ヘンタイ教師
二次元世界の調教師:作

■ 4

 ますます疑惑が頭に渦巻くアタシとみっちゃんを見て、サヤカはギクッとしたような表情になったが、逃げるわけにはいかず、トイレの前で待っていたアタシ達の所まで来ると、今から用を足すから先に教室に戻っててと言った。そして、下痢してるの、と言い訳を口にしたのだが、今度は同じ方向から宮本がやって来て、もう授業が始まるから早く教室に戻りなさい、と言う。そうだ、あちらの方向には宮本がいる国語準備室がある。工業高校に国語の先生は沢山いない。他の先生は大きな職員室にいて、宮本専用みたいになっている部屋のだ。2年生に上がってからその部屋でアタシ達は個人面接を受けた。そう言えばサヤカがおかしくなったのは、その面接があった頃だったような気がする。

 アタシとみっちゃんは仕方なくサヤカを残して教室へ戻って行ったのだが、宮本は授業があるにもかかわらずトイレに入って行った。何てヤツだ、生徒よりだらしがない。宮本はたいてい授業に遅れて来るのだが、それも生徒にバカにされる原因の1つだ。そして教室まで後少しと言う所まで歩いたアタシ達はなぜだか気になって、どちらからともなく立ち止まってサヤカを残したトイレの方を見やり、そこで衝撃的な光景を見る事になった。何とサヤカは女子トイレの入口でまだアソコを手で抑えて立っていたのだ。

「!!!」

 かなり離れた場所から見ているアタシ達の目にもハッキリと、サヤカがお洩らしして黄ばんだ液体が彼女のフトモモを伝って床に滴り落ちるのが見えた。そこで始業のチャイムが鳴り、アタシ達は見てはいけない物を見てしまった衝撃でお互い何も言えずに立ちすくんでいた。サヤカはシクシク泣き始めて、耐えられなくなったアタシ達は、この場はこのままにして教室に戻る事にした。サヤカが、アタシ達が見ていた事を知ったら、もっとショックを受けるに違いなかったから。何があったのか、事情は後で落ち着いて聞いてやろう。目配せだけでみっちゃんも同じ気持ちである事がわかり、教室に入ろうとしたその時、さらに衝撃的な光景が私達の目を焼いた。

 男子トイレに入っていた宮本が出て来ると、廊下を見渡して生徒達がチャイムで教室に入って誰もいなくなるのを確認したようだった。アタシ達は慌ててきびすを返し教室に入るそぶりを見せる。もうチャイムは鳴り終わった所だから、かなり離れた教室のアタシ達が最後だった。宮本もサヤカもアタシ達が注視していたとは気付いていまい。アタシ達は急いで教室へ入る間際、悟られないよう注意してトイレの方をうかがい、宮本がお洩らしして泣いているサヤカの肩を抱くようにして、女子トイレに入って行くのを確かに目撃したのである。

5時間目、宮本はほぼ10分近く遅れて授業に現れた。すみません、来客があったもので、と見え透いた言い訳をする宮本。アタシとみっちゃんは、さっき見た光景について宮本に問いただしたい気持ちもあったけど、怖くて何も言えなかった。気弱で貧相な初老の男にこれまでにない存在感を覚え、冗談ではなく正真正銘の「ヘンタイ」に出会ったらおそらく感じるであろう、猛烈なおぞましさと恐怖を宮本に感じていたのである。

 サヤカは結局5時間目は姿を現さず、休憩時間になってから戻って来て、下痢がひどくてお腹が痛いので保健室で休ませてもらっていた、などとアタシとみっちゃんにウソを付いた。アタシとみっちゃんはサヤカに、あのお洩らしと宮本との関係を問いただしたかったのだけれど、6時間目が始まってしまうので、放課後になってから聞いてみるしかなさそうだった。

(う……
 これが、サヤカ?)

 お腹が痛くて保健室で休んでたの、とやはりミニスカの前辺りを手で抑えて言い訳をするサヤカを見ていたアタシは、背筋をゾクリ、とする戦慄が走るのを感じてちょっとうろたえてしまった。可愛らしいけれど超マジメっ子で、色気のイの字も感じさせなかったサヤカから、何だか妙に強く「女」を感じさせるフェロモンのようなものが漂っているのをアタシは感じたのだ。それは決してサヤカがパンツの見えそうなミニスカをはいてたからではない。いつからこの子はこんな色っぽくシナを作るような話し方をする女の子になったのだろう? そんな目で見てしまうと、サヤカは小鼻が膨らんだえっちぽい顔をしてなぜだか吐息が荒く、カラダを微妙にクネクネとよじらせているようだった。

(この子、えっちに感じちゃってる!)

 そんなあり得ない妄想を抱いてしまったアタシは、6時間目の授業中、やや斜め前に座るサヤカの様子が気になって仕方なかった。まだお腹の調子が悪いのか、時々辛そうに表情を歪めて下腹部を手で抑えているが、アタシの目にはお腹でなくアソコを抑えているように見えてしまった。そしてお下げ髪を指で弄ってみたり、椅子に座り直してみたり、妙に落ち着きがないのだ。勉強が出来て集中力のあるサヤカらしからぬ落ち着きのなさだったが、アタシが彼女の体に起きていた事を知っていたら、その程度の反応ですんでいたのは真面目な優等生のサヤカだったからこそ、と言う事が理解出来たに違いない。

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