チカンのおじさん
二次元世界の調教師:作

■ 3

 ぶっ! 私はアイスコーヒーを吹きそうになっていた。もし私が高校生なら、想像だけで鼻血を出していたかも知れない。しかしこんな事を平然と話す彼女は、私のような中年には理解の及ばない「新人類」というやつなのだろうか。私はもう根掘り葉掘り質問して、彼女にエロオヤジと見られてしまうのを避けるなんて、不自然な事はやめにした。官能小説について面接してるんだから、そんな遠慮は無用ではないか。

「あの、ケーキでも食べますか?
 もう少しお話を聞かせて頂きたいので。」

 すると彼女は、そんな、とんでもありません、と礼儀正しく断ろうとしたので、私は自分にもケーキとなくなってしまったアイスコーヒーを追加注文し、彼女の分も強引に注文してしまった。

「あ、あの、このお勘定は、私の方が払いますので。」

 彼女はとても恐縮して見せながら、そんな殊勝な事を言う。全くどこまで礼儀正しいしっかりした子なのだろう。本当にこの子が、チカンに尻穴とクリちゃんをイジられて潮を吹きパンツをベチョベチョにしてしまったという体験の持ち主なのだろうか?

「勘定の支払いなんか気にしないで下さい。
 あなたは実に興味深い体験をお持ちのようだ……
 これは、ひょっとするといけるかも知れませんよ。」
「ありがとうございます!
 あの、実は1つだけ大きなウソがあるんですけど……」
「ほう、それは何ですか?」
「私この時急いで電車に乗ったんで、トイレがヤバい状態だったんです。
 だから、潮を吹いたなんて事はなくてただおしっこを洩らしちゃっただけで……」
「いやいや科学的には潮吹きってのはおしっこも含まれてるみたいですよ。
 それに男性にとってはおしっこしてくれるのも興奮しますから。」
「そうですか。
 それなら良かったです。」

 そんなにニッコリと笑われると、今話してる内容とのギャップがあり過ぎるように感じてしまう。しかしこれは仕事の話なのだから、これで良いのかも知れない。私は彼女が遠慮してしまうので、自分のケーキを口に運びながら話を続けた。

「他に違う所はありませんか?
 違ってても悪くはありませんから、正直におっしゃって下さい。」

 これはもう仕事を離れ、私個人の男性としての好奇心を満たすだけの質問になっていた。しかし彼女は、やはり遠慮がちにケーキを口に運びつつ、ハキハキと答えてくれた。

「そう言えば、スカートの下にじかにパンツと言う事はありませんでした。
 普段はやはり、こういう物を……」
「あ、いえ、別に今ここで見せて下さらないでも結構です!」

 彼女がケーキを食べる手を休めて、長いスカートをめくって下に黒いパンチラ防止の衣類をはいているのを見せて来たので、私は慌ててしまった。彼女は天然なのだろうか、わざとなのだろうか、男心をくすぐってカッカさせる少女のようだ。パンツはどんなのはいてましたか、と聞けば見せてくれそうだったが、さすがに店の人もいる事だしそれは言えなかった。

「あの、ですから、やっぱり潮を吹くほど気持ち良くはなかったです、ホントは。」
「まあ、チカンものに、そういう下穿きは大いに興ざめですからね。
 書かれないでもいいでしょう。」
「気持ち良い、と言うより、気持ち悪い、とかくすぐったい、とか言うのが正直な気持ちでした。」
「そうでしょう。」

 正直興ざめな話だったが、それが実際だろう。チカンの指に感じてしまって、と言うのは良くある官能小説の定番だが、現実にある事とは思えない。だから皆フィクションで楽しむのだ。

「でも、これをずらされて、パンツの上からと直接タッチされたのは、すごく良かったです、マジで。」

 彼女は「マジで」などという蓮っ葉な言葉を使っちゃってごめんなさい、とでも言いたそうにペロッと舌を見せて笑った。ううむ、どこまで信じていいのだろうか? 私はだんだん彼女に翻弄されて虚実の区別が付かないような危険な判断力の状態になって来るのを感じていた。

「あのチカンのおじさんの凄い所は、お尻の穴の触り方でした。
 私、アナルがあんなに気持ちいいとは知りませんでしたから。」
「アナルの事を描写するのはいいですね。
 読者にも一番ウケるのはアナルですから。」
「それは良かったです。」

 私はズボンの前で治まりが付かなくなっているペニスに加え、お尻の穴までムズムズするのを感じてしまった。

「ところで、この後話はどうなるんですか?」

 時間がないと思い、途中まで読んで話していた私は、好奇心が抑え切れずにそう聞いてみた。

「ええと、男性視点の小説の方は、この後チカンの指でメロメロにされてしまった彼女は、チカンと一緒に次の駅で下車して誘われるままにトイレでしちゃうんです。
 あ、いえ、おしっこだけではありません。」

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