真梨子
羽佐間 修:作

■ 第9章 肉人形49

- 神戸へ -  9月17日(土)


「そろそろ起こさなくっちゃ、、、」
 時刻は11時を過ぎていた。 成田のチェックインは3時だと浩二に聞いていた。

 真梨子が寝室のカーテンを開けると、初秋の優しい日差しがいつものように素っ裸で眠っている浩二の顔を照らした。
――ウフフッ。 浩二さんたらいつのまに脱いじゃったんでしょ?!

「浩二さん、、、 浩二さん、、、 もう11時ですよ。 そろそろ起きてください、、、 浩二さん」

「ううむ、、、」
 浩二は眩しそうに顔をしかめ、タオルケットに顔を埋める。

「もう起きてください、浩二さん、、、  あっ!」

 肩を揺すっていた真梨子の手首を浩二の手が掴み、ベッドに引き込まれた。

 浩二の逞しい手が乳房を荒々しく揉みしだき、首筋に唇が這う。

「真梨子のエプロン姿、久しぶりだな。 急に欲情しちゃったよ」

「あぁぁ、、、 もう、、 浩二さん、、、  そんなに時間が、、 あぁぁぁ、、、」

 真梨子は浩二に抱かれるのが怖かった。

 昨夜の事を本当に浩二は気付いていないのか?! 真梨子はそればかりを考えて眠れぬ夜を過ごした。

 美酒に酔い眠りこけた浩二の目の前で、吉岡と佐伯に前後の淫孔を幾度も犯され、今までに経験した事のない強烈な快感に潮を吹き、失禁してしまった。

 真梨子はリビングの恥辱の跡を泣きながら明け方近くまで後始末したのだ。

 浩二の手が、ショーツに滑り込み、敏感な肉芽を指で転がす。
「あっぁぁぁ、、、」

 キュンと痺れるような快感が奔る。

 浩二は真梨子のショーツを剥ぎ取り、身体をずらして真梨子の股間に顔を埋めてきた。

「あっ、いやっ、浩二さん! 見ないでください!」

 真梨子は身体をにじり、ベッドをずり上がる。 啓介との最後の夜に言われたことが頭をよぎった。

『神戸に戻って旦那に抱かれる時、ヨガリ過ぎないように気を付けろよ。 半年間の牝奴隷生活がばれてしまうからな。 あはははっ』

 確かにこの数週間、嬲られるほどに気が狂ってしまうんじゃないかと思うほどの快感に翻弄されてしまう身体に恐怖すら感じていた。
 朦朧とする意識の中で、股を拡げ狂ったように腰を振る姿を揶揄され、更に恥辱の快感が燃え盛ってしまうのだ。

――あぁ、、、 感じちゃダメ、、、

「ふふっ。 もうビラビラがぷっくり充血して綻んできてる。 おっ! 愛液も滲み出してきてるじゃないか!」

「いやっ! 見ないでっ! お願いです! 恥ずかしいぃぃ、、、」
――お、お尻、、、 見ないでくださいぃぃ、、、

「相変わらず明るい場所で嬲られるのが苦手だな、真梨子。 いや、大好きなんだったな、真梨子。 ふふふっ」
――見ないで、浩二さん、、、 あぁぁ、舐めないでぇ、、、 真梨子、穢れています、、、 あああぁぁぁ、、、

 浩二の舌先が肉芽を転がし、ラヴィアを唇でついばむように挟み、花弁をくつろげ愛撫する。 真梨子は浩二に受けるこの愛撫がとても恥ずかしく、一気に身体の芯が熱く疼くのが常だった。
 この半年間、真梨子の身体を弄び、知り尽くした快感のポイントを責め抜く男達の荒々しい陵辱とは違い、浩二のそれはまったく優しく愛に満ちたものだ。

――あぁぁぁ、、、 浩二さんは気付いていなかった、、、
 真梨子は込みあがってくる快感の中でそう確信した。 秘密が保たれた安堵は、真梨子の心を解き放つ。

「ぅう……」
 体勢を変えた浩二が真梨子の唇を塞ぐ。 舌を絡めとられ、強く吸われるといつもと変わらぬ浩二の愛を真梨子はひしひしと感じた。

「ひぁっ、くぅっ……」
 腰を抱えあげられ、トロトロに蕩けた蜜壷に浩二の逞しいペ○スがズブリと進入する。

「あっううっ、いいいうっ……浩二さん、、、」

 久しぶりに浩二の怒張に身体の芯を貫かれた真梨子は、それだけで達しそうになってしまう。
――浩二さん、愛してます、、、 浩二さん、ゴメンナサイ、、、 でいっぱいにしてください、、、

 ゆっくりと繰り出されるストロークに、真梨子は込み上げてくる快感に必死で抗う。

「んあゥ……あうんッ…… も、もう、浩二さん、、、 真梨子、、、 逝っちゃう」

「ふふっ。 久しぶりだからじっくりとお前の逝き顔を見ててやるよ」
 グラインドが大きくなり、子宮口をカリ首が打ち付ける。

「ぁぁ、ダメ、、、 恥ずかしい、、 ぁ、ぁ、、ぁ、、、イっクぅぅ、、」

 膣奥に叩きつけられる熱い迸りを感じると、頭に白い閃光がスパークする。

 真梨子は、薄れる意識の中で再び浩二に愛された幸せを感じながら快楽の淵瀬へと沈み込んでいった。

   ◆

『たった2週間の出張だ。 今まで半年も離れてたんだよ。 バカだな、真梨子は』

『はい、、、 ごめんなさい、、、』
 入管ゲートの前で涙ぐむ真梨子の鼻先を指で小突き、手を振ってゲートに入っていった浩二の後姿を思い出すとまた涙が滲んできた。

 夕方の直行便で2週間の予定でシアトルに旅立った浩二を成田で見送った後、真梨子は引越しの荷物出しをするために一人マンションに戻っている。

 今朝、夫の朝ごはんを作るのに使った調理器具や身の回りの細々とした物を箱に詰めていた。

 母から譲られた糠床の瓶を丁寧に梱包していると、ポリ、ポリと小気味良い音をたて『旨い! 旨い!』と漬物を食べてくれた浩二の姿が目に浮かび、ふと手が止まる。

 起きたばかりの浩二にいきなり抱かれたトキメキを思い出すとキュンと胸が熱くなった。

――そろそろ来る頃だわ。 急がなくっちゃ、、、

 マンションの管理人に手配してもらった引っ越し業者が荷物を引き取りにくる時刻が近づいていた。

 最終の新幹線になりそうだが、一刻も早く東京から離れたい一心で真梨子は今夜中に神戸に戻るつもりでいた。

 昨夜吉岡がマンションを出て行く時に言った言葉を思い出す。
『真梨子。 買って貰ったのが橘さんみたいな人でホントに良かったなあ。 いつもなら今頃は売春ブローカーに売り飛ばして、毎日変態親父の玩具になっているところだぞ。
 今日で俺たちはお前の前から消えてやる』

――本当に、終わったのね、、、 浩二さんと、この子と暮らしていくの、、、 一生、罪を背負って、、、
 身体にはまだ変化の兆しさえなかったが、お腹に手を当てていると、真梨子には小さな命の存在が感じられる気がしていた。

 神戸に戻れば、ウェブコミュニケーションのスタッフや、近しい人たちだけで20日に上場祝賀パーティが完成間もない自宅で行われる予定で、大いにもてなしてやってくれと浩二に言われていた。

「うふふっ」
 真梨子はまだ見ぬ新居でパーティの準備に追われる自分の姿を想像し、虎口を逃れたばかりだというのに何やらウキウキしている自分が可笑しかった。

■つづき

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