真梨子
羽佐間 修:作

■ エピローグ3

【翌2006年、4月28日(金)】

 東京から戻った真梨子は、新築のマンションでアメリカと日本を行き来する浩二と再び二人の暮らしを始めた。

 愛する夫に食事を作り、身の回りの世話をする真梨子が望んでいた本来幸せであるはずの時間は、浩二が身重の身体を気遣い優しく接してくれる程に罪の意識に駆られ、辛く苦しい時間だった。

 真梨子のお腹に耳を当て、我が子と信じ胎児に優しく語りかける夫を見るにつけ、胸が張り裂けそうで涙が溢れてしまう。  そのお腹の子供は順調に育ち、真梨子は臨月を迎えていた。

 外出から戻った真梨子は、シャワーで汗を流し、裸のまま浩二の設計したプレイルームにいた。

――この部屋で浩二さんに抱かれたい、、、

 妊娠がわかってからは、身体に良くないと浩二は一度も真梨子を抱こうとはしなかった。

(子供が産まれたら、この部屋で真梨子をいっぱい可愛がってやるからね)
 神戸に戻ったばかりの頃、浩二に掛けられた言葉は真梨子にとって未来に希望を繋げる微かな光だ。

 夫に身体を厳しく戒められ、激しい責めを受け止めることが少しでも贖罪になると信じたい。 淫らな牝犬の快楽を叩き込まれた身体をむちゃくちゃに苛まれることで、身を切られるような罪の意識が少しでも薄らぐのではないかと願っていた。

 それが浩二の子供として生れ、浩二の子供として育っていくはずのお腹の子供のためになると信じていた。

 拘束用の垂れ下がった鎖を指で突くと、ジャラッと無機質な音をたててユラユラ揺れる。

――もう、本当に終わったのよ、、、

 浩二がアメリカに行っている間、主が一度も使ったことがない部屋で月に一度訪れてくる島田に真梨子は陵辱されていた。

 真梨子を嬲るのは出産までと吉岡に言い含められているらしく、今度で最後にしてやると弄ばれた2週間前のおぞましい快楽の記憶が脳裏にまざまざと蘇る。

 その時、携帯が鳴った。 

――あっ、浩二さん!

『真梨子、元気にしてるかい?』

「、、、はい」

『今、いいかい?!』

「病院からお家に戻って、シャワーを浴びたところです。 浩二さんは?」

『オフィスで一人、残業だ。 で、真美は順調かい?』


「まあ、お疲れ様です。 真美はとっても元気ですよ。 今日もお医者様から母子ともに何の問題も無いって言っていただきました」
 真梨子のお腹の子は女の子と判定され、既に浩二が真美と名付けていた。

『ふふっ、そりゃよかった。 故郷の篠山にはいつ帰るんだっけ?!』

「明日帰るつもりでいます」
 真梨子は故郷の篠山で里帰り出産をする予定にしている。

『そうか。 来週の初めには戻れると思うんだ。 会社の仕事は2、3日で片付けて、暫く君の実家でゆっくりさせて貰うよ』
 浩二は2ヶ月前からシアトルに出張していた。

「ホントですか?! 嬉しい! そうしていただけると両親も喜びます!」

『ふふっ。 僕も君のお母さんの料理は楽しみさ。 やっぱり真梨子のとは一味違うからね』

「まあっ、随分ですね。 浩二さん」

『ははっ。 そう怒るな。 お母さんのとは材料が違うよ。 お米も野菜も地元で採れた新鮮な材料だもんな』

「それはそうですけど、、、 なんだか悲しくなっちゃいます、、、」

『はははっ、そうふくれるな。 それが年季ってもんさ。 それはそうと出産予定日は5月18日で遠藤の病院で産むんだったよな?!』

「はい。 少し遅れるかもしれないって言われましたけど、ちゃんと覚えててくださったんですね」

『当り前さ。 今度は1ヶ月くらい日本に居られるから出産に立ち会えるといいな』

「嬉しい! 真美ちゃんが嫌がっても浩二さんが日本に居る間に出てきて貰いますから」
  
『ふふふっ。 そうなるといいなっ、真梨子』

 突然、調教ルームの扉が開いた。

――えっ、 どうして?!
 素っ裸の島田が入ってきて、まっすぐ真梨子のほうへ向かってきた。

「あっ、、、」
――いやっ、、、 今は赦してっ

 島田は、真梨子の腕をつかみ、ベッドのほうへ引きずっていく。

『どうした?! 真梨子』

「い、いえ、、、 ちょっと聞こえにくくって、、、」

 島田はベッドに仰向けで大の字に寝そべり、そそり立つペ○スを指差し跨げ! と身振りで指示した。

 電話を手で塞ぎ赦しを乞う真梨子はベッドに引き倒された。

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