チカンのおじさん
二次元世界の調教師:作

■ 4

 私は思わず吹き出しそうになった。そこで2人で小便をする、というオチではシュール過ぎてウケないだろう。

「あの、チカンさんにおしっこする所を見られた後で、後始末をチカンさんのお口でされちゃうんです。
 そしてイカされて興奮しちゃった彼女は、チカンさんのおちんちんをお口でしてあげて、ごっくんしちゃいます。
 それでもまだまだ元気なチカンさんと彼女は、トイレでめでたく合体、という話でして。」
「定番通りですが、なかなかいいですね。」
「ありがとうございます!
 でもこれは完全にフィクションです。」
「それは、そうでしょう。」

 私は何となくちょっとガッカリしてしまった自分を、しょうがないヤツと自虐したい気分だった。「事実は小説よりも奇なり」と言っても、そんなオイシイ展開が実話だったら世の官能小説家は失業してしまう。

「女性視点の方は、ほぼ実話通り再現しました。」

 私はついゴクリと喉を鳴らす分かり易い反応をしてしまった。娘のような高校生に欲情してしまって情けないとは思うが、男の本能は抑え難い。

「チカンのおじさんの手を掴んで次の駅で降りました。
 そしたらおじさんが青くなって泣きながら土下座して謝るんです。
 みっともないので、トイレに行っておじさんの話を聞きました。
 私と同じくらいの高校生の娘がいるんだそうです。
 でも、家では奥さんと娘さんにイジめられてて、もう半年くらい普通に口も利いてくれないそうです。
 それにカラダ中があざやら切り傷だらけでした。
 もしチカンがバレたら本当に殺される、って言ってました。
 私はかわいそうになったんで、チカンのおじさんとトイレでしちゃうんです。
 あ、いえ、おしっこだけじゃありませんよ。」

「……それで、最後はさっきと同じですか。」

 私の声は情けないくらい慄えていた。

「はい、そうです。
 あ、最後におじさんにお小遣い2千円あげちゃいました。
 無一文だそうなので。」
「……今日はどうも原稿を見せて頂き、貴重なお話までお伺いしましてありがとうございました。」
「あ、あの……
 もっと詳しくお話させて頂けませんか。
 場所でも変えて。」

 何か思い切ったかのような口調で、彼女は私にそう持ち掛けて来た。たぶん(覚悟は出来てます)という意思表示なのだろうか。彼女は何とスカートの下の黒いスパッツをその場で脱ぎ、原稿と一緒にこれもお預けします、と私に手渡し、長いスカートをくるくると丸めてイマドキの女子高生らしい超ミニにしてみせた。が、私の股間は爆発しそうでも理性は崩壊しなかった。頭に浮かんだのは、ちょっとトロいわが娘の顔である。

「あなた、高校生ですよね。」
「あ、それまずかったですか?
 現役高校生で売り出してくれるんじゃ?」
「私の娘も高校生なんですよ!
 官能小説って18禁なんですから、無理な事はわかるでしょ!」

 そうだ。始めからそう言って断らねばならなかったのだ。私はつい男としての好奇心から、彼女に気を持たせるような面接までしてしまった事を後悔していた。すると彼女は急に笑い出した。

「なーんだ。
 大丈夫です、私ホントは23ですから。
 高校はもうとうに卒業しました。」
「ウソを付いてたのか?」
「ごめんなさい。
 でも高校生の方がおじさんにウケルかな、と思って……」

 こいつの話はどこまで信用出来るのだろうか? 今度こそ本当の事を言ってるようにも思われたが、私の決断は変わらなかった。

「残念ですが、今回はちょっと無理です。
 又新作が出来ましたら、持って来てください。」
「じゃ、原稿とスパッツ返して下さい!」

 まだ彼女の言葉は丁寧だったが、明らかに怒っているようだった。

「いえ、応募された原稿類は原則としてお返ししませんので。」
「このエロオヤジ!」

 彼女がぷんぷんしながらバッと立ち上がり、去って行く時超ミニスカがめくれて白いものがチラッと見えた。私は彼女の2作品の原稿と、年齢詐称された顔写真付きの履歴書、そしてなぜか彼女が置いていく事になったスパッツを手に、当分オナニーのネタには事欠かないかな、と思ったが、実に複雑な心境だった。だって家の娘に欲情してしまいそうではないか。しかしこれからどう足掻いても欲情しそうにないツマの顔を一緒に思い浮かべて、男ってどうしようもない動物だな〜と、我ながら実感していたのである。

〜おしまい〜


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