるよ、真梨子」
 とめどもなく流れる涙は真梨子の頬を濡らし、嗚咽が漏れる。

「真梨子、、、 おまえ、旦那を愛しているだろ?!」

 真梨子はコクリと頷いた。
――そんなこと、、、聞かないでください、、、

「お前と旦那との子供として産ませてやるよ。 二人で大事に育てるんだな」

「なっ、何を言ってるんですか?! そ、そんな事、出来る訳がないです、、、」
――二人で育てる?!

 真梨子は啓介の真意がまったくわからない。

「主人は子供が出来ないんですよっ! 私たちの子供なんて、、、 そんなの無理です」
 泣きじゃくりながら啓介の不可解な言葉に抗う。

「ふふっ。 パイプカットのことを言っているか?! パイプカットは100%の避妊率じゃないって言うぜ」

「でっ、でも、、、」

「お盆に帰った時、旦那とやっただろ?!」

「、、、はい」

「ふふっ。 それでいいんだよ」

「で、でも、、、その後すぐに生理が始まりましたし、、、」

「はははっ。 それはお前の腹の中の子供が旦那の子ではないという証拠だ。 旦那の子供を産ませてやるなんて言ってないぞ」

「あぁぁぁ、、、」

「俺は、旦那の子供として産ませてやると言ったんだ。 旦那の手術が不完全だったってことにすればいいんだよ!」

「ひっ、、、 そ、そんなっ、、、」

「ふん。  旦那はお前が生理になったことなんて知らないだろう?!」

「ああぁぁぁ、、、それは、、、」

「子供が欲しい男か、反対に作りたくない男にとっては女の生理はとても気掛かりだがね。 出来ないように手術までしたお前の旦那が、離れて暮らして抱くこともないお前の生理になんて興味あるわけはないだろう。  要はお前の旦那が自分の子供だと信じればいいんだろ?!」

「そっ、そんな事、、、 無理です! 絶対に、、、」
――なんて恐ろしいことを、、、ケイスケ様はいったいどうやって浩二さんに、、、

「僕が札幌でお前を買ったお代はね、、、 札幌での3日分でもないし、今日までの2ヶ月分でもないんだ、、、 お前の一生を吉岡君から買ったんだよ。 それなりの金額でね。 ちゃんとしたお母さんにしたててやるから安心しろ」

「いやあああああああ、、、 ひどい、、、 酷すぎますぅぅぅ」
 真梨子は嗚咽を洩らして顔を伏せた。

「これは僕からの最後の命令だ! そして生涯続く命令なんだよ、僕の玩具に対するね」
――いっ、一生の、、、 これだったんだわ! ケイスケ様が私に課したかったのは、、、

「僕の楽しみを奪うなよ、、、」

「……」

「テーブルに置いてある鞄の中にはお前の淫らな業を記したデータのすべてが入っている。 吉岡にもお前のデータはすべて破棄させた。 お前の生活を脅かすかもしれない連中の映像もすべてマザーテープだ。 コピーはない。 好きに処分したらいい」

 啓介は真梨子の髪を指で遊びながら言葉を続ける。

「お前のマンションの隠しカメラも撤去してある。 お前に群がった男達は神戸に戻ったお前には二度と手を出さない。 奴らの記憶は消せないが、ばらせば社会的にも肉体的にも死ぬことになるから、喋ることは絶対にない」

「ああぁぁぁ、、、」

「俺の最後の命令だ。 羽佐間を愛し尽くしぬけ。 羽佐間の子供を懸命に育てるんだ。 生涯、欺き抜くんだ」

 啓介は、真梨子に父親の分らぬ子供を産ませ、それを秘したまま主人を愛し、尽くせという。 それが啓介の真梨子の一生を縛るいたぶりなのだ。 罪の意識を背負わせたまま、赤の他人の子供を主人に育てさせろというのだ。
――なんて惨いことを、、、
 頬を涙が濡らし、嗚咽が漏れる。

「週末には、神戸に帰るんだったな?!」

「、、、はい」

「残り少ない東京での牝犬生活、存分に堪能していくが良い。 妊娠の心配をせずに秋山たちに心おきなくチ×ポを突っ込んで貰うことだ。 今ならどんなに無茶をしても母体に影響はないだろうしな。 あははっ」

 真梨子は驚愕の出来事にただ泣き続けることしかできなかった。

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